オーストラリアGP初日に行われたフリー走行2回目で、赤旗中に減速できなかったとして3グリッド降格処分を科されたレッドブルのダニエル・リカルド。地元グランプリだったということもあって、リカルドは処分を下したレーススチュワード(審議委員会)を激しく非難した。
事件が起きたのはフリー走行2回目のセッション中盤。コントロールライン上の地面に埋設されていた計測用ケーブルが緩んだとして、レースディレクターが赤旗を出した。これにより、コース上にいたすべてのマシンは減速しながら、ピットインしなければならなくなった。
このとき、リカルドはウルトラソフトタイヤを履いてタイムアタック中で12コーナーを通過した直後だった。赤旗に気がついたリカルドはフライングラップを断念したものの、十分な減速ができていなかったとしてグリッド降格処分を科せられた。
レッドブル側の主張は、「赤旗はコントロールライン上で、減速が十分ではなかったとしても、ピットインしたリカルドの走行は危険を与えるものではなく、もう少し寛大な処分でもよかったのはないかというものだ」
だが、この件をオーストラリアGPのレーススチュワードのひとりであるエマニュエル・ピロに尋ねると、ピロは「下した処分は妥当だった」と反論した。
「ダニエルとレッドブルの気持ちは痛いほどわかる。しかし、ルールはルールだ。私情を挟むことは許されない。特に安全性に関する場合は」
2018年のF1のスポーティングレギュレーションには第31条6項が追加され、赤旗中にドライバーが確実に大きく速度を落とすよう定められている。その速度はターゲットタイムといって、FIAのマーシャリングシステムによって各マシンのステアリング上に表示される。では、なぜリカルドは赤旗を認識しつつ、そのタイムを下回った(速く走った)のか。
ピロによれば、ターゲットタイムはセーフティカー(SC)ラン時よりも35%遅くなるように設定され直したという。
「セーフティカーランやバーチャル・セーフティカー(VSC)ランのペースは指示していたが、赤旗時にピットインするための走行では、いままで『大きく速度を落として』という表現しかなかった」
「しかし、それではドライバーによって異なるため、SCやVSC時と同じようにペースを設定した。リカルドはそれを上回っていた。というか、彼は今年から設定されていたことを知らなかった。だから、昨年までと同じように少し減速して走行していたのだろう」
では、赤旗の原因となった場所を通過していないリカルドにペナルティを与えたことについて尋ねてみた。するとピロは次のように説明した。
「考えてみてほしい。彼らが『赤旗の原因となった場所を通過していない』と主張するのは結果論だ。レースディレクターが赤旗を出すとき、その場所は表示されない。だから、全区間で大きく速度を落とすようにという意味で赤旗が出される」
「もし、13コーナーや14コーナーで赤旗の原因となるように事故が起きていたら、リカルドのペースはとても危険な状況を引き起こしていたかもしれないということを忘れないでほしい」