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財産ゼロ、失業して「不倫の慰謝料」を払えない! 「自己破産」すれば免除される?

2018年03月23日 10:22  弁護士ドットコム

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不倫の慰謝料を月々、分割で支払っているが、失業したため支払いができない。どうしたらいいかーー。そんな質問が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。


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相談者によれば、「不貞行為の慰謝料支払いが月々15000円ある」という。しかし仕事を失ったため、「収入がなく、支払いできないんです」。また「子どもが2人いて、財産などないです」。


このような場合、自己破産をしてしまえば、以後の支払いは免除されるのだろうか。加藤 寛崇弁護士に聞いた。


●自己破産が認められるケース、認められないケースがある

「支払能力を欠くために、借金などの返済ができない状態が継続している場合、自己破産が可能です。ご質問の内容からは、一時的な失職かどうか分かりませんし、支払うべき慰謝料の残額も不明なので、これだけの事情では自己破産できるかどうかは分かりません。


自己破産の要件は必ずしも厳格ではないのですが、今回は自己破産したと仮定して、その場合に慰謝料の支払義務を免れるかどうかを検討しましょう」


自己破産の理由として認められるものと、認められないものがあるのか。


「浪費や賭博で多額の借金をつくったなど問題のある事情は『非免責事由』に該当し、自己破産は認められません。


一方で、こうした事情がなければ支払い義務は免責され、借金などの支払義務がなくなります。また、非免責事由が存在しても、その程度が重くない場合などには、裁判所が裁量で免責を認めることも少なくありません」


不貞行為の慰謝料はどうか。


「不貞行為で支払義務を負ったことはどの非免責事由にも当たらないので、別個に非免責事由に当たる事情がない限りは、免責されることになります」


●免責されても「支払い義務」は残る

「ただし、免責されても、全ての支払義務がなくなるわけではありません。


『非免責債権』といって、破産手続で免責されても支払義務が残るものもあります。養育費や税金などは、きちんと支払義務を果たすべきものとして、自己破産後も支払い義務はあります」


慰謝料については、どうだろうか。


「結論としては、支払義務を免れる可能性が高いです。


他人に被害を及ぼしたことによる損害賠償義務で非免責債権に当たるものとしては、『破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権』と『破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権』とがあります。


このうち、不貞行為は、他人の『生命又は身体を害する』行為ではないので、前者には該当しません。


該当する余地があるとすれば、後者の『破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権』でしょう。ここでいう『悪意』とは、積極的な害意を意味します。不貞行為に即して言うなら、積極的に相手の家庭を壊す目的で不貞をしたような場合でないと該当しないことになります。しかし一般には、そのような不貞はないでしょう。


この点が争われた事例はそれほど多くは見受けられませんが、見受けられる範囲では、不貞行為の慰謝料支払義務は、非免責債権には当たらないと判断している判決が大勢です」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士
東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。不倫絡みの事件は、地裁・高裁で結論が逆になった事件など、ユニークな事例もある。
事務所名:三重合同法律事務所
事務所URL:http://miegodo.com/