アメリカの自動車レース統括団体IMSAのスコット・アサートン代表は、FIAとACOフランス西部自動車クラブと議論を進めるなかで、将来的なプロトタイプの共通レギュレーション策定に向けた議論が活発化していると明かした。
IMSAとFIA、ACOの3団体と現在WEC世界耐久選手権のLMP1クラスに参入している各マニュファクチャラーは先週、セブリングで会合を実施。早ければ2020/21年のWECで採用される次世代LMP1レギュレーション策定に向けた議論が進められた。
この会合について詳細は明かされておらず、関係者も口を閉ざしているが、少なくとも今回の会合で大きな進展はなかったとみられる。
しかし、IMSAのアサートン代表は、将来的な提携の可能性について楽観視していることを明かした。
「活発な対話が繰り広げられており、議論に関わる人々も多くなっている」とアサートン。
「実は当初、ACOのビンセント(ボーメニル/ACOのスポーティングディレクター)が参加する予定はなかったんだ。彼が加わってくれてよかった。我々は(セブリングでの会合の)10日ほど前にビデオカンファレンスを行い、DPiに参加しているマニュファクチャラーや参入に興味がある人々が参加した」
「今回(セブリングで)開催した会合は、そのビデオカンファレンスの続きだったんだ。私を含めたIMSA首脳陣と(ACOの)ピエール(フィヨン会長)、(WECの)ジェラルド(ヌブーCEO)と会合を持ち、同じトピックスについて話しあった。技術面というよりも“哲学的”な話が主だったよ」
「実りある話ができた。今後も対話は継続していく。議論が進むにつれて将来のビジョンも明確になるだろうし、それほど遠くない将来には全員がなんらかの決断を下す必要に迫られる」
なお、アサートンによれば今回進行中の議論は、3年前にDPiとLMP2の共通プラットホームに関する議論を進めた時よりも“複雑だ”という。3年前はACOがDPiの理念に意義を唱えたため、規則共通化には至らなかった。
「技術的な側面と、LMP1、DPiの双方を取り巻く状況が絡み合い、さらにシチュエーションを複雑にしている」とアサートン。
「以前とは状況が違う。あの時、デイトナ・プロトタイプは寿命が近づいていて、誰もが新たなスタートを切る準備が整っていた」
「ただ、あの時は誰もが妥協を強いられるだろうことは分かっていた。取捨選択を強いられることになっていただろう」
■新LMP1規定導入が1年先送りに?
なお、ACOが打ち出している次世代LMP1のコンセプトには、ル・マンでのラップタイムを維持することを目的にハイパワーハイブリッドを採用する案も含まれているとの見方があるほか、四輪駆動を廃止する一方、複数のエアロキットを制作するコストを削るためにアクティブエアロを採用する案もあるという。
なお、現在DPiに参戦しているマニュファクチャラーは投入できるエアロパッケージが1種類に制限されており、調整できるのはリヤウイングの角度やダイププレーンなど細かな点に限られている。また、エンジンの出力も575~600馬力以内に収めるよう求められている。
この会合についてACOのボーメニルは一切詳細を明かさなかったものの、アサートンはIMSAの次期レギュレーション決定時期には「柔軟性がある」と述べている。
また、IMSAは先日、現行のDPiレギュレーションを2021年末まで採用することを決定。アサートンは早くても2022年まで新レギュレーションを採用しない方針を明らかにした。
以前、ACOのフィヨン代表はLMP1クラスの新たなレギュレーションを2018年6月のル・マン24時間で発表したいとの意向を示していたが、IMSA側の動きを受けて2020/21年のWECに導入予定の新規定を1年後ろ倒しにする可能性もある。
フィヨン代表が設けた6月というデッドラインについて「明確かつ理解できる目標だ」とアサートン。
「一切、障害がなければ簡単に達成できるだろう。ただ、まだ課題は山積みになっているから、このデッドラインに間に合うかどうか言及するのは避けたい」