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謙虚さを忘れそうになったときに読みたい“人生の教科書”ーー『LDH OUR PROMISE』レビュー

2018年04月02日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 EXILE TAKAHIROが「人生の教科書」と語った本がある。それは、LDHの社員と所属アーティスト全員に配られる『LDH OUR PROMISE』と呼ばれるものだ。A5判で100ページのシンプルな本。そこで語られているのは、EXILE HIROが多くの挫折と失敗から得た、人生のルールだ。同じ夢を抱く仲間と、そして社会に対する「どう生きるか」を宣言する“約束”ともいえる。


参考:三代目JSB 岩田剛典、山下健二郎とも通った思い出の店を紹介


 門外不出だったこの本が、小学館によりほぼ原文で再編集され、さらにLDHのアーティスト30名のインタビューが掲載された『LDH OUR PROMISE』として発売された。大切にしている言葉とその考え方、そして現役アーティストたちのエピソードトーク。タレントのサクセスストーリーを追ったエッセイとも、企業理念や社訓を取り上げたビジネス本とも違う、人生の挑戦者たちによる現在進行系の生き様に触れられる1冊だ。


 その誠実な内容と、ロジカルで冷静な語り口に、驚く人も多いのではないだろうか。エンタテインメントの世界で「スターになる」という人々には、どこか野心的で尖った印象が持たれがちだ。だが、彼らの口から語られる言葉は実に謙虚で、礼儀正しく、客観的。最初の章から、EXILE/三代目J Soul Brothersの岩田剛典が「自分の代わりはいる」とハッキリ語るほど。


 アーティストであっても、社会の一員であることに変わらないこと。何歳であっても、どんな立場であっても、1人の人間であることはブレないこと。人に愛され、人のために生きようとしなければ、誰の心を動かすこともできないこと……語られるのは、私たち一般人にも通じる、人として大切な根幹の部分ばかりだ。おそらく、何度も何度も試練をくぐり抜けるなかで、平易な表現に磨き上げられたのだろう。LDHが運営するエンタテインメントスクールEXPG STUDIOに通う子どもたちにも、無理なく読めるほどシンプルな言葉で表記されているのが印象的だ。


 教訓的な言葉が並んでいるにも関わらず、押し付けがましさがないのも、この本の気持ちよさ。冷静に読み進められるフラットな語り口ゆえに、彼らのファンではなかった人にとっても「なるほど」と共感できる内容になっている。事実、Amazonのカスタマーレビュー欄には、「正直LDHにはあまり興味がなかったのですが、友達からのすすめで買ってみました。LDH所属のアーティストたちがいかにして、数々の“困難”を“武器”に変えていったか。そこにはタレントさんではなくとも大事な心構えが書かれています」など、LDHファン以外の読者からの書き込みも目立つ。


 「“謙虚だけど勢いがある”というアーティストのあり方こそ、世界に通用するジャパニーズスタイル」巻末に綴られたEXILE HIROの言葉に頷いた。自分の夢を叶えること、そして誰かを、日本を、世界を元気にすること。すべてはつながっているのだ。そして、その叶え方は一つではない。長い人生においては転換のタイミングもある。EXILE HIRO自身がパフォーマーから、クリエイティブオフィサーへとキャリアシフトをしたように。毎日新しい1日がやってくるごとに、“新人”として挑戦を楽しむ。謙虚さを見失いそうになったときこそ、この本を再度読み返すタイミングかもしれない。また自ら変化を起こしたいときに、今の自分に刺さる言葉やアーティストから逆引きをして読んだり、1日1回ランダムに開いたページの言葉を心がけて過ごすのもいいだろう。


 『LDH OUR PROMISE』を読めば、なぜLDHがこれほどの急成長を遂げたのか。そして、これだけの個性溢れるメンバーのエネルギーをまとめ、大きなことを成し遂げ続けているのかわかるはずだ。“人生の教科書”と呼べる本との出会いは、同じ思いをもって生きている人たちとの出会いに通じる。心はLDHファミリーの一員、そんな風に自分を律して、人生を輝かせたいという人の大きなヒントとなるはずだ。(佐藤結衣)