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buzz★Vibesが語る、ユニットの未来 森久保祥太郎「進めば進むほどやりたいことが増えていく」

2018年03月30日 12:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 人気声優/アーティストとして活躍するM.K.Bこと森久保祥太郎と、SOUL’d OUTでの活動を経て様々なアーティストへの楽曲提供を行なうShinnosukeによる音楽ユニット、buzz★Vibes。2017年7月に富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催された『Original Entertainment Paradise -おれパラ- 10th Anniversary ~ORE!!SUMMER~』で突如ステージに登場して話題を呼んだ彼らが、デビューミニアルバム『buzz★Parade』を完成させた。


 フィリーソウルを基調にキラキラとしたポップ・ミュージックを展開する1曲目「buzz★Parade」を筆頭に、ファンキーなカッティング・ギターと歌心が絡み合う「Screamin’ 2nite」、森久保祥太郎のソロ名義での楽曲「CHAIN REACTION」のギター・リフをランDMC&エアロスミスの「Walk This Way」のような雰囲気で再解釈した「Buzzin’ [Re:CHAIN REACTION]」など、収録曲はどれもバラエティ豊かな楽曲ばかり。


 2人の間に起きた様々な化学反応や、このユニットのこれからの可能性に胸躍らせたくなるような、巨大なワクワク感が全編に詰まっている。その制作過程について、2人に聞いた。(杉山仁)


■森久保祥太郎「『buzz★Parade』は、本の書き出しくらい」
――まずはじめにbuzz★Vibes結成の経緯を教えてください。


Shinnosuke:『森久保祥太郎』が、ランティスでソロ活動して10年を迎えたので、ここでちょっと違ったことをやりたいと思ったんでしょうね。彼はいろんな音楽が好きだけど、ロックでハードなイメージができてたので。ほかのジャンルもできる環境、別名義で歌えるユニットを以前から探していたそうなんです。


森久保祥太郎(以下、森久保):別名義でやらせていただきたいなって思ったのは、5年ぐらい前で、ずっとプロデューサーに提案してたんですよ。2、3年ぐらい前には、buzz★Vibesっていうユニット名ごと構想を練り始めていました。buzz★Vibesという名前はもう、画数最高ですから。調べたんですよね。姓名判断で。


Shinnosuke:大成功の名前なんだってね?


森久保:★がないと5画足んなくて、志半ばで終わるっていう未来なんですって。大文字と小文字の意味もあって、ちゃんと。


――Vが大文字ですもんね。


森久保:そうです。それで画数変わるんで。


Shinnosuke:ユニット名も含めて相当あっためてたんだねぇ。


森久保:そう! 僕は元々ソロなので、相方なのかバンドなのか、一緒に組む人を探そうと思ってて。


Shinnosuke:僕は僕でSOUL’dOUTというグループで活動していて、ランティスには作家活動でお世話になっていました。最初に「とりあえず森久保祥太郎が人を探してるから会ってみない?」と言われて、スタッフも含めてみんな同世代だし、なんか面白い音楽話になって繋がればいいな、っていう感じのテンションで会合に参加したんです。あわよくば楽曲提供させてもらえるかなって。でも、どうやら彼はちゃんとメンバーを探してたみたいで(笑)。


森久保:僕は、どんなお相手かしら? とお見合い気分で、その飲み会に行きました。そうしたら、「青春時代どんなん聞いてた?」みたいな話題になって、楽しくて。buzz★Vibesは、今までやってきた活動とは別のものなので、それをどういう形でやるのが一番いいのか探り探りでした。だから、出会いも含めて時間がかかってたんだけど、その飲み会で何かの扉が開いたんですよ。


ーー去年buzz★Vibesが世の中に出た時には、森久保さんのロックなイメージとも、SOUL’dOUTのアーバンでファンキーなヒップホップのイメージともまた違う雰囲気だったので、本当にびっくりしたんですよ。


Shinnosuke:ありがとうございます。それは嬉しいです。


森久保:青春時代に聴いて影響を受けた、当時のかっこいい大人たちの音を、実際に大人になった僕らがやってみたら面白いかなっていうのが、コンセプトの一つにあったんです。僕もヘビーロックだけじゃないし、シンちゃんも本当に幅広く色々音楽を作ったり聴いたりしてる人だから。普段メインストリームでやってることや作家活動だけでは消化しきれない、もっと本質的な部分を吐き出すという感じで、いろいろ合致できたんだと思います。


――二人とも曲が作れるからこそ、深い話もできるのではないでしょうか?


森久保:そうですね。だからイメージの共有はすごくしやすいです。


――buzz★Vibesが、今やっている音楽性にたどり着くまでの過程も教えてください。


森久保:たどり着いたというか……まだ序の口ですね。


Shinnosuke:いい意味で決めこまずに、こんなのもできるぞ、っていうか。


森久保:そうだね。まずシンちゃんが、今回の2曲目に入ってる「Screamin’ 2nite」のデモを作ってきてくれて、いいじゃん! こういうこと! って、僕の中でなったんですよ。で、詞書いてレコーディングしたタイミングで、ちょうどランティス主催のフェス(『Original Entertainment Paradise -おれパラ- 10th Anniversary ~ORE!!SUMMER~』)があったんで、もうゲリラでやっちゃえって。そこでお客さんが、まったく初めて聴く曲なのに楽しんでくれてる姿を見て、僕は「本でいうと、まだ1ページ目にもいってない。本の最初に”はじめに”っていうのがあるじゃないですか。あれぐらいの曲です」って言ったんです。この曲で気に入ってくれるのはもちろんウェルカムだけど、それ以上の可能性を持ってることに期待してほしいっていう意味を込めて口にしました。だからこのミニアルバムは、本の書き出しくらいの気がします。これはミステリーなのか、サスペンスなのか、それとも恋愛小説なのかまだわからないんですよ。


■森久保祥太郎「『U R my LOVER』は僕の中で最も素直に気持ちを書けた曲」
――そんな「Screamin’ 2nite」のデモをどのように考えていったのでしょうか?


Shinnosuke:覚えてるのが、プロデューサーが飲みの席で、「たとえばbuzz★Vibesが、タイアップでアニソンを制作したとする。そしたら、いわゆるザ・アニソン的な楽曲じゃなくて、ファンクコード一発物で1分半もたせたらすごいよね」っていう話をしてたんですよ。僕の中で、その言葉が妙にハマったんですよね。だけど、ファンクだけでやるのはちょっと大人すぎるなって思いました。僕はポピュラリティのある曲もすごく好きなので、やっぱりサビはちゃんとしたいなと。


――なるほど。今の話がまさに「Screamin’ 2nite」の曲の構造になっていますよね。


Shinnosuke:そうなんですよ。やっぱり洋楽に憧れてた世代なんで。僕は、プリンス、マイケル・ジャクソン、ジャネット・ジャクソンなどが大好きだったので、そういうミネアポリス・ファンクを真剣にやりたかったんですよね。まずは、自分でやりたいことぶつけてみようと思って作ったら、うまく刺さってくれたようです。


――森久保さんの歌い方も、だいぶ変わっている印象です。


森久保:そうですね。自分のソロ活動とは、湧いてくるモチベーションが違うので、意識して歌声を変えてるというよりは、必然的に変わっているという感じです。僕は声優をやってて、「こういうキャラクターだからこういう声を作る」っていう芝居はしたことないんですよ。やっぱり声って気持ちから出てくるから。あとはこの活動自体、マイノリティというよりもマジョリティな方向に振りたいっていうのがあったので。でも「Screamin’ 2nite」は、キャッチーさやポップさが集約されてるんだけど、狙いすぎてない。寄り道がちゃんとあるんですよね。


――森久保さんは、プリンスやマイケル、ジェームス・ブラウンなどを彷彿とさせるコールのような合いの手も入れていますよね。


Shinnosuke:あれかっこいいですよね。アドリブというかね。


――これは自然に出てきたのですか?


森久保:いや、自然にでるものもありますけど、デモから「この譜割りに入れて」みたいな感じで入っているので、それを忠実になぞってます。聴いててもかっこいいし、それがもう秀逸なので。


Shinnosuke:僕がガイドでいれたものを、フィルターを通してうまく変換してやってくれるんですよ。歌謡曲やポップスとかって、アドリブテイクやセリフっぽさがあまりないじゃないですか。僕は、いかに洋楽っぽくするかに重きを置いていたので、そういうのを積極的に取り入れました。


――森久保さんは、そこにどう歌詞を乗せていったのでしょうか?


森久保:「Screamin’ 2nite」は、“はじめまして。これがbuzz★Vibesの歌。お気に召してちょうだい”っていうようなテーマだったので、そのままの気持ちを綴りました。ミニアルバム全体に関しては、”THIS IS 俺”でやってきたことは、一切捨てようと思って。詞はもちろんのこと、メロディに対する言葉の乗せ方も、今までだったら絶対にやらなかったことをあえて挑戦しました。基本的には、ファンキーかつラブリー、そしてスイートな曲なので、ポジティブなオーラあふれる詞にしたいなっていう気持ちがあります。でも、僕はフィクションを描くのが、すごく苦手だなってことに改めて気付いて。実際に自分が体験したもとの感情があって、そこから膨らませて脚色するのはいいんですけどね。あと人様に書くのは別だけど、自分が歌うとなると乗らないんですよ。


 で、結構な急ピッチで作業が進む中、5曲目の「U R my LOVER」あたりで、どうしよう、ラブリーな引き出しがもうない……って切羽詰まって。「U R my LOVER」は、メロディーやアレンジ含め曲全体の雰囲気が、すごくラブリーでスイートな曲だったので、そこにド直球のものを乗せるよりは、逆にちょっとシニカルな角度でいった方がいいかなって思ったんです。だから、詞の内容は、もっともっと君に気の利いた愛のメッセージを送りたいけど、もうギリギリさっていう。結果的に、僕の中で最も素直に気持ちを書けた曲になりました。今後、このbuzz★Vibesで僕が表現していく世界観がわかった曲でもあります。


――<Crazy 4U>や<Well’ B 2gether>など、歌詞の表記も意識していますよね。


森久保:それはもう、プリンス先生ね。


Shinnosuke:本当だったら「i」も目のマークにしたくらいですからね(笑)。


森久保:今考えると、なんか若い子が使う“LINE言葉”みたいな。(笑)。


Shinnosuke:走りだよね、記号化する。


――二人がずっと聴いてきた音楽のエッセンスが、そこに活かされているんですね。


Shinnosuke:やっぱりみんな、好きなことの真似から入ってるんで。


――『buzz★Parade』のほかの曲についても聞きたいのですが、1曲目の「buzz★Parade」、2曲目の「Screamin’ 2nite」でキラーチューンがきて、3曲目の「FAKE?」で、また違うセクシーな雰囲気になりますよね。


Shinnosuke:この曲に限らずなんですけど、「こんなのもどう?」っていう曲を色々とぶつけようと思って、たくさんデモを作ったんですよ。バラードもありだろうし、ライブやるにあたっていろんな見せ方が必要だから、こういうちょっと昔っぽくて大人なR&Bもやりたいなと思って作りました。


■Shinnosuke「森久保祥太郎ファンが悶絶する様が見える」
ーーアイザック・ヘイズなどがやっている、すごく官能的なソウルを思い出しました。


Shinnosuke:なるほどね。黒人の音楽ってエロいですよね。


――その感じがちょっとありますよね。


Shinnosuke:そうですね。


森久保:元々、仮歌のサビに「FAKE?」って入ってて。実際は「FAKE?」以外にも、「CHASE」とか「MAKE」とか、いろいろ試したんですよ。でも、あのメロディに対して「FAKE?」っていう言葉が一番キャッチーだなと思って。じゃあもうタイトルをサビとテーマにしようって。この「FAKE?」というお題で、曲全体の切なげな雰囲気が表現できる出来事はないかなぁと思ったときに、あぁ、昔あったな、報われない恋が……と思い出して、その感情をフィードバックして詞にしました。で、あれは報われない恋愛関係だったけど、思い出の中ではそれを偽りと言わないでほしい、っていう願いを込めたんですよ。


Shinnosuke:いやらしいですよね、本当に(笑)。そういう感じで攻めたら、森久保祥太郎ファンが悶絶する様が見えるじゃないですか。それを楽しみたいなっていう。


森久保:僕はあまりそういうモチベーションはないんだけど、そこを引き出そうとしてくる。


ーーなるほど。そんな中で、6曲目「BRAND NEW UNIVERSE」は聴いて驚きました。


Shinnosuke:びっくりします(笑)? これはもう、ライブの最後にライト全光で壮大にいける感じにしたいよねっていうことで作りました。


ーーコーラスも壮大ですよね。展開もどんどん盛り上がっていって、最後にすごいギターソロがあるじゃないですか。


Shinnosuke:ミニアルバムじゃない感じですよね。フルアルバムっぽい。まぁ、そこも狙いどおりなんですけどね。80年代から今も活動されている、FENCE OF DEFENSEっていうバンドがあるんですけど、彼らがLAにレコーディングに行く際に、ちょっと1曲お願いできないですかってダメもとで頼んだら、「全然いいよー!」って快諾してくださって、ドラム、ベース、ギターを録ってきて下さったんですよ。だから「BRAND NEW UNIVERSE」は、LAレコーディングなんですよね(笑)。やっぱり80’sロック感っていうか、それこそプリンスとかの良さを当時リアルタイムで体験されてる先輩方なんで、狙いどおりのギターソロだったり、欲しいフレーズばっかり入っていて、感動しました。


――そこに森久保さんが語りみたいな文句を入れたりしている、と。


森久保:僕の書いた詞をシンちゃんに共有したら、「なんかピーターパンみたいだね」って。まさにそれで、窓から夜空見て、なんだろうこの抑えられないワクワク感は? なんならこの窓から飛び出しちゃおう! ってなって、ただの子ども部屋から、街の景色に変わって、最後は宇宙まで空を飛んで行く、みたいな。シンちゃんが作ってきた曲からそういうインスピレーションを受けたんですよね。「未来に対するワクワク感を僕らは共有したいし、忘れず持っていようぜ」っていう、buzz★Vibes流の「We Are The World」(USAフォー・アフリカ)にしたいなって。「BRAND NEW UNIVERSE」っていうタイトルがはまって、すごく壮大な曲になりましたね。でも、うわー、宇宙行っちゃったーって思うけど、最後にはちゃんと部屋に戻ってるんですよ。


――わかります。森久保さん最後に<Good night>って言ってますもんね。


森久保:<Good night>で曲のドラマ感をより一層ね。ギターソロから、まだ帰りたくない! って感じが出てるんですよ(笑)。すべて図らずもなんですが。FENCE OF DEFENSEのみなさんも含めた僕たちの想いが、勝手にビジョンとして繋がって出来上がった曲のような気がしてて。自然と生まれた世界観でしたね。


――buzz★Vibes自身も、これからどんな風になるのか、未来にワクワクしてるということなんでしょうかね?


Shinnosuke:そうですね。まだまだやりたいことはありますよっていう。


森久保:作業が進めば進むほど、やりたいことが増えていくんで。常に刺激を求めてるんですよね。


Shinnosuke:吸収していくネタもね、その年ごとに増えてくだろうし。「こんなんどう?」 ってよく会話の中で出てくるので。


森久保:だからそうやってどんどん根から栄養をもらって、自分の幹を太くしていきたいなっていうか。そうしないとたぶん進めないタイプなのかな。これが僕らだけじゃなくて、スタッフ陣もみんな「これの方がいいと思いますよ」「次はこれどうですか?」って楽しんでやってくれてるので。そのみんなで共有できている感じが、すごく楽しい。そういうことも含めて、今回のミニアルバムを作りながら、「何をもってbuzz★Vibesなんだろう」っていう根幹の部分を模索できたので、本当によかったです。ぜひここから、今後のbuzz★Vibesに期待を寄せていただければなと。実際そういう内容になっていると思いますので。(取材=杉山仁/構成=戸塚安友奈)