オフシーズンテストが終了し、あとは3月23~25日に開幕するF1オーストラリアGPを待つのみとなった。順調にテスト項目を消化したチームもあればトラブルで走れなかったチームもあり、マシンの仕上がり具合が気になるところ。全6回に分けて各チームの開幕戦の展望を紹介。第3回は昨年3勝を上げたレッドブルだ。
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「12カ月前と較べると、(状況は)はるかにいいよ」
ダニエル・リカルドはバルセロナで行なわれた2018年新車テストの期間中、何度となく同じフレーズを使った。そして、前後半で8日間の日程を終えると、「とにかく、いまはシーズンの開幕が楽しみだ」とも。
その12カ月前とは、17年のF1開幕を控えて、レッドブルのチーム全体が困惑と落胆の色を隠せなかった時期だ。
空力規定の大幅変更(事実上の制限緩和)はレッドブルにとって有利に働くと観測され、本人たちもそのつもりで17年型車をテストに送り出したわけだが、想定していたスピードやペースがない。表面的な数字はともかく、メルセデスやフェラーリの同じく17年型とは、戦力的に大きな隔たりがあった。
背景には、いったい何が起きていたのか。レッドブル技術陣が精査したところ、程なく原因は特定された。風洞実験の結果と、実際のコース上での走行とが、データ的にかなり相関性を欠くものとなっていたのだ。
空力規定が変わったことはもちろん、昨年のレギュレーション大改革にはタイヤのワイド化も含まれていた。こうした場合、風洞施設の側にも規格に合わせた調整作業(キャリブレーション)が必要となるのだが、レッドブルはそれが充分ではなかった。つまり風洞実験からの誤ったデータを基に、昨17年型車の空力設計は行なわれてしまっていたのだ。
軌道修正を図ったチームは昨季1年を通じて、17年型に新規開発の上乗せを行なっていった。その結果がシーズン3勝。特に終盤戦でマックス・フェルスタッペンが挙げた2勝は、メルセデスやフェラーリと互角にコース上で争うなかで記録された。18年新車『RB14』は、その終盤モデルの正常進化型だ。空力的な手法や形状に際立った変化はないが、各所にブラッシュアップが施されている。
テスト期間中のベストタイムは、リカルドが後半日程の2日目でマークした1分18秒047。このときにリカルドはピレリ新開発のもっとも軟らかいコンパウンド『ハイパーソフト』を使ったのだが、その後さらにコースコンディションの上がった残り2日間をレッドブルは主にロングランの作業にあてる。
リカルドは最終日午後に予選シミュレーションを1度だけ行なったが、このときに使用したのはハイパーソフトよりも2ランク硬い『スーパーソフト』だった。それでも、最終日トップのフェラーリのキミ・ライコネンからは1秒強のギャップに留めた。ライコネンと同じハイパーソフトをこの日に使っていれば、タイヤの性能差から少なくともフェラーリに匹敵する1分17秒2前後のタイムは出せていたとみていい。
手の内隠しのメルセデスはともかく、フェラーリとは充分に伍して闘える。昨年の同じ時期には考えられなかったことだ。だからこそリカルドは、「開幕を待ち切れない!!」と語っているのだろう。
フェルスタッペンはおそらくメルセデスを意識し、「予選で0.3~0.4秒差以内につけられれば、彼らを捕まえられる。(昨季の傾向として)レースではずっと、ギャップが縮まってくるものだからね」と不気味なコメントを残す。両者に共通するのは“自信”だ。