昨年、リバティ・メディアに変わって、さまざまな改革が行われているF1。毎グランプリ、木曜日(ドライバー)と金曜日(チーム関係者)に行われているFIA会見も、今年から変更が加えられた。
昨年までは各グランプリ6人が出席し、昨年はさらにそれが3名ずつの2グループに別れて会見を行っていたが、オーストラリアGPの会見は木曜日も金曜日も3名ずつ。今年最初の会見に招かれたのは、ルイス・ハミルトン、セバスチャン・ベッテル、ダニエル・リカルドの3人だった。
合同テストで調子が良かったメルセデス、フェラーリ、レッドブル。つまり、この3人は今シーズンのチャンピオン候補でもある。会見は3人とも気分良くスタートしたが、記者席にいたオランダ人メディアからの質問に、少しだけ空気が張り詰めた。
それは「あなたたちの背後に、次のワールドチャンピオンとしてオランダ人が座っていると思いますか?」というものだった。オランダ人とは、マックス・フェルスタッペンのことである。
この質問に、強く反応したのがフェルスタッペンのチームメイトであるリカルドだ。
「どうして、僕のほうを見て質問しているんだい?」
中央に座っていたハミルトンは、その場の雰囲気をなんとかしようと「いい答えが見つからないな~」と当たり障りのない答えで間を持たせたものの、雰囲気を変えられなかったため、左隣に座っていたベッテルのほうを見て、「いい答え、ある?」と助けを求めた。
リカルドの元チームメイトのベッテルは「ここに座っている中からチャンピオンが誕生することを願っているよ」と丸く収めた。
この日の会見では、リカルドとレッドブルとの契約が今年いっぱいであることも触れられた。ここでもベッテルとハミルトンがこんなアドバイスもした。
「彼はシートを失うことなんてないから、慌てることはない。じっくりと考えればいい」(ベッテル)
「契約を巡ってチーム内で孤立していったドライバーを何人も知っている。現在のF1チームには多くのスタッフがいて、ドライバーは彼らを励ますことで、彼らにやる気を出させるという非常に重要な役割があり、それが結果として自分の目標を達成する力となる。彼は素晴らしいチームにいるのだから、無用に波風を立てるべきじゃない」(ハミルトン)
この助言にリカルドは「2人が言うように、今年はチャンピオンを狙えるポジションにいるから、まずはレースで良い結果を出すことしか考えていない。契約のことはそれから。僕にはまだ時間がある」と感謝の言葉を贈った。
さて、この3人のうち、ハミルトンとベッテルに共通していることについても、質問が飛んだ。それは今年どちらがタイトルを取っても5回目となり、往年の名王者のファン・マヌエル・ファンジオに並ぶということだ。
そのことを尋ねられたハミルトンは、ファンジオが持っている通算5回という、ミハエル・シューマッハーに次ぐ歴代最多王座に関して、次のような考えを示した。
「正直、まったく考えていない。シーズンはまだ始まったばかり。僕が考えていることは、昨年までの自分を超えること。そして、自分が持っている能力を最大限発揮すること。その結果がどうなるのかはわからないよ」
ハミルトンより先に4度目のタイトルを獲得していたベッテルはこう答えた。
「それについては、僕のほうがちょっとだけ考える時間が長かったから、言わせてもらうけど、比べるのは不可能だと思うんだ。50年代といまでは全く違う。どっちが上でどっちが下ということではなく、その時代その時代でドライバーたちは戦っているんだからね」
開幕前日ということで、この日はまだ和やかなムードだった3人。しかし、タイトル争いが始まって火花を散らし始めたら、きっと助け舟もアドバイスも贈らなくなるのだろう……。