今季からルノー製のパワーユニットを積み“マクラーレン第3章”ともいうべきシーズンに突入した2度のF1ワールドチャンピオン、フェルナンド・アロンソが、昨年の11月にスペインで行ったプライベートテストで2011年のバサースト1000を制したホールデン・コモドアをテストする予定だったことが明らかになった。
VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーと、F1開幕戦オーストラリアGPが併催されるアルバートパークのパドックで、メディアの取材に応じたマクラーレンのエグゼクティブディレクターを務めるザック・ブラウンは、「昨年フェルナンドにバサースト1000優勝車のステアリングを握ってもらう機会を設けたのだが、とある理由から直前で断念せざるを得なかった」と明かした。
昨年11月にスペインのアラゴンで、ブラウンが代表を務めるユナイテッド・オートスポーツのプライベート・セッションを行った際、ブラウンはデイトナ24時間向けのLMP2リジェとともに、自身が購入した2011年型ホールデン・コモドアを運び込んだ。
このマシンはガース・タンダー/ニック・パーキャット組の手でバサースト1000での勝利を収めた1台であり、ブラウンが自身のコレクションとして昨年に入手。その後、ユナイテッド・オートスポーツはアンドレッティ・オートスポートとともに2018年1月1日付で同チームに資本参入し、新たにウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッドとして、VASCに参戦を果たすこととなった。
マクラーレン・テクノロジー・グループのエグゼクティブディレクターであり、ユナイテッド・オートスポーツの共同創業者でもあるブラウンは、その11月のアラゴンで2018年1月開催のデイトナ24時間に向けたテストセッションを開催し、アロンソはそこで初めてLMP2のステアリングを握った。
その際、プライベート・コレクションのホールデンは2度目の走行機会として同サーキットに運び込まれ、同じくテストを行ったフィリップ・アルバカーキに続いて、アロンソにもステアリングを託す予定だったという。
「その日がフェルナンドにとって最初のLMP2テストの機会だった」と説明するブラウン。
「我々は『1日の終わりに時間が残っていたら、このホールデンでお楽しみといこう。このマシンも非常に楽しそうだ』なんて話していたんだ。でも最終的にはガソリンが足りなくなり、その日のテストを切り上げなくてはならなくなったんだ」と続けたブラウン。
「実際には、LMP2のプログラムを終えてフィリップ・アルバカーキがコモドアのステアリングを握ってトラックに出て行ったんだけど、数周したところでバックストレートで止まってしまったんだ」
これを受け「アロンソを先に座らせる選択肢はなかったのか?」と問われたブラウンは、「それはない。これはあくまで余興だったからね」と、付け加えた。
「この日の仕事はもちろんLMP2のマシンを理解し、デイトナ24時間に向けやるべき準備をすることだった。その仕事を終えた1日の最後に、真剣な仕事モードから離れてなお時間があれば、このマシンで遊ぼう、と話していたんだ」
「もちろん、フェルナンドはこの種のマシンが大好きだと思うよ」
アロンソは昨年のF1モナコGPを欠場し、北米インディカー・シリーズ最高峰のイベントであるインディ500に参戦。今季はその北米シングルシーターの祭典には復帰しない意向ではあるものの、F1と並行してトヨタとWEC世界耐久選手権に参戦することを発表している。
また、前出のとおりブラウンがVASCのチームを買収したことで、このオーストラリアのシリーズへの参戦にも大きく可能性が開かれることとなり、実際にアロンソ本人もシリーズ最大の祭典であるバサースト1000への出場に興味を示しているという。
しかしブラウンは、今季のバサースト1000についてはF1日本GPとのカレンダー重複の事実も踏まえながら「フェルナンドは充分に準備が整ってからでなくては、本気で挑戦することはないだろう」と語った。
「だから今季は日本GPへ参戦する。彼は私が知る限り史上最高のレーサーだ。彼はあらゆる種類のモータースポーツを愛し、魅了されてもいる。しかし、だからこそすべてを真剣に取り組みたいという願望を持っている。競争力があると思えないことを、やりたいとは言わないはずだ」
同様にブラウンは、アロンソのチームメイトであるストフェル・バンドーンも「バサーストに強い関心を示していた」ことを明かしたが、こちらも日程の影響で今季実現は難しいだろうとの見通しを語った。
「今季のデイトナを戦っていた際に『なあストフェル、他にも参戦してみたいレースはあるか?』と尋ねた。すると彼は『そうだね、バサーストには出てみたいね』と答えたんだ。レーシングドライバーなら、誰もがこのシリーズに魅了されている証であり、今もF1グリッドに並ぶドライバーの多くが、このカテゴリーを経験してみたいと思っているはずだ」