3月15日に放送された深田恭子主演の妊活ドラマ「隣の家族は青く見える」(フジテレビ系)の内容は、体外受精でやっと妊娠した深キョン演じる奈々が完全流産してしまうという重いストーリーだった。
この展開にはショックを受ける視聴者の声も殺到。特に流産経験者からは奈々の悲しみに深く共感できるとして「自分と重ねすぎて咽び泣いてしまった」という声を筆頭に
「私も完全流産だった。突然の腹痛と出血。絶望した。マタニティーマーク引っぱって鞄から外した」
「私も不妊治療してやっと妊娠したのに初期で流産した。天国から一気に地獄に落ちたわ」
「私も同じだった。希望から絶望に一気に変わる現実に自分がついていけなかった」(ガールズちゃんねる実況トピより)
などという声が相次いでいる。(文:みゆくらけん)
「初期流産の多くは受精卵の染色体異常。珍しいことではない」
不妊治療をしていて、今月中にも初の胚移植(体外受精してできた受精卵を子宮に入れること)をする予定の筆者にとっても今回の内容は辛い。いくら「流産は珍しくないこと。仕方のないこと」とされていても、だからといって自分の身に降りかかった時、「あぁそうですか」とあっさりと受け入れることなどできないだろう。命という重みを一度はお腹の中に宿したのだからこそ、その悲しみは深い。
特に不妊治療というのは越えなければならないハードルがいくつもあり、その度に一喜一憂するという感情のジェットコースター状態。不安定な日々を過ごす中、やっと行き着いた胚移植で「妊娠→流産」という流れは夫婦を天国から地獄へ突き落す。
自然妊娠であっても15%前後と高い確率で起きているという流産だが、避けられるものならば全力で避けたいというのが本音である。
ドラマの中で奈々は医師から「初期流産の多くは受精卵の染色体異常。珍しいことではない」と言われていた。確かに初期流産の原因のほとんどは受精卵の染色体異常だ。奈々は35歳という設定だが、35歳の場合、受精卵に染色体異常を持つものの割合は約4割(大谷レディスクリニックのサイトより)。この数字を考慮すると、今回の流産はレアケースではない。
「着床前診断」は今後日本でどうなる?
ただ筆者としては思う。「6割の打率でお腹に卵を入れるなんて流産のリスクが高過ぎませんか?」と。
筆者が現在通っているのは、受精卵が子宮に着床して妊娠が成立する前に、受精卵の染色体や遺伝子に異常がないかどうかを調べる「着床前診断」を受けることができる大谷レディスクリニックだ。
これを受けると、もともと染色体異常で流産する運命にあった受精卵を避けて子宮に戻すことができ、流産率を減らすことができるという。クリニックのサイトで、大谷徹郎院長は「流産が女性の心身に大きな負担になることは言うまでもありません」とし、
「流産を防ぐ治療法があれば、何とかして助けてあげたいと思うのは産婦人科医として当然持つべき良心」
と信念を語っている。現在、日本産科婦人科学会はこの着床前診断を「命の選別につながる」として認めていないが、ではなぜ出生前診断は認めているのか?と首を捻らずにはいられない。すでに妊娠が成立し胎児として命が宿っている状態での出生前診断と、まだお腹の中に入れていない受精卵の段階での着床前診断。なぜ着床前診断だけが「命の選別」とされているのか納得がいかない。
一人の患者として、着床前診断は非常に価値のあるものだと感じており、今後の生殖医療の発展のためにも一般化が早期に認められるよう願っている。そのためにもまずは、多くの人に着床前診断というものがあることを知ってもらう必要がありそうだ。