F1バルセロナ合同テスト2回目が終了し、マシンの速さそして信頼性が見えてきた。今回は全チームの戦闘力を分析し10回にわたり連載していく。第10回は、合同テストで一発の速さ、そしてロングランも安定していたハースだ。
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●ハース チーム戦力:75点
2018年のF1でダークホース的な存在なのが、ハースだ。
F1参戦3年目のシーズンとなるハースの2018年の新車VF-18の開発がスタートされたのは、1年前の昨年の3月までさかのぼる。理由は、昨年大きく変更されたレギュレーションに合わせて作られたVF-17のポテンシャルには、限界が見えていたからだった。
つまり、ハースは2017年シーズンにジャンプアップすることを半ば捨ててまで、2018年に大きくステップアップするというギャンブルに打ってきたわけである。
そして、その賭けは合同テストを見る限りは、大きく外してはいないようだ。ケビン・マグヌッセンが8日間のテストの総合6番手となるタイムをマーク。ロマン・グロージャンも9位に続いた。しかも、2人ともベストタイムをマークしたときに装着していたタイヤはほかの多くのドライバーが履いていた最も軟らかいハイパーソフトではなく、マグヌッセンがスーパーソフト、グロージャンはウルトラソフトだった。
ハイパーソフトとウルトラソフトのタイム差はピレリによれば、0.7~0.8秒というから、その差をマグヌッセンのタイムにそのまま当てはめると、マグヌッセンは全体の3番手に一気に浮上することになる。
一発が速いだけではない。今年のハースはロングランも速く安定している。正確な燃料搭載量は不明だが、1回目のテストの最終日にソフトを履いて11周のロングランを行なったときのマグヌッセンのタイムは、2回目のテストの2日目にヒュルケンベルグがレースシミュレーションを行ったときの第3スティントのソフトタイムでの13周ランよりも速かった。
このポテンシャルの高さに驚いたのは、ライバルたちだけではない。ハースと技術提携しているフェラーリも目を丸くした。ロングランのあと、フェラーリのチーム代表を務めるマウリツィオ・アリバベーネがハースのモーターホームのドアを叩いたほどだった。
気になるのは、昨年からブレーキに苦しんでいるグロージャンだ。この問題はまったく同じブレーキシステムを使用しているマグヌッセンには起きていないことから、ハードでももちろんソフト(制御)の問題でもない。あえていえば、ドライビングスタイルに起因する問題だ。
グロージャンはビッグブレーキ派で、ブレーキを踏むとき、一気にガツンと踏むタイプだ。ところが、ピレリはマシンのデザインが大きく変わる昨年を迎えるにあたって、やや硬めのコンサバなコンパウンドを用意した。そのため、硬めのタイヤを装着したときや、路面のグリップ力が低いロシアGPなどでは、ピッグブレーキはロックしやすく、混乱してしまうのだ。
今年は全コンパウンドが昨年より1ポジションずつ軟らかくなっただけでなく、ウルトラソフトよりも軟らかいハイパーソフトも投入されるため、ブレーキング時のブレーキロックは改善される見込みは十分ある。
ハースの速さを見て、ライバルチームは開発を急ピッチで進めてくるだろう。一方、ファクトリーのスタッフが全員で約110名という小規模チームのハースには、ライバルたちと同じ開発力はない。したがって、そのような状況で中団グループをリードするためには、ライバルたちが豊富なリソースでマシンを進化させて実戦投入してくる前が勝負。序盤戦でできるだけ多くのチャンスをモノにして、少しでも多くのコンストラクターズ選手権ポイントを獲得することとなる。
まずは開幕戦でハースがどんな走りを披露するのか? ファンだけでなく、F1関係者も注目している。