先日の岡山公式テストで明かになった、スーパーGT500クラスの3メーカーの拮抗ぶり。1秒内に13台が入るセッションもあり、その接近戦の要因のひとつと見られるのが3メーカーのエンジン開発競争の過熱化だ。昨年からプレチャンバー(副燃焼室)の導入がトレンドとなり、エンジンの運用が大きく変わりそうだ。
プレチャンバーはF1で既に導入されている技術。点火プラグ周辺を覆って設けた副室は小さな孔で主燃焼室とつながっている。熱効率向上のために希薄燃焼とともに求められる高圧縮化を進めていくと発生するノッキングを防ぐために、この構造によって燃焼速度を速める。
F1と違うのはGT500では気筒ごとにインジェクターが1本しか許されていない点。F1では点火プラグと隣接して副室内にサブインジェクターを設けることができるが、1本のインジェクターではこの仕組みにはできない(副室容積が狭くメインインジェクターの装着は不可能)。それだけに燃料噴射をどのように最適化するか独自のノウハウが必要となる。
しかし市販ガソリンの使用が義務付けられ、燃料側でノッキング対策ができないGT500だけに、このプレチャンバーの効果は大きく燃焼圧も熱効率(=パワー)も飛躍的に高まったようだ。しかも各陣営に取材した感触ではまだまだ真のパワーは見せていないようで、開幕戦予選がドライならば確実にレコード更新は達成されるだろう。
燃焼圧が高まれば、それに伴いシリンダーヘッドと、ピストンやコンロッドなどのレシプロ系に掛かる負荷も大きくなる。年間2基のエンジン基数制限によって必要なライフとの兼ね合いで、今季は状況に応じてパワーを調整する場面が増えるだろう。
予選はマックスで使うとしても、決勝では展開をみながらブーストをコントロールするのは避けられない。そういう意味ではウエイトハンデ(WH)に組み込まれた燃料リストリクターの制限強化(今季WH50kg超1段階目で燃料流量制限を2・7%減から3・3%減に)はエンジン開発陣にとっては勝負どころとなった。
燃料が絞られて燃焼圧が下がり負荷が減る分、むしろ最大効率でエンジンを使えることになる。ここで見えるエンジン開発と運用の成否も、シリーズ中盤からの勢力図に影響を及ぼすかもしれない。ちなみにレクサスLC500とホンダNSX-GTがプレチャンバーを使用しているのに対して、ニッサンGT-Rは点火プラグと副室が一体となったプレチャンバー・プラグを採用していると想像される。
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