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L’Arc~en~Ciel、サカナクション、RIZE、アジカン、チャット…キャリアバンドの記念碑的作品

2018年03月27日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 L‘Arc~en~Cielの25周年ライブの音源を収録したライブ盤、デビュー10周年を迎えたサカナクションの初ベスト、今年7月に解散するチャットモンチーのトリビュート。今回は豊富なキャリアを持つバンドによる、記念碑的なアイテムを紹介。多くのファンに長く愛されると同時に、下の世代のアーティストに多彩な影響を与えているバンドの魅力と功績を感じ取ってほしい。


(関連:L’Arc-en-Ciel結成25周年ライブで感じた、最大公約数としての“ラルクらしさ”


■L’Arc~en~Ciel『25th L’Anniversry LIVE』
 2017年4月7日、8日に東京ドームで開催された『25th L’Anniversry LIVE』の音源を収録したL’Arc~en~Ciel初のライブアルバム。25年のキャリアを網羅したベストヒット的なセットリストとあって、約5万5000人のオーディエンスが熱狂した会場の雰囲気がダイレクトに体感できる。2012年のワールドツアー以降は、2014年3月(東京・国立競技場)、2015年9月(大阪・夢洲)と“1年半~2年に1回の大型ライブ”という活動サイクルになっているが、まったく違う個性を持ったメンバー4人の音がぶつかり合う独創的なバンドサウンドは、年数を重ねるごとに凄みを増している。こんなにもマニアックで実験的なバンドが、25周年を過ぎた現在も”日本を代表するスタジアムバンド”として存在していること自体に改めて驚かされる。


■サカナクション『魚図鑑』
 2008年のデビューの時点から“アンダーグラウンドとオーバーグラウンドをつなぐ”という目標を掲げ、ダンスミュージックとロックの融合させたサウンドメイク、快楽的なグルーヴと奥深いメッセージ性を同時に感じさせる歌詞、最先端のテクノロジーを積極的に取り入れたステージングといった革新的なトライを続けてきたサカナクション。初のベストアルバム『魚図鑑』をじっくり聴き込めば、自らが掲げた理想のビジョンを実現させてきた5人のプロセス、試行錯誤の痕跡が見えてくるはずだ。この10年の活動のなかで、日本のポップミュージックに様々なイノベーションを起こしたサカナクションは、その最初の集大成とも言える本作によって、いよいよ次のフェーズへと進み始めることになるだろう。


■RIZE『ALL TIME BEST mixed by MIGHTY CROWN』
 Red Hot Chili Peppers、Rage Against The Machineといった90年代のアメリカンロックと生々しくリンクした音楽性、ヒップホップ、ヘビィロックなどを自由に撮り込んだバンドグルーヴ、そして、JESSE(Vo / Gt)が放つリアルなメッセージによって日本のバンドシーンの在り方を一変させたRIZE。これまでに発表されたすべての楽曲からファン投票で選ばれた本作『ALL TIME BEST mixed by MIGHTY CROWN』は、このバンドの20年のキャリアを総括すると同時に、誰にも媚びず、自らの道を突き進んできた彼らの生き方が強く刻まれている。ミックスを手がけたのは、Mighty CrownのMasta Simon。さらにFIRE BALLとのコラボによる新曲「お客様本位」が収録されるなど、シーンを超越し続ける彼ららしいベストに仕上がっている。


■ASIAN KUNG-FU GENERATION『BEST HIT AKG 2(2012-2018)』
 ASIAN KUNG-FU GENERATIONにとって『BEST HIT AKG』から6年ぶりとなるベスト盤『BEST HIT AKG 2 (2012-2018)』には、2012年以降、つまり震災が起きた後に制作された楽曲がコンパイルされている。2010年前後には壁にぶつかっていたようにも見えたアジカンは、震災を契機にして“自らやるべきこと”を見つめ直し、バンドとしての一体感を取り戻した。特に本作に収められた最初の2曲(「夜を越えて」「踵で愛を打ち鳴らせ」)には、音楽に対するモチベーションを新たに掴み直した彼らの瑞々しいパワーが宿っていて、いま聴いても強く心を揺さぶられる。また、Foo Fightersのプライベートスタジオで録音されたアルバム『Wonder Future』(2015年)をきっかけにシンプルかつラウドなギターロックに回帰。サウンドの変化を時系列で追えるのも本作の魅力だ。


■『CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~』
 2018年7月に“完結”するチャットモンチーのトリビュートアルバム『CHATMONCHY Tribute ~My CHATMONCHY~』。恋の痛みを濃密なエモーションとともの放ちまくる忘れらんねえよの「ハナノユメ」、未来的なエレクトロ・サウンドが印象的なねごとの「シャングリラ」、橋本絵莉子(Vo / Gt)、福岡晃子(Ba / Cho)も参加したコントを交えたグループ魂の「恋愛スピリッツ」など、まさに“これが自分にとってのチャットモンチーだ!”という思いに溢れたカバーが並ぶ。天然のオルタナティブ感覚に貫かれたアンサンブル、独特の言語センスと繊細な感情表現に歌詞がひとつになった歌詞を軸にした彼女たちの音楽は、同時代のアーティスト(特に下の世代のバンド)に大きな影響を与えた。その根底にあるのは“好きなようにやっていい”という当たり前の態度だったのだと思う。(森朋之)