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映画『リメンバー・ミー』、主題歌も『アナ雪』以来の大ヒット? 音楽面から作品の魅力を考察

2018年03月17日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 カラフルな「死者の国」に、ミュージシャンを志すミゲルが迷い込む映画『リメンバー・ミー』。ピクサー・アニメーション・スタジオの最新作だ。ミゲルの祖母・ココの父親と思われる偉大なミュージシャン・デラクレスを探し、ガイコツのヘクターと共に「死者の国」を冒険するというストーリーがミュージカル風に展開していく。


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 劇中の音楽には「ミゲルが住んでいる世界を反映するソースミュージック」、「キャラクターの感情的な旅路をより深く理解する」、「音楽そのものの力をそれぞれのキャラクターに感じさせる」という3つの役割があると共同監督のエイドリアン・モリーナ氏が語っていた(参考:『リメンバー・ミー』共同監督が語る、作品における音楽の役割 「キャラクターの心情が表現されている」)。「第90回アカデミー賞」では長編アニメーション賞に加え、主題歌賞も獲得した『リメンバー・ミー』。本稿では音楽面に焦点を当てて、作品の魅力を考えたい。


 メキシコの「死者の日」からインスピレーションを得たという同作にはメキシコを思わせる風景も多く登場する上、ミゲルがアコースティックギター一本で披露する陽気な「ウン・ポコ・ロコ」や、「哀しきジョローナ」のようなラテンテイスト溢れる情熱的な楽曲が歌われる。これはまさしくメキシコを意識した「ソースミュージック」だろう。


 また、作中で非常に重要な役割を果たすのが、「アカデミー賞」で主題歌賞を獲得した「リメンバー・ミー」だ。『アナと雪の女王』の「Let It Go」同様、クリスティン・アンダーソン=ロペス、ロバート・ロペスが作詞作曲を手掛けている。デラクレスの楽曲の中でも“一番人気”の曲だという同楽曲は異なるアレンジで作中に度々登場する。このアレンジの違いが「キャラクターの感情的な旅路をより深く理解する」という部分に繋がってくるのだ。実はこの物語は後半でその様相をガラリと変えるのだが、ストーリーやキャラクターの心情に合わせて「リメンバー・ミー」のアレンジも変化する。前半のポップで明るいストーリーでは華やかな「エラネスト・デラクルス・バージョン」、中盤ではヘクターが優しく語りかけるように歌う「ララバイ・バージョン」、後半ではミゲルとココが声を重ねて歌う「リユニオン」……詳細を書くのは控えるが、実は「リメンバー・ミー」という楽曲の意味は物語の最初と最後では大きく異なってしまう。


 3つ目の「音楽そのものの力をそれぞれのキャラクターに感じさせる」というのは、ストーリーの根幹に関わってくる部分だ。娘を置いて出て行ったココの父親を恨み、音楽が大嫌いな家族の元で育ったミゲル。しかしミゲルが最終的に“音楽そのものの力”によってある人物を救い、その環境が大きく変化する。またヘクターとある人物も音楽の手助けによってその関係性を修復するなど、詳しく書けないのがもどかしいほど、音楽そのものの力がキャラクターを動かす場面も多い。


 そして日本版エンドソングとして流れるのがシシド・カフカfeat. 東京スカパラダイスオーケストラによる「リメンバー・ミー」だ。ゆったりとしたテンポでスタートすると、まさしくマリアッチのようなゴージャスなブラスの音が入って盛り上がっていく。ミゲルと家族の絆を描いた作品を柔らかく、明るく締めくくる役割を果たしていると言えるだろう。


 「リメンバー・ミー」が劇中で何度も登場するために、エンドソングとして流れた際にはつい口ずさんでしまいそうになった。『ラ・ラ・ランド』、『美女と野獣』、『グレイテスト・ショーマン』など、近年その勢いをさらに増しているミュージカル映画。しかし『アナ雪』以来、ミュージカル映画の主題歌が作品を超えて多くの人々に浸透することはあまりなかったように思う。『リメンバー・ミー』は久々に楽曲と共にヒットする作品になりそうだ。(村上夏菜)