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出勤中に「歩きスマホ」してたら転んでケガ! それでも「労災保険」の対象になる?

2018年03月28日 10:12  弁護士ドットコム

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歩きスマホがくせになっている会社員のYさん(20代)は先日、とうとうケガを負ってしまった。


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ある朝、いつものように出社しようとしていたところ、マンションの階段を踏みはずして、そのまま転んだのだ。高さは3~4段ぐらいだったが、とっさにスマホ(iPhoneX・15万円相当)を壊さないように身体をよじったため、顔や手を擦りむいて、前歯も少しかけてしまった。


ソーシャルゲーム好きのYさんはいつも、通勤中や駅のプラットホームでも歩きスマホをしている。仕事の連絡で歩きスマホをすることはあるが、ほとんどはゲームだ。この日も数年前に人気沸騰したあのソシャゲ。Yさんが歩きスマホでケガをしたのは、今回が初めてという。


●「歩きスマホ」の危険性はメディアでも指摘されている

病院では、全治数週間と診断された。交際している彼女には「いい年して何してるの!」と怒られてしまったが、幸いにも仕事に支障は出ておらず、職場で「その顔どうしたの?」と話しかけられるなど、まるで人気者になったような感覚を得ている。


ただ、通院のために会社を抜けなければならない。事故から数日経った今でも、お風呂に入ると、涙が出るくらい痛いという。また、口がうまく開かないため、固形物はうまく咀嚼できない。主な食事はゼリー飲料だ。


通勤中のケガとはいえ、これだけメディアで、その危険性が指摘されているにもかかわらず、歩きスマホをするなんて、飛んで火に入る夏の虫だろう。Yさんは「二度と歩きスマホはしない」と言うが、そのケガに労災保険はおりるのだろうか。山田智明弁護士に聞いた。


●「歩きスマホ」の自傷事故でも給付の対象になる

「結論からいいますと、労災保険はおります。


法律上は、『重大な過失』があるとして、給付制限の対象となることも考えられます。


ただ、労災実務上は、通達によって、『重大な過失』が給付制限の対象となるのは、労災事故発生の直接の原因となった行為が、法令上の危害防止に関する規定のうち、罰則の付されているものに違反する場合とされています。


歩きスマホそのものを禁止する法律や罰則はありません。したがって、歩きスマホによる自傷事故は、全額給付の対象になると考えられます」


●自動車通勤中の「ながらスマホ」だったら給付されないことも

「労災給付は、原則として、業務上の事由(業務災害)または通勤(通勤災害)によって、労働者の負傷が生じた場合を対象としています。


例外として、労災事故を『故意』に発生させた場合は全額不支給です。また、『故意の犯罪行為』や『重過失』に起因する場合は制限があります。


たとえば、自動車通勤中にスマホを操作して、事故があった場合、道路交通法違反にあたりますから、全部または一部が給付されないことになります。


Yさんは、労災給付が受けられるとはいえ、人にぶつかった場合は、民事上の損害賠償責任を負ったり、重過失致死傷など刑事上の問題になったりすることもありえます。歩きスマホは、極力ひかえたほうが良いでしょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
山田 智明(やまだ・ともあき)弁護士
2008年弁護士登録。2013年、柏第一法律事務所を開設。一般民事を中心に業務をおこなっており、労働問題については労働者側の代理人として活動している。
事務所名:柏第一法律事務所
事務所URL:http://www.kashiwadaiichi-lawoffice.com/