2012年からマン島TTレースに電動バイク『神電』で参戦を続けるTEAM MUGENが、クラス5連覇を目指し2018年の参戦体制発表を行った。そもそも電動バイクレースとはいったいどのようなもので、バイクはどう開発されているのか。TEAM MUGENの宮田明広監督によれば、車両開発のキモは“軽量化”にあるという。
まずはマン島TTレースと、そのなかのゼロチャレンジクラスについて触れておこう。マン島TTレースはイギリスとアイルランドの間にあるマン島で開催される、現存する世界最古の高速オートバイレース。そのコースは市街地、住宅街、山間部を含む一般公道で高低差400メートル、コーナー数は200以上にも及ぶ。この1周約60キロの一般道コースを、タイムトライアル形式で競い合うのである。
このなかでTEAM MUGENが2012年から参戦を続けるのはゼロチャレンジクラス。2009年に新設されたカテゴリーで、現在は参戦する全車が電動バイクだ。マシンが搭載するバッテリー性能や容量の関係で、現在は1周のみの周回数となっている。
「現在の電動バイクのレースとしては、マン島TTのゼロチャレンジクラスはいちばん大きなイベントでしょう。2019年からはMotoGPとの併催でMotoEという電動バイクレースシリーズが立ち上がりますが、このカテゴリーはこれから発展していくレースだと思います」と、宮田監督は電動バイクレースについて語る。
「車両でいうと、MotoGPやスーパーバイク世界選手権(SBK)と比べて重量はプラス100キロほど。250、260キロという重いバイクになります。100キロも重いのならとんでもなく遅いのかといえば、そうではありません。神電 七で言えば600ccのスーパースポーツに近いタイムが出せますし、ライトウエイトというクラスに関してはそん色ないスピードで走りますよ」
そのため、速さを求めていくと車両の軽量化という点が大きなポイントになってくるという。電動バイクが搭載するバッテリーは非常に重い。それ以外の部分でいかに重量を削るのかが、開発のなかで重要になるというのだ。
「神電 七のスイングアームやフレームがカーボンなのはそのためです。最大限の軽量化に向けて、我々はカーボンモノコックにいち早く取り組み、開発してきました」
そのバッテリーについては、TEAM MUGENはmaxell(マクセル)のものを搭載する。
「バッテリーについては、マクセルさんの製品を改良してデリバリーしてもらっています。それを、我々の要求に対してカスタマイズ、アップデートしてもらっているんです」
ただ、モーター、インバーターについてはすべて無限の自社製品だ。神電 七はエアロダイナミクスを改良し、カウル形状も変更。パワーユニット、モーターインバーターの制御系を細かく見直し、アップデートしている。バッテリーも細部まで見直しを行い、その性能を最大限に引き出す設計とした。
「2017年からあまり見た目は変わっていません。ソフトウエアといった中身の細かな部分で軽量化を施す、そこに重点を置いて開発してきました」
2018年のマン島TTでは3人のライダーを起用し、5連覇は「当然のこと」としつつ「表彰台独占をねらう」とTEAM MUGENの体制発表で意気込んだ宮田監督。その根底には“ホンダスピリット”が流れている。
「電動バイクはこれからのカテゴリーなので、いつ我々のバイクよりも優れたものが出てくるかわかりません。ただ、ライダーや技術、データに関しては、我々は続けているという強みがあります。想定のなかで、ベストなコンディションでライダーが完ぺきな走りをしてくれれば、2018年のマン島TTレースでは目指す結果になると思っています」
「日本人としてマン島TTに乗り込んで戦っていくという、ホンダの精神が僕らにもあります。3台でやるからには絶対に勝つんだ、ってね」