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『アンナチュラル』最終回、第1話から仕組まれた伏線に驚愕 視聴者を翻弄するラストの仕掛けも

2018年03月17日 13:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『アンナチュラル』(TBS系)が、3月16日の放送で最終回を迎えてしまった。SNSでは、脚本家、出演者、制作スタッフら本作の作り手たち、そして視聴者である受け手側の両方から「ありがとう」という感謝の声が広がる、素晴らしいフィナーレを迎えた。


 中堂系(井浦新)の死んだ恋人・糀谷夕希子(橋本真実)を含めた26人の連続殺人事件。高瀬(尾上寛之)が犯人だと分かっていながらも殺人を立証できる証拠がなく、中堂が宍戸理一(北村有起哉)を襲い無理やり証拠を掴もうと奔走する。26人の殺人事件を立証できる唯一の証拠の存在に気付くきっかけを作ったのが、東海林夕子(市川実日子)のひと言だった。


参考:【インタビュー】石原さとみ、井浦新、窪田正孝が語る『アンナチュラル』の特異性 石原「初めての経験だった」


 ここで2カ月前に放送された第1話に遡る。「アメリカは良いよね、再調査となったらお墓から丸ごと死体掘り起こせばいいんだもん」という三澄ミコト(石原さとみ)に、東海林がからかいながら言った「ウォーキングできないデッド」という言葉を覚えていた人は、どれだけいるだろうか。そして、最終話では「ウォーキングできないデッドの国かぁ…」との東海林の呟きから、夕希子の遺体がアメリカで埋葬されており、まだ解剖することができるということに気付く。亡くなった当時に比べ、8年後の進化した技術により、新しい手がかりが見つかる可能性がある。夕希子の再解剖が実施され、見事、検出されたDNAが高瀬と一致した。


 事件を紐解く最大のきっかけを作り、大活躍した東海林。いつもおちゃらけて物語でムードメーカー的な存在を担っている東海林にこのような役割を持ってくるという、脚本家・野木亜紀子のキャラクターへの愛情深さが伺えた。最終回では、どのキャラクターも物語の中でのぞれぞれの働きを見事に全うする輝きを見せつけられた。


 久部六郎(窪田正孝)が、雑誌「週刊ジャーナル」からの“ネズミ”であったことがバレてしまったとき、東海林が露わにした失望と怒り。取り調べを行う毛利忠治刑事(大倉孝二)の鋭い表情、ミコトの母・夏代(薬師丸ひろ子)が娘を励ますシーン、それをさりげなく傍で食事をしながら聞いているかと思いきや心配する弟・秋彦(小笠原海)、「責任転嫁しないでいただきたい」とUDIを守りきった神倉保夫所長(松重豊)、裁判所で罪を認めはじめてから狂った証言を連発していく高瀬、そしてひたすらに謎の空気感を漂わせ続ける葬儀屋・木林南雲(竜星涼)……野木が愛情込めて作り上げたキャラクターに、それぞの役者たちが見事にハマっていた。全話を通して、これほどまでに登場人物たち一人ひとりが気になってしまう物語はそうそうないのではないだろうか。


 最終回のラスト、中堂と夕希子のエピソードには、米津玄師による主題歌「Lemon」も相まって、特に心を打たれたという声が多く上がっていた。夕希子の父・糀谷和有(国広富之)は亡くなる前に夕希子から、次の絵本の内容が「2匹のカバが一緒に旅をする話」と聞いていたという。「夕希子の旅は終わったけれどあなたは生きてください」。中堂が坂本(飯尾和樹)に旅人の「スナフキン」と例えられているように、彼は“憎しみ”ではなく“愛”を持って、これからの旅路を生きていくのだ。


最終回の本当に最後の場面、「Their journy will continue.」という意味深なメッセージも残された。「journey」の「e」がないこともあり、ネット上ではすでに、続編を示唆するようなこの言葉の意味について深読み合戦が始まっているが、全10話を通して1度ずつ観ただけではまだ気付けていない場面もあるはず。各回ごとに私たちに大切なメッセージを教えてくれたこの物語を、もう何回か振り返ってみてほしい。


(大和田茉椰)