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阪本一樹×須賀健太が語る、『サイモン&タダタカシ』を通しての成長 須賀「一樹は役者として大きな変化を遂げた」

2018年03月24日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 若手映画監督の登竜門、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)において、ジェムストーン賞を受賞した小田学監督の長編デビュー作『サイモン&タダタカシ』が3月24日より公開される。本作は、工業高校に通うふたりの男子高校生・サイモンとタダタカシが、高校最後の夏休みに“運命の女”を探して旅に出る姿を描く“青春純愛映画”だ。


 リアルサウンド映画部では、本作の主役・サイモンとタダタカシを演じた阪本一樹と須賀健太にインタビューを行った。今年芸歴20年目を迎える須賀と、本作が映画デビューとなる阪本。好対照なキャラクターを演じた2人が、本作とどのように向き合っていったのか、じっくりと話を聞いた。


ーー今年でデビュー20周年を迎える須賀さんに対して、阪本さんは本作が映画初出演にして初主演です。事務所の先輩でもある須賀さんと、同級生役として共演することが決まったときの最初の心境は?


阪本一樹(以下、阪本):僕にとって須賀さんはずっとテレビの中の方だったので、演じているキャラクターのような明るい方ではなくて、逆に「怖い人なのかな」という印象もあったんです。


須賀健太(以下、須賀):そんなことないでしょう(笑)。


阪本:撮影を重ねていくうちに、タダタカシと同じような明るさを持った方なんだと感じてました。


ーー須賀さんは阪本さんと実年齢は4歳離れていますが、同級生役の抵抗は特に?


須賀:僕は30歳まで学生役をやろうと思っているんで(笑)。


阪本:まだ全然大丈夫ですね。


須賀:一樹も大人っぽい雰囲気を持っているので、同級生を演じる上で抵抗は全然なかったんです。


ーー本作を観ていると、思わず高校生の頃に引き戻される瞬間が多々ありました。


須賀:僕が演じたタダタカシは、とにかくピュアで真っ直ぐな思考の持ち主です。周りからバカバカしく見えたとしても、「そのことしか考えられない!」というのは多くの人が経験したことがあると思うんです。観ている方が、少しでもそういった気持ちを思い出してしまうような、そんなキャラクターにしたいと思って演じていました。


ーータダタカシは須賀さんに似ていますか。


須賀:学生時代は教室でもうるさい方でしたし、すぐに何かに影響されがちなので、共感はしやすかったです。決してサイモンタイプではなかったですね。


阪本:逆に僕はタダタカシタイプには絶対になれないです。性格はサイモンに近かったので、演じやすかったです。


須賀:だからこそ一樹のタダタカシも観てみたいな。タダタカシを演じているのが全く想像つかない。


阪本:タダタカシのような真っ直ぐな感じにはどうもなれなくて。須賀さんが羨ましい部分もあります。


須賀:(笑)。


ーー須賀さんの演技を1番近くで観ていて、そのすごさはどこにあると感じましたか。


須賀:いっぱい言っていいぞ(笑)。


阪本:須賀さんがいるだけでスタッフの方々がみんな元気になるんです。撮影が長くなってみんなが疲れているときも、自分から現場を盛り上げて下さいました。演技も間近で見させていただいて、本当に勉強になりました。


須賀:一樹は本作が初出演作になりますが、人って短期間にこんなに変わっていくのかと驚きました。サイモンとしての目つき、芝居をしている中での雰囲気、劇中のサイモンの変化と同様に、一樹も役者として大きな変化を遂げたと思います。


ーー確かに序盤のサイモンと終盤のサイモンでは雰囲気が変化していますね。特に、サイモンがタカシに自分の思いを告げるシーンはグッとくるものがありました。


須賀:そうなんですよ。サイモンが想いを告げるシーンと、映画のラストとなる2人の帰り道のシーンは、「芝居の意思疎通ができている」とお互いに肌で感じながら演技ができていたと思います。一樹が自分の感情を出すことにどんどん慣れていったのかなと感じました。


阪本:撮影に慣れていったというのもあると思いますが、撮影の時間外も須賀さんとコミュニケーションを取って、ふたりでいることが当たり前になっていったからこそ、それが映像にも表れていたのかなと感じました。


ーーサイモンが想いを告げた後のタカシの発言も素敵ですよね。普段おちゃらけているのに、サイモンを大事に思うからこその真剣さもあって。


須賀:あのシーンはすごくリハーサルをしました。タダタカシを演じる上で、声のトーンをすごく意識していたのですが、このシーンはそのチューニングにすごく気を遣っていて。セリフをひとつ言うごとに感情が変わっていく。小田監督ともかなり相談したシーンのひとつです。


阪本:このシーンをどう見てもらえるか、それが本作のすごく重要なところなので、監督と須賀さんと綿密に声のトーンや間を作っていきました。


ーータダタカシとサイモンの青春の日々を見て、自分もあの頃を思い出す。それが本作の魅力かと思いきや、終盤には多くの人がびっくりする展開が待ち受けています。


須賀:最初に脚本を読んだとき、一体どうやって映画化するのだろうと思いました。


阪本:完成した作品を観て、こんな形になるとは全く想像も付かなかったです。


須賀:僕が言うのもなんですが、その点でも一樹はかなり鍛えられたと思います。小田監督は大真面目に抽象的なことを言うんです。でも、自分の中には明確なビジョンがある方なので、そこにどうやって近づけていけるか、という楽しさはありました。監督は誰よりもサイモンであり、タダタカシであったので。


阪本:初めての映画の現場が小田監督で、そして須賀さんと一緒に主演を務めることができたことは本当に有難いことだと思います。みんなで作品を作っていく喜び、芝居をする喜びを知ることができたので、この作品の経験を活かしてこれからも頑張っていきたいです。


ーー本作を“ジャンル”でカテゴライズすると何になるでしょうか。


須賀:“純愛映画”ですね。それぞれが人や何かを愛している、まっすぐな人たたちの作品です。終盤に予想外の展開もありますが、1番根幹にあるのはその点にある気がします。


阪本:きっと“癖になる”作品になっているんじゃないかと思います。1度目と2度目で印象も変わるはず。須賀さんが話してくれたように、老若男女誰もが共感する部分があると思います。


(取材・文・写真:石井達也)