小松浩子の展覧会『限界非効用』が3月31日から名古屋・RAINROOTSとMUNOの2会場で開催される。
1969年生まれの写真家・小松浩子。2009年に初個展を開催して以降、撮影した写真で壁や床などを覆って構成するインスタレーションを中心に制作している。2017年に東京・馬喰町のギャラリーαMで『鏡と穴―彫刻と写真の界面 vol.4 小松浩子』を開催。今年3月に『第43回木村伊兵衛写真賞』を受賞している。
『限界非効用』は、1月から行なわれている金村修、タカザワケンジ、小松浩子による連続展の最終章。ロール印画紙やモノクロバライタ印画紙の写真群を壁や床全体に配置するインスタレーションを中心に、2会場で異なる展示を行なう。小松が関東以外で作品を発表するのは今回が初となる。
初日の3月31日にはオープニングイベントとして、連続展の参加作家らによるトークイベントや、duennをゲストに招いた連続展のエンディングレセプションイベントが行なわれる。詳細はギャラリーのオフィシャルサイトを確認しよう。
■小松浩子のコメント
境界線を引くことは人間の本態的傾向であるという。境界線の選定は本質的に恣意的で、そこに線が引かれなければならない必然性はない。「昼」と「夜」、「善」と「悪」、「生」と「死」。必然性はないが、どこでも良いから世界に二値的な境界線を引くことで秩序を制定する仕掛け無しに世界を認識することはできない。世界はすべて多値的な連続体であって、どこにも二値的な境界線など存在しないが、たとえ理解不能な秩序でもカオスよりはマシで、写真になった世界はフレームという境界線による秩序を得たかに見える。多値的な連続体としての現実は認識できないために存在しないに等しく、写真になった世界こそが現実として立ち上がるが、この写真を大量に無秩序に配置することで、世界を多値的な連続体に戻すことは可能なのか。