今週に入り、ベルギーのメディアを中心に報じられたティアゴ・モンテイロの怪我の回復状況と開幕参戦可否について、ホンダは事実関係を確認の上でモンテイロのモロッコでのドライブが難しいことを認め、代わってブーツェン・ジニヨン・レーシングは2017年TCRベネルクス王者のベンジャミン・レセンスを起用すると発表した。
現在41歳のモンテイロは、昨年8月に行われたWTCC世界ツーリングカー選手権向けのテストで、JASモータースポーツのTC1規定車両であるホンダ・シビックWTCCをドライブ中に大クラッシュ。タイトル争いの渦中にあったにもかかわらず、シーズン残り4戦をすべて欠場する決断を下していた。
しかし今月に入ってから、新たにWTCCとTCRインターナショナルが統合して誕生するWTCRワールド・ツーリングカー・カップ参戦に向け、イタリアのモンツァ、オランダ・ザンドフールトで立て続けにFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRのテストを敢行。怪我からの復帰後初となるレースカーのステアリングを握っていた。
しかし、そのテストの際にモンテイロ本人は「身体的回復状況を開幕前までに判断する」と言及しており、本人とホンダが協議の結果、回復を優先して参戦を中止。4月初週のモロッコ・ラウンドで、モンテイロがトム・コロネルのチームメイトとしてステアリングを握ることはなくなった。
「これは科学的な根拠に基づいて、肉体の回復にとって最善の方法だと考えての判断なんだ」と説明するモンテイロ。
「体調の方は素晴らしくいい状態まで回復しているけど、それに対して視力の方が追いついてきていない。その結果、コンペティションの世界に戻るには時期尚早だと判断したんだ」
「繰り返すけど、僕の回復は目覚ましいものがあり、医療チームから受けた治療は信じられないほどだけど、この段階でリスクを犯すことはできない。自分に手の届く範囲で可能な限りの手を尽くしたが、動体視力だけがまだ完全に戻ってはいないんだ」
「改めてこの機会に、この困難なプロセスを通じて疲れも感じさせずに私をサポートしてくれているチームに感謝の言葉を述べたい。もちろん、開幕戦に復帰できないことに僕自身が深く失望している。でも、僕はモロッコでステアリングを握らなくともチームとホンダのそばにいて、力強い結果が得られるよう手伝い、貢献するつもりだ」
一方、モンテイロの代役としてWTCR開幕戦への参戦が決まった18歳のレセンスは、エステバン・グエリエリとともに同じくホンダ・シビック・タイプR TCRでエントリーするミュニッヒ・モータースポーツのヤン・アーチャーより3歳若い、グリッド最年少ドライバーとなった。
「ブーツェン・ジニヨン・レーシングとともに、FIA WTCRにデビューできるなんて本当に光栄だし、楽しみだよ」と、現役TCRシリーズ王者のレセンス。
「ティアゴが回復し、彼のマシンに戻ってくるまで何戦のレースに出られるかはわからないけど、なによりも彼が速やかに回復してこのシリーズの舞台に戻ってくることを願っている」
「僕は昨年からこのFK8型のテストを何度も経験していて、つい最近もザンドフールトでブーツェン・ジニヨン・レーシングのメンバーと一緒にドライブしたばかりだ。WTCRのレベルはこれまで直面してきたどんな水準よりも高いところにあるだろうけど、僕らは良い仕事ができると確信している」
また、WTCCではかつてホンダ陣営のサテライトとしても活動していたハンガリーのゼングー・モータースポーツもWTCRへの参入を正式発表。セアトの新ブランド、クプラTCRの2台体制で、同じくWTCCをともに戦った23歳のノルベルト・ナジーを起用し、2台目にもハンガリー人のジョルト・サボーにステアリングを託すとしている。