2018年04月04日 10:51 弁護士ドットコム
居酒屋に行った時、店員から「お一人様につきお料理2品ずつご注文をお願いします」と言われたことはないだろうか。首都圏在住のマサカズさん(20代男性・仮名)は繁華街にある居酒屋で、店員からドリンク注文した後に突然言われて驚いたといいます。
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「友人と6人で中華ダイニングの居酒屋に入り、とりあえず一人ずつドリンクを注文しました。店員さんが注文したドリンクを持ってきた後に初めて、『料理はお一人2品ずつ注文してください』とお願いしてきたんです」
料理は安いもので各300円(税抜)くらいでしたが、別途お通し代もかかりました。マサカズさんらはとりあえず数品を注文。結局お会計の時に何も言われませんでしたが、「店の前の看板にも書かれていなかったのに、騙されたような気になりました」と話します。
このような「2品オーダー制」。お店からの要求に応える義務はあるのでしょうか。半田望弁護士に聞きました。
「一旦注文を受けたあとで『一人最低2品の注文が必要です』と言われてもその条件は契約の中身にはなりませんので、客側が応じる義務はありません。また、店側は注文された料理や飲み物については提供する義務があることになります」
半田弁護士はそう話します。なぜなのでしょうか。
「飲食店での注文は、法的には客が店側に料理の提供とサービスを求め、店側がサービスを提供する代わりに料金を請求するという契約になります。契約には双方の意思の合致が必要ですので、店側が一方的に料理やサービスを提供し、あるいは条件をつけたとしても、客がサービスの提供や条件に同意しない限り、客との間では契約が成立すると理解することはできません」
そもそも、店側が「最低2品注文する」という条件を設けることはできるのでしょうか。
「契約に一定の条件(特約)をつけることは可能です。また、店側にも顧客を選択する自由がありますので、条件に同意しない客の注文を拒むことも問題ありません。しかし、客にその条件が提示されていなければ、料理を注文した客が当該条件に同意して契約をした、と考えることはできず、当該条件は契約内容に含まれない、という理解になります。
今回の件の場合、『2品オーダー制』 という特約が注文の前にはっきりと示されていないのであれば、2品以上注文する義務はありません」
「2品オーダー制」が、入店や注文の条件として明確に示されていた場合はどうでしょうか。
「客側が当該条件を確認して入店したとしても、その時点ではまだ契約は成立しておらず、店側の要求に応じる義務はありません。しかし、店側としても契約を拒む自由があります。
客が契約の条件に応じないのであれば、客に料理やサービスを提供する契約をせず、退店していただくという対応も可能です」
客側が「2品オーダー制」を了承して料理などを注文していた場合はどうでしょうか。
「2品オーダー制を了承して契約している以上、客側には契約内容に従う義務があります。この義務を果たさない場合には店側が契約を解除したり、店側に損害が生じていれば損害賠償責任を請求することもできる、ということになります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
半田 望(はんだ・のぞむ)弁護士
佐賀県小城市出身。交通事故や消費者被害などの民事事件のほか、刑事弁護にも取り組む。日本弁護士連合会・接見交通権確立実行委員会の委員をつとめ、接見交通の問題に力を入れている。
事務所名:半田法律事務所
事務所URL:http://www.handa-law.jp/