「ホームについてから電車乗るまで40分かかった」「窓ガラスが割れた」――度々話題になる東京メトロ東西線の「痛勤電車」。国交省の調査によると午前7時50分から8時50分の木場~門前仲町駅区間の混雑率は199%となっている。
しかし混雑具合を数値で言われても、ピンと来ないのも正直なところ。例えばお弁当を持って乗車した場合、会社まで無事に運ぶことはできるのだろうか。
多くの企業が入社式を行う4月2日、筆者は葛西駅午前7時57分発三鷹行から大手町駅まで乗車し、ランチ輸送チャレンジを決行した。
運んだのは「おにぎり弁当」「サンドイッチ」「カップラーメン」など6種類
東西線は東京都中野区の中野駅から千葉県船橋市の西船橋駅を結ぶ、東京を東西に縦断する地下鉄だ。大手町、日本橋などのビジネス街に停車するため多くのビジネスマンが乗降車する。多様なお昼ご飯を想定し、今回は6種類のランチを用意した。
1.おにぎりと冷凍食品を中心とした「おにぎり弁当」
2.すぐに食べられる優れもの「サンドイッチ」
3.温かいものが食べたいときに重宝する「カップラーメン」
4.食べる暇がないときの秒速チャージ「カロリーメイト」
5.とりあえず甘いものが食べたいときの「三色団子」
6.財布の中身が寂しいときに重宝、かつ筆者の好きな食べ物「食パン」
一番混雑したのは西葛西~東陽町駅 自分のPCが骨盤に当たってつらい
このランチをトートバッグに入れて、葛西駅から乗車。この時間帯は2~3分ごろに電車が来るが、降車客はほぼゼロだ。乗車客を見ていると背中から乗り、僅かなスペースにうまいこと体を押し込んでいる。
筆者は最後の乗客として乗り込んだ。扉は締まるものの、頬が車窓につくほど窮屈だ。また背後から体を押されるため、扉に骨盤が当たって地味に痛い。手にスマホは持っていたものの、画面を見ることすら出来なかった。
次の西葛西~南砂町駅もほぼ降車客はいなかったが、次々と乗車客が乗ってくるため圧迫度が1.5倍ほど増した。夏フェスの前方でのモッシュを彷彿させる。このときポジション取りを間違えてしまい、隣の乗客と完全密着かつ向き合った状態になった。
顔が15センチ先にあって気まずいため体を回転させようとするが身動きが取れない。直にお腹のぽっこり具合、呼吸が伝わってくる。また扉からは離れたものの、次はトートバッグに入れた筆者のノートパソコンに骨盤が当たり、痛くつらい状態が続く。
筆者の身長はヒールを含めて174センチ程度だが、丁度男性の持つビジネスバッグが膝裏に当たり、電車が揺れるたび膝カックンを食らう。押しくら饅頭状態だからこそ立っていられる状況だ。スマホはかろうじて操作できるが、顔から5センチ程度しか離せないため目が疲れる。
東陽町でドカッと人が降り、やっとポケットから普通にスマホを出し入れできる状態になった。次の木場駅ではあまり乗車客はおらず、門前仲町駅でやっと体が密着しなくなった。茅場町を過ぎ、日本橋駅に着くと、床が見えるようになった。
大手町に着いたのは、予定時間から3分遅れの8時20分。だいぶ人が降りたため、立っている人はまばらだ。
国交省によると混雑率200%は「体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度ならなんとか読める」。たしかに木場~門前仲町駅間はこの状態だった。筆者が最も混んでいると感じた西葛西~東陽町間はこれ以上の混雑率だと言えそうだ。
ランチタイムを快適に過ごすため、食材と精神が損傷しない輸送チャレンジを!
ランチはこの"痛勤"に耐えられたのだろうか。結果、最も影響がなかったのは「カップラーメン」と「カロリーメイト」だった。多少へこみはするかと思ったが無傷で、満員電車にも耐えられることがわかった。
次ぐ「食パン」は上から見たときに少し斜めになっていることが確認できるが、大きな変化は見られない。
「三色団子」は変形しやすいプラスチック容器に入っていたため、容器の凹みに伴って団子も数箇所凹んでいた。
「おにぎり弁当」の惣菜は少しヨレているだけだが、おにぎりの一部がラップからはみ出してしまった。手作りのおにぎりを持参する場合、ラップなどに余裕をもたせて包む必要があるようだ。
最も影響を受けたのは「サンドイッチ」だった。運ぶ前は自立したサンドイッチが、満員電車に耐えきれず、底辺がひしゃげてしまった。具材の大きなはみ出しはなかったが、少し悲しい気持ちになった。サンドイッチは職場付近で調達するか、サンドイッチに適した弁当箱・タッパーの購入をおすすめする。
痛勤電車の被害は人間だけではない。なるべく強度の高い入れ物で運んだ方がランチも人間の精神も損傷が少ないことがわかった。この結果をもとに、特に新入社員に楽しいランチタイムをお過ごしいただきたい。
なお、使用した食料は編集部が美味しくいただきます。