2018年03月31日 10:52 弁護士ドットコム
日本はビールが高い。缶ビール1本(350ml)の酒税は77円。主要銘柄は1本200円程度だから、3分の1以上が税金の計算になる。そこで生まれたのが、発泡酒や第三のビール(新ジャンル)だ。
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発泡酒の酒税は、1缶47円(麦芽比率25%未満)、第三のビールは28円(その他の発泡性酒類)。どちらも100円台で買え、ビールの「代用品」として愛されている。
同じように酒税の影響で生まれた人気商品がある。アイルランドのギネスビールだ。こちらは当時の「本家」を超えて、新しい文化にまでなっている。
ギネス社が誕生した18世紀、アイルランドは英国の半植民地支配下にあった。
英国では1697年にビールの原料となる麦芽(発芽した大麦)への課税が始まり、節税のため新たな製法が模索された。誕生したのがホップを増やした「ペールエール」。さらに1720年代頃から、このペールエールなどをブレンドした「ポーター」と呼ばれる濃色エールが流行し、アイルランドにも多く輸出された。
こゆるぎ次郎『GUINNESSアイルランドが産んだ黒いビール』によると、英国製のビールには関税がかからず、しかも輸出すれば、醸造業者に英国の税金が還付されていたという。結果、アイルランドのビール醸造家は大きな打撃を受けた。
そこに対抗したのが、ギネス社だ。1778年に発売した「スタウト・ポーター」はアイルランドだけでなく、英国でも流行。現在の「スタウト」と呼ばれるスタイルを根付かせた。特徴は、発芽前の大麦をローストした独自の製法にあった。アイルランドでも麦芽への課税があったが、この製法なら麦芽の量を抑えられ、税制上の優位性もあったという。
ギネスは今でも全世界で愛飲されているが、ビールへの課税がなければ生まれなかったかもしれない。「必要は発明の母」と言えそうなエピソードだ。
(弁護士ドットコムニュース)