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ふるさと納税「単なる善意の寄付」になる落とし穴…会社員、専業主婦は要注意

2018年03月21日 09:32  弁護士ドットコム

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高価な牛肉や海産物、さらには家電製品まで・・・。豪華な返礼品を目当てに、縁もゆかりもない地方自治体に「ふるさと納税」をする人は依然として多い。地方税制をみる総務省が「やりすぎだ」と自治体に通知を出しても、一般市民としてはなんのその。自治体ごとの返礼品を比較するサイトを見て、今年はどれにしようと選ぶのは楽しい時間だろう。


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東京都内に住む30代の専業主婦は、2016年に初めてふるさと納税をした。比較サイトで吟味した結果、普段は食べられない高級牛肉を返礼品として送ってくれる九州のある自治体に決定。自らが名義人となっているクレジットカードを使い、5万円を寄付したという。


あとで返礼品の高級牛肉は美味しくたいらげたものの、所得税や住民税を払っていないため寄附金控除という税制上のメリットは受けられないことに気づいた。本来は4万8千円の控除を受けられるはずだったが、「よく考えずにやってしまって大失敗。5万円払ってただ美味しいお肉を食べたというだけでした」(専業主婦)。反省を生かし、2017年には給与所得者の夫名義で、ふるさと納税をした。


●振り込みは納税者名義で

改めて記すと、ふるさと納税とは地方自治体に納めた寄付金の額から自己負担分である2千円を引いた額が控除され、所得税が還付されたり住民税が減額されたりする仕組みのことだ。


注意したいのは、誰名義でふるさと納税をするのかという点だ。国税庁はふるさと納税などの寄附金控除について、「納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対し、『特定寄附金』を支出した場合には、所得控除を受けることができます」とホームページで記している。


「納税者が」というところがポイントで、収入がない専業主婦はそもそも所得税や住民税を納めておらず、税制上のメリットを得られない。ここが意外に盲点となっているようだ。


●確定申告するなら、ふるさと納税分も改めて

ワンストップ特例制度の「落とし穴」にも注意が必要だ。これは1年間で寄付先が5自治体までなら、確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる仕組みだが、医療費控除などを確定申告する場合、ワンストップ特例は無効になってしまう。改めてふるさと納税についても確定申告をしないと、税制上のメリットを受けられない。


この点も見逃されることがある。医療費がかさんだため医療費控除の確定申告をしたものの、ワンストップ特例制度を使っていることから、ふるさと納税に関する申告はしなかったという人が自らの体験をSNSなどに投稿。「単なる善意の寄付になってしまった」「高い授業料だった」として悔やんでいた。


国税庁ホームページには、目立たない場所に、このような記載がある。「確定申告を行う方(医療費控除や雑損控除を受けるなどのために確定申告をする方などを含みます。)がふるさと納税について寄附金控除の適用を受けるためには、ふるさと納税の金額を寄附金控除額の計算に含めて確定申告を行う必要があります」。


●税理士「控除額には限度。寄付しすぎていないか確認を」

田邊美佳税理士は次のように語る。


「所得税や住民税を支払っていたとしても、ふるさと納税で控除できる税額には限度があり、住民税所得割額の20%が目安となります。ふるさと納税をする際は控除額のシミュレーションを利用し、寄付しすぎていないかの確認をお勧めします。


ふるさと納税によって受けた返礼品は『一時所得』に該当し、一時所得には50万円の特別控除があります。その年中に他に一時所得に該当するものがなく、一時所得が50万円を超えなければ申告不要ですが、他にも一時所得(懸賞や生保の一時金など)がある場合にはもらった返礼品も確定申告が必要な場合があるため注意が必要です」


【監修】


田邊 美佳(たなべ・みか)税理士


オネスタ税務会計事務所所長。公認会計士・税理士・行政書士・ファイナンシャルプランナー。相続税申告、生前対策業務を専門としており、国際相続案件にも対応可能。


事務所名   : オネスタ税務会計事務所


事務所URL: http://www.onesta-tax.com/


(弁護士ドットコムニュース)