F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1マシンに搭載される最新技術を解説。今回はメルセデスW09のフロントサスペンションにフォーカスする。
—————————
冬のバルセロナテストでは、新車は衝立で厳重に隠され、肝心の部分を中々見ることができなかった。しかしいったんシーズンが開幕すれば、そういうわけにはいかない。メルボルンではメルセデスW09のフロントサスペンションに、去年型に比べて大きな変更が加えられていることが確認できた。
白矢印で示された、いびつな楕円形のふたつの金属製のパーツに注目していただきたい。コーナリング中などに車体が傾いた際には、このふたつのパーツがアンチロールバーの機能を果たす(いわゆる伝統的なアンチロールバーは、メルセデスには搭載されていない)。
そして車体がダイブした際には、サードエレメントと呼ばれる、いわゆる第3のサスペンションが作動する(黄色矢印)。これ自体はW08にも搭載されていたが、さらにアップデートされている。
アンチダイブ装置と呼ぶべきこのデバイスは、ダンパー、あるいはイナーシャダンパーで構成されている。ライバルチームのほとんどが機械的に作動するのに対して、メルセデスのそれは油圧駆動である。
左右の前輪がこのサードエレメントを会して繋がり、ブレーキング時の沈み込みを制御し、車高を極力一定にする。それはまた、高速走行でダウンフォースが増大した状態の際、ダンパーを固くする役割も果たす。その結果、フロントウィングを始めとする主要空力パーツが、最適な性能を発揮することに役立っている。