大変革から2年目を迎える、2018年のF1マシン。今シーズンの開発ポイントはエアロ、サスペンション、制御、ERS(エネルギーリカバリーシステム)、PU(パワーユニット)、どれも重要な部分で多岐にわたるのだが……昨年、あるカリスマデザイナーに2018年マシンの開発の肝は何か聴いてみたところ、「軽量化第一だ。軽量化こそが走行性能を決める!」と言い切っていた。
そもそも今年の最低重量733kgは昨年のマシンよりも5kgも重くなっている。今年からコクピット上にハロなるドライバーのプロテクターが装着され、これが単体で8kgでブラケットも加えれば13kgの重さになるという。こんな重量物がドライバーの頭のよりも高い位置に装着されたのだから、これはマシンの重心高に大きく影響を及ぼす。
現実的に、重量の増加はその位置が高ければ高いほど走行性能に干渉し、これまではロールフープ上のオンボードカメラでさえ、搭載の有無でマシンセッティングが大きく変わる程だった。そのため、ハロを搭載しながら重心位置を低めるには、他の重量物をなるべく低い位置、できれば床の高さに並べたいとなるのが本音だ。
しかし、エンジンもギヤボックスも現在の規則上、大きく変える事も軽量化することも難しい。したがって唯一の手段が車体やパーツの徹底した軽量化となるわけだ。
そのため、特にモノコックの軽量化と関連した各種補機類、さらに両サイドポッド内部の熱交換器類の徹底した見直しが各チームで行われてきた。
たとえばメルセデスW09はロングホイールベース・コンセプトでここまで車体を開発してきたが、モノコックも結構長い。長い分、マシンの重量が重くなるのは当然で、実際、昨年まではかなり重かった。マシンの最低重量以下であることは当然ではあったが、バラスト(車両バランスをとる重り)をたくさん積めるほどの余裕はなかったはずだ。
ところが、今年のメルセデスW09は余程軽量化が進み、最低重量に対して大きなマージンを造り出したようなのだ。開幕戦のメルボルンで見かけたメルセデスW09に、キールのカバーが外されて顔を出した巨大な岩のような鉛の固まりを見つけた。
ドライバーのひざ下の床上に、これほどのバラストを装着しているとは……徹底軽量と低位置バラスト搭載で、メルセデスW09は重心位置を昨年以上に下げる努力が施されたわけだ。このような対処は決してメルセデスだけでなく、ほぼ全チームが今年、行ってきている。こんな大量バラストを見ると、怪物F1マシンも実は極端なメタボだったと言うわけだ。