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Sonar Pocketが歌い続けてきた“ラブソング”の進化 「自分から出る言葉を大事に」

2018年03月28日 20:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 Sonar Pocketの28枚目のシングル『108~永遠~』。表題曲は、3月31日公開の映画『honey』の主題歌として書き下ろされた。同映画は目黒あむによるマンガを原作としたラブストーリー。平野紫耀(King & Prince)演じる強面だが心はピュアな主人公・鬼瀬大雅と、平祐奈演じるヘタレでビビりな女子高生・小暮奈緒の恋模様を描く。


 2016年の秋より“第2章”を掲げ活動を続けているSonar Pocket。第2章がスタートしてから4作目のシングルとなる今作は、収録曲「108~永遠~」「Precious」ともにラブソングに仕上がっている。2008年のデビュー曲「Promise」をはじめ、これまでも数々のラブソングを歌い継いできた彼らだが、10周年を迎える今年に発表された「108~永遠~」には、その10年という歴史がどう表れているのか。3人に聞いた。(編集部)


■「直球ど真ん中ストレートなラブソング」(ko-dai)


ーー表題曲の「108~永遠~」は公開中の映画『honey』の書き下ろし主題歌です。映画を見て、どんなことを感じましたか?


ko-dai:曲作りのために何度か見たんですが、はじめから凄いキュンキュンする、日頃、生活している中では絶対に味わえない感情があるなと思いました。主人公の鬼瀬大雅くんのピュアさや真っ直ぐさ、一途な思いを、どう楽曲に落とし込むかが大切だと思ったので、そこを意識して作っていきました。Sonar Pocketが得意としていた直球ど真ん中ストレートなラブソングで、男の子である鬼瀬くんの思いを代弁できるような曲にしたいなと。


eyeron:10代の男の子と女の子が主人公の恋愛映画の主題歌をSonar Pocketがやれることが、まず嬉しいと思いました。自分たちがずっとラブソングを書いてきたからこそ、楽曲を作る時のオーダーも「Sonar Pocketらしいものでお願いします」ということだったし。楽曲も自分たちらしさが詰まっている部分もあるし、今年デビュー10周年イヤーに入るからこそ、今のラブソングの書き方としての言葉選びもあったりするので。Sonar Pocketらしさ、ラブソングの良さを追求して作ったからこそ見えてくる部分もありました。


matty:2人も言ったように凄くキュンとするというか。僕らの年齢からすると、日常なかなか、こういう感情に触れられないじゃないですか(笑)。今回、主題歌のオファーを頂いて、携わって、曲のことを考えながらも同時に「こういう10代に戻りたいな」とも思いました。


ーー去年リリースしたシングルはすべてコライトで制作していた楽曲でした。今回も、E-girlsやAAA、SMAPなど広くポップスを手掛けてきたArmySlickさんとの共作ですね。


ko-dai:ArmySlickさんは以前から何度か一緒に曲を制作したことがありました。まず、トラックメーカーとして実績もありますし、スピード感も早い方で。『honey』の主題歌を作るということで、1日一緒に作業するなかで、曲の全体像が見えてきました。今回は、カップリング曲の「Precious」もArmySlickさんと一緒に作りました。


ーー2曲ともラブソングという共通点がありますね。「108~永遠~」は、どういうテーマで作っていきましたか?


ko-dai:映画のエンディングとして、いかにハッピーな気持ちで盛り上げられるかと考えました。ArmySlickさんにもエンディングを見てもらって、「頭サビのほうが良いんじゃないか」という話になりました。Sonar Pocketとして映画のエンディング曲を担当するのは、今回が3作目だったのですが(編集部注:「Promise」が映画『シャカリキ!』主題歌、「花」が映画『ひまわりと子犬の7日間』主題歌)、今までは、すでに作っていた楽曲が主題歌に選ばれてきたので、書き下ろしは初めてで。今回は「ここから映像が始まって、ここで音が落ちて」とか、秒数単位で細かく調整していきました。


ーーSonar Pocketとしてラブソングをたくさん作ってきましたが、これまでの作品とは違う手ごたえを感じている部分はありますか?


ko-dai:意外と、ここまで王道なラブソングは、意識的に避けてきたことでもあるんですよね。直球でメッセージを届けるというのは久しぶりだったので、新鮮でした。ArmySlickさんは、僕たちがグループの“第2章”を掲げてからずっと一緒にやっている方で、Sonar Pocketの新しい部分とベーシックな部分を、バランス良くシンクロさせられたと思っています。歌詞においても、ストレートではあるんですが、日本語の言葉遣いの綺麗さだったり、例えば5年前のSonar Pocketではなかった言葉の言い回しとかもあったり。


matty:僕としては、自分達のベーシックな部分は第1章で表現できてきたかなと思いつつも、やっぱりまだ出してない表現方法や引き出しが沢山あったんだと、「108~永遠~」を通して改めて確認できたと感じています。ko-daiも言いましたけど、第1章と第2章を良いバランスでブレンドできたというか。第2章では、ロングツアーだったりシングルをリリースするにあたって、色々な濃い経験をしてきて。この1年間に経験したことは、デビューから今までの中で一番濃密な時間だったと思うんですよ。ko-daiの入院をきっかけに活動休止をして、復活して武道館を2日間やる。それを経験したからこそ、原点に立ち返ることができた。もちろん映画サイドからのオーダーもありましたけど、Sonar Pocketとしての歩みをシングルとして形にできたことは、次の10年に繋がるんじゃないかと思います。


eyeron:映画の制作スタッフからも「Sonar Pocketらしいもの」というお話があったからこそ、「だったら自分から出る言葉を大事にしていこう」と思えました。「今までやってきたことのない言葉で表現しよう」というよりは、「今までやった言葉でも今それを歌うから、意味合いが変わってくる」という感覚でしたね。10年間ラブソングを歌い続けてきたからこそ、同じ言葉でも響き方とか捉え方とかも変わってくるんじゃないかと。


■「シンプルに出てきたものが正しい」(eyeron)


ーー「自分たちから出る言葉」というのは、具体的にどういう部分でしょうか?


eyeron:僕が歌っている箇所だったら、<不器用な僕の「アリガトウ」>は、自分のベーシックにあるもので、これまでだったら逃げていた言葉ですね。でも、「Sonar Pocketらしく」ということがあったので、胸を張って出せました。この10年で色んな経験をしたからこそ、シンプルに出てきたものが正しいという自信もあります。


ko-dai:何年か前だったら、“あるある”というか、恋愛で誰もが通ったことのある経験や風景を歌っていたので。たとえば「好きだよ。~100回の後悔~」(2011年リリース)の<記念日のメール たくさんのハートマークお互い送り合って 増えてった鍵のマーク>。当時は今とは違ってみんな携帯電話を使っていたから、そのやりとりを大切に思う気持ちを<鍵のマーク>というモチーフを出して、分かりやすくしていたんですけど、「108~永遠~」は<空が笑ってる 風が踊ってる>とか<なびく髪 目が合い 笑い合う>っていう、景色がぱっと浮かんでくるような描き方になりました。全体としてはストレートなメッセージだけど、その中で比喩表現を使っていくというのは、僕たちとしては新しい部分だと思います。


ーー確かに、説明的すぎない、感覚に委ねる表現が増えた印象がありました。


matty:そうですね。表現って複雑で、考えさせられる表現、いかようにも取れるみたい表現もあるじゃないですか。でもある意味、<空が笑ってる 風が踊る>というのもストレートなんですよね。そこだけクローズアップしてもなんとなく感情がわかるというか、描かれている情景が想起しやすいですよね。


ko-dai:映画の風景からインスピレーションを受けたというのもありますね。特にエンディングがかかる前の風景が印象的だったので、映画とあわせて楽しんでほしいです。


ーーko-daiさんとeyeronさんの声質、あるいは歌い方の違いが、楽曲のアクセントになっていますね。


ko-dai:僕はわりと優しめで歌って、eyeronが明るく歌っていて、サビでもっと広がっていくというイメージですよね。声のバランスも、最近は1番2番で分けて僕とeyeronが歌うことも多かったんですが、「108~永遠」では、1番の中でAメロとBメロで声が変化していく。レコーディングの時も、僕がまず最初に歌を録ったのですが、そのあとのeyeronのテイクが明るくて、そっちの方が映画の雰囲気にもあっているなと思って。僕の歌声が切なく、寂しく聞こえたので、まるっと録り直しましたね。


ーーカップリングの「Precious」もバラードナンバーですが、2曲ともラブソングにしようというのはテーマとしてあったんですか?


ko-dai:「Precious」は、1年前くらいに完成して去年7月から始まったツアーで披露していた新曲です。「Precious」を作っているときは、当たり前のことにもありがたみを持って感謝しようとか、大切なものを見失わないように、というメッセージ性が、僕らの中でも大きなテーマになっていて。それは恋愛においても同じだと思うんですけど、今回、『honey』の主題歌で「108~永遠~」をリリースするにあたって、そういうテーマを持った曲をカップリングに入れておくことで、相乗効果じゃないですが、「108~永遠~」に大きな意味を与えてくれるなと思ったんです。


eyeron:この楽曲はSonar Pocketが第2章として少し変わろうとしている時に作っていたラブソングなんですよね。らしさを出した「108~永遠~」が1曲目にあって、「Precious」で新しさを追求していて、二つのラブソングが共存させることで、表現としての幅も見せることができるんじゃないかなと。


ーー同じラブソングでもアプローチの仕方が違ってきますもんね。


eyeron:そうですね。今までは表題曲がラブソングだったら、2曲目は違うテーマな曲にすることが多かったんですが、そうではなくて同じラブソングでも幅があることができたというのは良かったですね。


matty:「108~永遠」はデビューからお世話になっている師匠のような存在のSoundbreakersさんにアレンジをお願いしたのですが、「Precious」はアレンジまでArmySlickさんにお任せして。ピアノの旋律も含めて、ちょっとセンチメンタルな方向性でトラックを固めてもらいました。ギターの入れ方も、ただのアコギではなくナイロン弦で入れて。鉄の弦とナイロンの弦では響きが違って、ナイロン弦では、甘めというか丸いサウンドで温かい感じを出しつつ、でも切なさもある。僕らのラブソングに対する想いや世界観の構築の仕方がうまく発揮できた楽曲なんじゃないかなと思いますね。


■「2人の努力や試行錯誤する姿勢も伝わる」(matty)


ーー今年デビュー10周年を迎えるということで、まず昨年11月に日本武道館公演が2デイズありました。振り返ってみてどういうライブでしたか?


eyeron:11日はmattyの誕生日だったので、うまくいく色々な意味でドキドキでした(笑)。


matty:そうだね(笑)。僕はただ、ありがたかったですね。まさか舞台上で祝ってもらえるとは思わなかった。サプライズの直前、何が起こるんだっていう表情をしてたと思います(笑)


ーー(笑)。演出面でもこったパフォーマンスになっていましたね。


Ko-dai:演出家の加藤さんという方と相談して、武道館ならではのことができないかと話す中で、天井に近づけますよ、とご提案いただきました(笑)。地面から9mほどのリフトアップをして、怖かったです。乗るところが狭いし、揺れるし(笑)。でもファンの方に喜んでもらえるので怖がっている顔をしたらダメだなって。


ーートロッコで後ろまで行ったり、2階席にも近づいたりと、ファンみんなを楽しませようとする気持ちが伝わってきました。


ko-dai:ファンのみんなの近くにいくっていうのは、Sonar Pocketのライブで大事にしていることですね。客席から登場したり、近くを走ったりして、距離感を感じさせないライブを心がけています。今回の武道館では、ファンから楽曲にまつわるエピソードを募集したんですが、今回5年ぶりの武道館ということで、一緒にライブを作っていきたいなと思ったんです。2016年の10月に僕が病気になって入院して活動が止まってしまったので、そういった面も含めて今回の『Reroad』ツアーは、3人でもう1回ステージに立てる、3人で全国を回れるっていうことを、3人だけで伝えに行こうっていうのがテーマになっていました。


eyeron:3人だけのステージだったから、よりファンとの絆みたいなものを感じましたね。


ーー10年前と今を比較して、グループとして変わったと思うこと、変わっていないと思うことはありますか?


matty:基本的には変わってないんじゃないですかね。相変わらず楽屋でも馬鹿話してるし、普段3人でいる感じは変わらないですね。でも、やっぱり作品作りとかライブに対しての姿勢・考え方は、日を追うごとに毎日グレードアップしているんじゃないかな。こうやったらいいんじゃないか?とか、これをやったら次にこう繋がるんじゃないか?とか、経験したからこそわかることもあるので。ko-daiとeyeron2人の努力や試行錯誤する姿勢もすごく伝わるので、メンバーとして頼もしいなと思います。


eyeron:変わっていない部分はラブソングを大事に歌い続けているところですね。デビュー曲も「Promise」っていうラブソングでしたし。ラブソングで自分たちも成長させてもらったし、多くの人と出会うことができたので、そこは変わらずにこれからも歌っていきたいです。また、新しいSonar Pocketが提案するラブソングを作り続けたいなという気持ちも、今は持っています。グループとして、3人それぞれがもっと精進して、ひとりひとりの実力がSonar Pocketにフィードバックできるような活動をしたり。今は、それを自然にできているのがいいと思うし、次の15年20年に向けて、どんどん進化していきたいです。


ko-dai:変わってないのは、ライブが好きなことですね。ライブでしか味わえないものもあるし、ライブはコピーできない場所なので、その思いはデビュー当時から変わってないです。変わった部分は、Sonar Pocketとしてのプライドを持ったこと。普段、Sonar Pocketとして生きているというか、Sonar Pocketとして、他のアーティストに負けたくない気持ちも、だんだん強くなってきていると思います。


matty:10年で背負うものも変わってきたよね。


ko-dai:うん。応援してくれている人たちもたくさんいるから。この10年、本当に濃い経験をしてきたと思うけど、あっという間だったという感覚もあります。


(取材・文=若田悠希)