大幅なタイムアップを果たしたザウバー。懸念材料はドライバーランアップか/全チーム戦力分析(8) F1バルセロナ合同テスト2回目が終了し、マシンの速さそして信頼性が見えてきた。今回は全チームの戦闘力を分析し10回にわたり連載していく。第8回目は今季からアルファロメオと提携、テストでは昨年のタイムを大きく上回ったザウバーだ。
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●ザウバー(チーム戦力:60点)
昨年と比較して、今年の合同テストのベストタイムで、マクラーレンに次いで大きく前進したチームがザウバーだ。シャルル・ルクレールがマークした1分19秒118はフォース・インディアのセルジオ・ペレスを上回り、エステバン・オコンからも0.15秒落ちだった。
もちろん、ベストタイムだけでは真のポテンシャルはわからないが、中団グループから大きく引き離された昨年のテールエンダーが少なくとも今年は中団グループの背後に迫っていることは間違いようだ。
その最大の要因は、フェラーリからサポートに因るところが大きい。昨年のザウバーは唯一、1年型落ちのパワーユニットを使用していたが、今年は最新のPUを使用できる。
Auto Motor und Sport誌によれば、昨年のフェラーリPUは934馬力だったとされ、今年はそれに数十馬力向上しているというから、PUのパワーだけで昨年より50馬力以上はパワーアップしている。サーキットにもよるが、10馬力で約0.3秒のゲインがあるから、約1.5秒速くなっていると考えていい。
昨年の最終戦アブダビGPの予選Q1落ちしたパスカル・ウェーレインのタイムは1分39秒930。ここから1.5秒引くと1分38秒430となり、Q2で10番手のウイリアムズのフェリペ・マッサの1分38秒565を上回り、Q3へ進出することになる。
もちろん、各チームとも昨年よりマシンを進化させて、合同テストのタイムだけで比較すると、昨年比で0.9秒から2.1秒速くなっていたので(極端な差が出ているマクラーレンとウイリアムズを除く)、ザウバーのベストタイムが合同テストでトップ10に入ることはなかったが、昨年比で2.5秒速くなったザウバーが、確実に中団グループをキャッチアップしていることは間違いない。
ザウバーが速くなった理由は、フェラーリからのギヤボックスも含むPUのサポートだけではない。2016年末にアウディから移籍してきたヨルグ・ザンダーの手腕も大きい。2018年の新車『C37』はテクニカルディレクターとしてザンダーがザウバーで初めて指揮して製作されたマシンだ。
C36までのフォルムとは完全に異なるエアロダイナミクスとサスペンションによって、それまで弱点となっていたダウンフォース不足が解消。それでいて、空気抵抗が少ない効率の良さがあることは、最高速でも昨年より時速4km/hストレートスピードが伸びていることでもわかる。
不安があるとすれば、ドライバーがルーキーのルクレールと、ベテランだがセットアップという点で力不足の感が否めないマーカス・エリクソンのコンビだ。というのも、新車がこれだけ大きく変更されると、エンジニアは昨年までのセットアップをそのまま使えないので、ドライバーのフィードバックに頼らざるを得ないからだ。
GP3とF2を、ともに1年目で制圧してF1へステップアップしてきた驚異の新人、ルクレールの成長に期待したい。