3月10~11日に岡山国際サーキットで行われたスーパーGT岡山公式テスト。ここでニッサンGT-R勢はレクサスLC500、ホンダNSX-GTに対し、一発の速さで差をつけられた。その要因のひとつは、ニッサンが王座奪還のために施したエアロダイナミクスの大幅アップデートにありそうだ。
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GT-Rが曲がらない。タイヤメーカーの違いにかかわらず、基本的に4台すべてがアンダーステアに苦しめられている。
カルソニック IMPUL GT-Rの佐々木大樹は「セパンテストからずっと同じ状況。これだけテストを重ねてきているのに、解決策が見出せていない。もう少し煮詰めないと、開幕戦は厳しいかなという印象です」と語る。
今季に向けてGT-Rは空力面を大きく変更、ダウンフォースはかなり向上しているようだが、「空力が大きく変わって、セットアップがリセットされてしまった。バランス的にはちょっとリヤの方が強い。フロントがもう少し欲しいけど、まだセットとタイヤを合わせ込めていない」と、MOTUL AUTECH GT-R松田次生の表情も冴えない。
昨年比で空力性能が大幅に上がってマシンの“安定感”は確かに増したようだが、その安定したマシンを「曲げるセッティング」への対応に、各陣営が追われている印象で、総じて出遅れた感がある。
空力開発の面では、今回はニスモの空力開発担当・山本義隆氏も現場にかけつけ、開幕まで1カ月を切ったこのタイミングでラテラルダクト後端にニューパーツを投入と、試行錯誤が続けられている。
山本氏によれば「重要度が高いフロント側から優先的に煮詰めていき、ここが最後のピースとなった」とのこと。全セッションでこのパーツを装着した12号車の佐々木は「2コーナーなど高速コーナーの初期の反応などで効果は体感できる」という。今回は2台分しかパーツが間に合わなかったというが、シミュレーション上では好結果が出ているため、富士テストでの確認を経て“最終仕様”とする方向であると、山本氏は語っていた。
が、しかし。テスト2日目の昼休み、モチュールのピットではメカニックが慌ただしく作業にあたっていた。午前のセッションで初めて装着した新ラテラルダクトを、元に戻していたのだ。効果が薄いと判断したのだろうか。
もっとも、岡山では「ミシュランが持ち込んだタイヤがレンジを外していた」という声もあり、もともとGT-Rが得意としていないコースということもあって、「エアロを使って走れるコーナーが多い鈴鹿とかではいいかもしれない」(佐々木)。また、岡山テストの2日目午後におけるロングランのペースは悪くはなく、決勝の戦いには光明が見出せなくもない。
ニッサン勢は、昨シーズンを見てもリカバリーする実力は充分に備えている。開幕までに、そしてシーズンの終わりまでにどれほど「取り返せるか」も見どころだ。
オートスポーツ No.1478(3月30日発売号)
[開幕直前]スーパーGT大特集
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