「正直に言うと、今年の100号車(RAYBRIG NSX-GT)はノーマークで大丈夫だと思ってる」
岡山公式テストの搬入日、週末に向けて慌ただしく設営作業が進むパドックで、ライバル陣営のあるエンジニアが打ち明けた。
「ジェンソン(バトン)が速いドライバーであることは、もう間違いない。まぐれじゃ世界一にはなれないから。だからこそ、これまでのオフテストを見ていて『助かった』というのが本音だった。だって、あれだけ長い時間を(山本)尚貴が乗っていたら、ジェンソンはクルマに慣れる前に開幕を迎えることになる。それは100号車以外の全チームにとって助かることだよ」
現在のGT500は、たとえF1世界王者であろうと、いきなり勝てるほど甘いレースではない。フォーミュラとハコという根本的な違いに加え競争の激しいタイヤ、GT300のかわし方などマスターしておきたい項目は山ほどある。とくに0.1秒が明暗を分ける予選では“独特のコツ”も求められる。
「それらの習熟に必要な時間が設けられていない」というのが冒頭のエンジニアの見立てだった。しかし、岡山公式テストで事態は一変した。
テスト初日、計4時間の走行はすべてがバトンに割り当てられた。2日目には山本もステアリングを握ったが、タイヤテストはバトンが行ない、前日に続きかなりの走行距離を稼いだ。この状況を見て「やっかいなことになった」というのは前述のエンジニアだ。
「チームなのか、尚貴なのか誰が今回のメニュー(バトンを多く走らせること)を決めたのかは分からないけど、決断した人のレース勘はすごいね。こんなことされると周りとしては困るけど『相手の嫌がることをする』のは、勝負の世界の鉄則だから仕方がない」
とはいえ、バトンにはまだ習得すべき課題がある。
GT300をかわしながらのバトルやピックアップの対処法などは実戦でマスターしていくしかない。それらを踏まえ先のエンジニアにバトンのGT500初優勝の時期を尋ねると「ほかがウエイトを多く積むシーズン後半のSUGO(第6戦)かオートポリス(第7戦)あたりにはレイブリックが優勝争いしている気がする」と言う。
たしかに、それらふたつはNSXが得意とするサーキットである。果たして、その予想は的中するのか?
オートスポーツ No.1478(3月30日発売号)
[開幕直前]スーパーGT大特集
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