2018年04月03日 10:12 弁護士ドットコム
混み合う施設の中で、長時間にわたって開かないトイレの個室に苛立ったことはないだろうか。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、トイレの個室利用をめぐって複数の相談が寄せられている。
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まずは店側から。ある大型スーパーで、トイレの個室に数時間こもった客に対して、店員が「いったん個室から出てきてください」と呼びかけたそうだ。中から「もう出るから声かけるな」と言いながら、なかなか応じなかったという。
一方、追い出された客からの相談も。ある人は、ラーメン屋のトイレの個室に入っていたところ、「店員にいきなりトイレの扉を開けられました」。店の鍵を使って開けてきたといい、「トイレの時間が長すぎるということで怒鳴りつけなられながら」だったという。結局、誤解だとわかって謝罪もされたが、納得していない様子だ。
客がトイレを長時間利用することにどんな法的問題があるのか。吉田要介弁護士に聞いた。
店のトイレを本来の目的とは別の目的で長時間利用する場合、それによって、他の客が店のトイレを利用できなくなり、店はそのクレームへの対応を余儀なくされるなど、店の営業が妨害される可能性があります。
店はトイレを本来の目的のために客に利用させていますので、店に無断で、トイレを別の目的で長時間利用することは、本来の目的で利用するものと店を騙したか、店の錯誤・不知を利用したといえ、業務妨害罪の「偽計」(威力以外の不正な手段を用いた)にあたります。
したがって、店のトイレを別の目的で長時間利用した場合、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。
また、店員にトイレから退去するように要求されたにもかかわらず、別の目的での利用を理由として、トイレから退去しなかった場合、正当な理由なく退去しなかったものとして、不退去罪が成立する可能性があります。
本来の目的とは別の目的でトイレを長時間利用している客に対して、まずは店員はトイレから出るように呼びかけるべきです。そして、別の目的でトイレを利用していることが明らかである場合や応答が全くないためにトイレ内の客に生命の危険が生じているおそれがある場合をのぞいて、店の鍵で個室を開けるような強硬策は、プライバシー侵害にあたりうるので、避けた方が無難です。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
吉田 要介(よしだ・ようすけ)弁護士
千葉県弁護士会所属。日弁連子どもの権利委員会事務局次長、千葉県弁護士会刑事弁護センター委員。法律を「知らないこと」で不利益を被る人を少しでも減らすべく、刑事事件、少年事件、家事事件、一般民事事件等幅広く手がけ、活動している。
事務所名:ときわ綜合法律事務所
事務所URL:http://www.tokiwa-lawoffice.com