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本来の実力を発揮できずに終わった開幕戦、次戦に向け信頼性対策は急務/トロロッソ・ホンダF1コラム

2018年03月30日 13:11  AUTOSPORT web

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2018年F1開幕戦オーストラリアGP ピエールガスリー、ブレンドン・ハートレー
2018年開幕戦オーストラリアGPは、トロロッソ・ホンダにとって極めて厳しい結果に終わった。リザルトはともかく、「信頼性第一」を掲げて臨んだはずのシーズン開幕戦で、走行距離482kmそこそこでいきなりMGU-Hが壊れてしまったことは極めて深刻な事態だ。

 壊れたパワーユニットはそのままメルボルンから栃木県にある研究所HRDさくらへと送り返され、すでに原因究明と対策が急がれているはずだが、次のバーレーンGPに向けてパワーユニットを送り出さなければならない水曜日までの1週間でできる対策には限りがある。

 『年間3基』という制約が課されている中でも、いわゆる消耗部品の交換はいつでも許されており、どのパワーユニットメーカーもスパークプラグやモーターのシャフトなど負荷の掛かる消耗部品は毎レース週末もしくは金曜の夜にも交換している。こうした寿命の短いパーツが壊れたのならまだメンテナンスサイクルの変更で対応が可能だが、根本的な設計変更が必要となるようならばすぐには間に合わない。そもそも、信頼性を最優先に考慮して用意したはずのものが壊れたということは、ホンダの技術力が根幹から揺らいでしまうことになる。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターは、それでも今後の開発に影響はないと話す。
「その辺りの影響度合いはまだ分かりませんが、基本的な開発計画については足を引っ張るようなことはないよう、開発は開発で(今回の対策とは)別としてしっかりとやっていきたいと思っています」


 昨年のイタリアGPでストフェル・バンドーン車のみ二度にわたってMGU-Kのシャフトが折損した時のように走行ラインのバンプが影響した可能性もないわけではないが、そうだとしても耐久性の想定が充分でなかったことは事実であり、レースを止めてしまったことに変わりはない。「信頼性第一」を掲げていただけに、ホンダにとってはこれが対策と名誉挽回のラストチャンスと言っても過言ではない。そのくらい深刻な事態に直面しているのだ。

 一方、マシンパッケージとしてのパフォーマンスは決して悪くはなかった。

 予選で両ドライバーともにミスを犯して本来のポテンシャルを引き出すことができなかったが、「あれほど路面グリップが向上しているとは予想できずターン1でブレーキングが早すぎた」というブレンドン・ハートレーは、そこだけで0.2~0.3秒は失ったといい、それがなければフォース・インディア勢を上回る13番手だった。

 ピエール・ガスリーは「ターン3で最初のランより50mブレーキングを遅らせたらロックしてまっすぐコースオフ。Q2を意識して、僅かだけど限界を超えてしまった」。昨年から常にハートレーより0.2~0.5秒ほど速いタイムを刻んでいるガスリーならば、ミスをしたハートレーと0.459秒しか差がなかった12位のマクラーレン(バンドーン)に近いタイムを刻むことさえできたはずだ。

 だが、ともにアルバートパークは初体験という両ドライバーの若さが予選での不発に繋がってしまったことは否めない。

 決勝でもそれは続いた。スタート直後のターン1で派手にタイヤをロックさせたハートレーは、「ブレーキング時にラインを変えて路面のバンプでロックしてしまった」といい、これもこのサーキットでの経験があれば避けられたミスだった。

 大きくフラットスポットができてしまったタイヤをソフトタイヤに交換して最後まで走り切る戦略に出て、前の中団グループと同等のペースで追いかけていったが、すぐに失速。左リヤのフロアが壊れ、大幅にダウンフォースを失うとともにパンクも引き起こしてしまい「あそこでゲームオーバーだった」。これは不運でもあるが、バンプや縁石でダメージを負ったことは明らかで、やはり経験不足から来るものだったと言わざるを得ない。


 ガスリーは最後尾スタートながら好発進で1周目に順位を3つ上げ、スロー走行のマーカス・エリクソンを黄旗のせいで抜けずタイムロスしたもののそれもすぐに挽回し前の集団を追いかけていった。しかし冒頭に触れたMGU-Hのトラブルがレースの幕を下ろさせた。

 それでもガスリーは、自身のミスにガックリと肩を落としていた予選後とは打って変わって、明るい表情だった。

「ポイントが獲れたとは言わないけど、全体的に見てマシンのポテンシャルはポジティブな要素だよ。ハースやルノーはちょっと速いとしても中団グループはこの上ないほどタイトで、フォース・インディアやウイリアムズとは充分戦えるレベルだったし、実際に今日も僕はトラブルが起きるまでは前のストロールとオコンに追い付いていっていたからね。このタイトな中団グループの中で全てを上手くまとめて0.1秒を稼げれば、例えばブレンドン(・ハートレー)もQ2に進めていたわけだし、レースでは違った展開になっていたかもしれない」

 開幕戦のトロロッソ・ホンダは、ミスと不運とトラブルで実力を一度も結果に結びつけることができないままレース週末を終えてしまった。それだけに目に見えるかたちにはなっていないが、本来のパフォーマンスとしては最下位を走るレベルではなく、中団グループの中でマクラーレンのテールを追いかける位置にいられたことは間違いない。

 しかし、その速さを結果に結びつけられなかったのは、今のトロロッソ・ホンダのチーム力だ。まずはミスやトラブルをなくし、本来の速さを結果に繋げること。開幕戦のトロロッソ・ホンダは、自分たちが最低限果たすべき仕事を果たせたとはまだ言えない。