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高橋一生はやっぱり王子様だった 灰かぶりの『わろてんか』を救う男性キャストの輝き

2018年03月28日 11:41  リアルサウンド

リアルサウンド

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 今までの華やぐ赤色のイメージから一転。激しさを増す第二次世界大戦の最中を描いたNHKの連続テレビ小説『わろてんか』最終週「みんなでわろてんか」は、一面灰色の世界となった。3月28日に放送された第148話で迎えた終戦を機に、北村てん(葵わかな)は疎開先から大阪に戻ったが、烈火の犠牲となった北村笑店の姿に言葉を失う。


参考:『わろてんか』完成披露の初々しいキャストたち【写真】


 看板以外がすべて焼け落ちてしまった北村笑店。杉田楓(岡本玲)が台本を守り抜いていたのが唯一の救いだったが、彼女をはじめ、安来節乙女組のとわ(辻凪子)や曲芸師の佐助(湯浅崇)ら芸人たちは、笑いになど構っていられず故郷や家族の元に帰っていった。亡き夫・藤吉(松坂桃李)や芸人らとともに大切に作り上げた北村笑店は、笑いを提供する劇場に留まらず、芸人たちが集まる憩いの場であったことを改めて感じさせられる。


 本作は、日本で初めて笑いをビジネスにした女性・てんの姿を描いてきたが、今週ばかりは男性キャストの手腕を語らざるを得ない。専務としてだけでなくムードメーカーとして北村笑店を引っ張ってきた武井風太(濱田岳)は、気が滅入るようなシリアスなシーンが続いても、画面の色をがらりと変えるスイッチャーとして活躍してきた。だから、誰よりも熱く北村笑店を思い守ってきた彼が第148話で見せた喪失への涙は、これまでの明るさも相まってか戦争の無常さをただただ浮き彫りにする。「看板あっても芸人がおらんかったら、寄席にならへん」と仲間の死を悔やむ濱田の演技は、慌ただしい朝でも思わず立ち止まって涙してしまうほどの迫力だった。


 戻らぬ芸人たち、鈴を振ってみるものの出て来ぬ藤吉。残すところあと3話となったところであまりにも暗い展開を見せたが、やはりピンチを救うのは高橋一生演じる伊能栞だ。1週間前の3月20日に放送された第141話でてんとラストダンスを踊り、日本を離れた伊能。そんな彼が灰色の日本にベージュのスーツで颯爽と戻ってきた姿は、まさに王子様だった。


 17歳のてんとの初対面シーンで京の町に紳士服で現れたときもそうだったが、ともすれば漫画やアニメ内での理想郷でしか語られなかったキザさを、実写でしっかり成立させる高橋。『わろてんか』の後に続く情報番組『あさイチ』で、「涙吹っ飛ぶ伊能ちゃん」と言っていたアナウンサー・有働由美子の言葉に頷くばかりだ。


 さて、戦争を経てゼロからのスタートとなった北村笑店。伊能の登場シーンだけでなく、かつての“ひやしあめ”を彷彿させるようなすいとん販売などおなじみの場面も登場してきた。灰かぶりの世界を笑いでどう救っていくのか、再出発を果たすてんのシンデレラストーリーを温かく見守りたい。(阿部桜子)