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渡辺謙vs佐野史郎、2人のぶつかり合いが話題に 『西郷どん』回を重ねるごとに増す熱量

2018年03月19日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 舞台を江戸へと移し、さまざまな思惑が交錯する幕末史の盛り上がりを見せているNHK大河ドラマ『西郷どん』。第11回「斉彬暗殺」は、江戸幕府次期将軍をめぐる島津斉彬(渡辺謙)と、江戸幕府大老・井伊直弼(佐野史郎)の対立、斉彬の方針を快く思わない島津斉興(鹿賀丈史)、由羅(小柳ルミ子)、それぞれの思惑が交錯する見応えのある回となった。


参考:風間俊介、『陸王』に続く“名参謀”ぶりに絶賛の声 『西郷どん』橋本左内役で物語のキーマンに


 昨年の大河ドラマ『おんな城主 直虎』の視聴者であれば、「井伊」の名が出ただけで、直虎(柴咲コウ)、直政(菅田将暉)の顔が思い浮かんだ者も少なくないだろう。


 本心と行動が一直線につながる本作の主人公・西郷吉之助(鈴木亮平)とは逆に、生きていくため、皆を守るために、“表と裏”の顔を使い分けていた彼らを懐かしくも感じてしまう。吉之助を筆頭に、直情型の登場人物が多い中、一筋縄ではいかない駆け引きに長けた雰囲気を遺憾なく発揮しているのが直弼を演じる佐野史郎だ。


 これまでの常識を打ち破る新しい幕政体制を作りたい斉彬と、徳川独裁を継続したい直弼。外国からの脅威に渡り合うため、多くの民を幸せにするため、必死に奔走する斉彬の姿はまさに“正義のヒーロー”だ。しかし、『おんな城主 直虎』で井伊家の者たちが、戦のない世を作るために徳川を支える道を選んだことが焼き付いているからこそ、これまでであれば“悪役”にしか見えなかった直弼も、彼なりの正義を持って行動しているように見える。渡辺謙扮する斉彬と佐野が演じる直弼の攻防は、今後も大きな見どころのひとつとなっていきそうだ。


 斉彬は朋友である越前福井藩主・松平慶永(津田寛治)、橋本左内(風間俊介)、徳川斉昭(伊武雅刀)・慶喜(松田翔太)親子を招き、会合を開く。その直前、何者かの陰謀(?)によって息子・虎寿丸を亡くしているにも関わらずだ。


 それが「不幸になる」と分かっていながらも、娘・篤姫(北川景子)を徳川家定(又吉直樹)に嫁がせるのも、すべてはこれからの“日本国”のため。父という立場、薩摩藩主という立場でもなく、日本のこれからだけを思い、斉彬は奮闘していく。史実でも西郷は斉彬の人柄に心酔していたというが、渡辺の圧倒的なカリスマ性によって、見事にそれを体現していると言えるだろう。


 斉彬は何者かに毒を盛られ、床に就いてしまう。吉之助は斉彬の暗殺を企てたのが斉興と由羅と決めつけ、2人の屋敷におしかける。一度決めたら一直線、吉之助の真っ直ぐ過ぎる行動は軽率とも言っていい。斉彬はそんな吉之助を一喝。「この大事なときにお前は何をしているのだ!」「わしは命など惜しくない。命に代えてもやらねばならぬことがある」。後に維新の英雄となる西郷は、斉彬のこうした愛のある叱咤によって成長していったことがうかがい知れる一幕だった。演じるキャラクター同様に、回を重ねるごとに渡辺と鈴木、2人の演技の熱量が増しているように感じる。


 最後にはふたたび直弼の姿が。斉彬に毒を持った犯人は、斉興でも由羅でもなく、直弼だったことが明らかとなる。不敵な笑みを浮かべる佐野が、次回以降どんな形で斉彬に迫ってくるのか。(石井達也)