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脚本家・北川悦吏子はヒロインに何を与える? 『半分、青い。』オリジナル脚本への期待

2018年04月02日 16:32  リアルサウンド

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 NHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『半分、青い。』が、4月2日に第1話の放送を迎えた。主人公は、『帝一の國』、『ひるなかの流星』、『俺物語!!』といった映画から、『こえ恋』(テレビ東京系)、『僕たちがやりました』(関西テレビ、フジテレビ系)などのドラマまで数多くの作品で魅力的なヒロイン務めてきた永野芽郁。これまで朝ドラでは、『花子とアン』や『とと姉ちゃん』、『わろてんか』など、実在する女性の物語をモチーフとした作品が多かったが、本作は、昨年の同クールで放送された『ひよっこ』同様に“オリジナル脚本”で描かれる。


参考:永野芽郁×星野源『半分、青い。』オープニング、朝ドラに革命起こす


 実在する女性をモチーフとした物語であっても、オリジナルの脚本で描かれる作品であっても、これまでは共通して女性の半生・生涯を中心に彼女たちの一代記が描かれてきた。ヒロインのキャラクターも根っこから素直かつ明るい性格で、困難をどんどん吹き飛ばしていくような天真爛漫な少女や女性たち。そんな主人公たちが時に悩み、そして立ち向かっていく。そんな朝ドラヒロインの奮闘には、元気をもらう場面がたくさんある。本作で永野が演じる鈴愛も、明るく、あらゆる物事を面白く感じる感性を持っていて、今後どんどん個性が発揮されていくであろうが、根本にある設定はこれまでの主人公らとも一貫している。


 だが、これまでのヒロインたちが受けてきた困難とは、また違った角度の問題を鈴愛は抱えることになっている。『ひよっこ』ではみね子(有村架純)が父の失踪により、『とと姉ちゃん』でも常子(高畑充希)が父親を早くに亡くし、苦労を強いられた。『あさが来た』、『べっぴんさん』、『わろてんか』それぞれの作品でも、ヒロインたちがその時代の出来事に飲み込まれ、四苦八苦してきた経緯がある。そして本作で鈴愛に与えられるのが、左耳が聞こえなくなるという困難である。


 これは、本作の脚本を手がける北川自身が、左耳の聴力を失ったことから発想を得た設定だ。北川は公式サイトに掲載されているインタビューで、「いまから3年ほど前に、私自身、左耳を失聴したのが始まりです。ちょっとショックではあったんですが、傘を差すと左側だけ雨音が聴こえず、雨が降っていないかのように感じるのがおもしろくて、『これはドラマになる』と思いました。片耳の聴こえないヒロインが、傘を差しながら空を見て、『半分、青い。』と、つぶやくーー。そんな情景が、ポンと浮かんできたんです」と本作が生まれた経緯を明かしてる。


 この言葉は、第1話の冒頭で鈴愛が放った「だからこうして、傘をさしても、左側に降る雨の音は聞こえなくて……右側だけ雨が降ってるみたい。でも、これを悲しい、と思うか、面白い、と思うかはその人次第。そして、私なんかは、ちょっとこれ面白い、なんて思うんだ」という言葉と類似している。本作で鈴愛が感じているものは、北川のちょっとした実体験も重ねて描かれているのだろう。


 これまで北川は、『愛していると言ってくれ』(TBS系)で豊川悦司が演じた主人公、『オレンジデイズ』(TBS系)で柴咲コウが演じたヒロインでも、同じように聴覚を失ったキャラクターを描いてきた。どちらの作品も、現代を生きる人に人間の温かみや優しさを教え、その時代を彩った代表作だっただけに、同じ路線で描かれる『半分、青い。』も自ずと期待値が上がってくる。第1話放送後には、CGで描かれた胎児姿の鈴愛が「生まれたーい」と叫ぶ斬新な登場シーンや、商店街などの街並みや住まいの様子から垣間見える時代背景に和んだという声がネット上にも溢れていた。


 朝ドラ以外の近年のドラマ作品の傾向を見ても、オリジナル脚本への期待は高い。約半年間、どのようにして毎朝、私たちの1日を見送ってくれる作品になるのだろうか。


(大和田茉椰)