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葵わかなが成田凌に送った母の言葉 『わろてんか』が伝え続けた“笑い”の大切さ

2018年03月25日 06:02  リアルサウンド

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 1945年(昭和20年)、アメリカ軍の空襲がいよいよ大阪にも及び、てん(葵わかな)は北村笑店の解散を決める。それは笑いの灯を守るため、いつか寄席を再開する日までの苦渋の決断だった。


参考:岡本玲、『わろてんか』の中で最も“変化”したキャラクターに 楓役で見せた成長


 『わろてんか』(NHK総合)第25週「さらば北村笑店」で、伊能(高橋一生)はアメリカ行きを決断、万丈目(藤井隆)は療養のため奈良・十津川へと向かう。風太(濱田岳)は、てんやトキ(徳永えり)を疎開させ、笑いの決別式を盛大に開催。北村笑店の面々は戦火の影響を受け、次第に散り散りになっていく。


 母親であるてんから勘当された隼也(成田凌)は召集令状を機に、つばき(水上京香)と藤一郎(南岐佐)を預けるため再び大阪へ。てんは祖母として初めて隼也たち家族と対面。長い月日を経て、勘当を言い渡したときの本心を隼也へと打ち明ける。


 隼也だけでなく、てんに頭を下げなければいけないのは、立場をわきまえず隼也と駆け落ちをしたつばきも一緒だった。家事を手伝うことを理由に、てんと2人きりになったつばきは「この家の敷居またげる身でないのは十分に分かってます」と謝罪の意を伝える。隼也も藤吉(松坂桃李)の跡を継がずにつばきと家を出て行ったこと、その上でてんに2人の面倒を見てもらおうとしていることを謝る。


「みんなの前で言われへんけど、うちも駆け落ちしたさかいなぁ。よう叱れへんのや」「うちも勘当された身ぃで里に借金頼みに行ったなぁ。偉そうなこと言えまへん」。勘当、親不孝者なのは、親子二代。かつて、しず(鈴木保奈美)がそっとてんを見守ってくれていたように、てんもまた隼也を思っていたのだ。


 風太の娘・飛鳥(花田鼓)が藤一郎の描く絵に「それ誰?」と聞くシーンがあるが、彼は隼也とつばき、そして通天閣に乗ったてんを描いていた。「おばあちゃんは通天閣を買うた日本一のおばあちゃんや!」と偉いから好きという、正直過ぎる理由でおばあちゃん愛を示すが、それは同時に隼也が離れていてもてんを思い、藤一郎におばあちゃんの話を聞かせていたことを表している。藤一郎からおばあちゃんという言葉が出たとき、てんは驚いた表情を見せるが、隼也の思いを受け取り、藤吉との思い出が詰まった“んが付くごっこ”を始める。代々と続く、藤岡家・北村家の家族が繋がった瞬間でもある。


「隼也、笑てるか? 家族3人、笑て暮らしてますか?」「戦地ではつらいこともあるかもしれへん。それでも笑て生きるんや。生きて必ず無事に帰ってきてくれやす」。辛いときこそ、笑いを。戦地に向かう、隼也に母として送ったてんの言葉は、『わろてんか』が一貫して伝え続けるメッセージだ。最終週「みんなでわろてんか」では、戦火がさらに激しくなる中、風太、隼也、伊能が、それぞれ夢に、愛のために生きる。そのとき、てんは最後にどのようなメッセージを視聴者に届けるのか。(渡辺彰浩)