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GT3のカテゴリー存続をかけた最低生産台数規定、日本勢はニッサンGT-Rが対象か

2018年03月27日 17:31  AUTOSPORT web

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18モデルのGT-R GT3は今年、量産前の実戦経験を積む1年として限られたパートナーチームとの参戦。スーパーGTではGAINERが2台を走らせる
FIAのGTコミッションは、3月9日に行なわれたワールド・モータースポーツ・カウンシル(WMSC)で、FIA-GT3車両に最低生産台数を課すことを決定した。突然の発表と思われたが、その予兆は以前からあった。2017シーズン終盤、FIAからレクサスに「RC F GT3を世界で20台売れ」というお達しがあったとの噂が流れたのだ。

 実際、今回の規定はホモロゲーション取得から1年以内に最低10台、2年以内に合計20台の生産と定められている。“売れ”ではなく“作れ”という違いこそあるが、2年目を迎える17モデルのRC F GT3にとって、20台という数字はピタリとあてはまる。

 生産台数が規定された背景には、プロトタイプの登場を阻止することが理由にある。アメリカのPWCピレリ・ワールドチャレンジを戦うキャデラックATS-VRは、3年間でわずか3台しか生産されていない。今後も同じような“ワンオフ車両”が登場することも予想されていた。

 そもそもGT3車両は市販レーシングカーだ。当初の車両価格は3000万円前後、それがいまでは6000万円超にまで高騰している。パフォーマンスを追求すべく、コストが高くなることはしかたがないのかもしれない。

 しかし、それに加えてカスタマーが手に入れられないワンオフ車両が登場し活躍すれば、カスタマープログラム自体の破綻となり、それに対抗するパフォーマンスとするためにカスタマーカーの価格がさらに上昇する恐れもある。かつて、GT3の台頭によってGT1やGT2が消滅したように、GT4やTCRがカスタマーカーの主流となり、GT3も同じ道を歩みかねないのだ。

 ジェントルマンドライバーにとってGT4やTCRは魅力的なカテゴリーだが、セミプロレベルのドライバーやチームにとっては物足りなさを感じる部分もあるだろう。観る側としても、やはり速いほうが単純に面白い。今回の規定には、GT3を存続させる願いも込められているのではないか。

 この生産台数規定の対象となるのは、今後ホモロゲーションを取得する車両に課される見込みだ。となると、RC F GT3、昨年アメリカのIMSAやPWCに参戦していたホンダNSX GT3は対象外ということになる。先に挙げたFIAからのレクサスへのお達しは、この制度の導入にあたり示しをつける意味合いがあるのかもしれない。

 そして、この規定の対象として微妙なラインにいるのが、今年改良モデルを投入するニッサンGT-RニスモGT3とベントレー・コンチネンタルGT3。これに対し、ニッサン系チームの田中利和総監督は、「いずれにしても、これまで(15モデル)と変わらずやるだけですよ」とのこと。今年、18モデルのGT-R GT3は、世界で5台走ることが確定している。


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