今週末、カタールのロサイルインターナショナルサーキットでMotoGP第1戦カタールGPが開催される。2018年のMotoGPシリーズがいよいよ開幕する。
開幕戦のカタールはナイトレースとして開催されるが、今年からタイムスケジュールが変更された。昨年までのカタールGPは、ナイトレースに合わせた木曜日スタートの4日制で行なわれていたが、今年から通常のグランプリと同様に金曜日スタートの3日制となった。もともと、2004年の初開催から2007年までは通常のデイレースとして開催されていたカタールGPだが、初期の2004年と2005年は10月初旬開催で、日中の暑さが問題となった。その後、2006年に開幕戦(2006年は4月)に開催時期を移行、さらに2007年からはナイトレース開催となった。ナイトレースに関しては、決勝レースのテレビ放送時間をヨーロッパの時差に合わせるための措置と言われている。
今年はこのタイムスケジュールの変更により、金曜日のMoto3クラスフリー走行1回目は日中の現地時間12時50分からのスタートとなり、初日に各クラス2回のフリー走行を行ない、初日の最終セッションは現地時間19時05分スタートのMotoGPクラスのフリー走行2回目となる。予選はMoto3クラスが土曜日の現地時間16時45分スタート、Moto2クラスが現地時間17時40分スタート、MotoGPクラスのQ2は現地時間19時20分スタートと昨年のスケジュールより早い時間帯で行なわれる。
各セッションの開催順はMoto3、Moto2、MotoGPの順番で、日曜日の決勝レースはMoto3クラスが現地時間16時00分(日本時間22時00分)スタートで18周、Moto2クラスが現地時間17時20分(日本時間23時20分)スタートで20周、MotoGPクラスは現地時間19時00分(日本時間月曜日の1時00分)スタートで22周で争われる。MotoGPクラスのみナイトセッション中心としたスケジュールが組まれている。
開幕戦の舞台となるロサイルインターナショナルサーキットは、カタールの首都ドーハの郊外にある2004年に建設されたサーキット。2004年から世界グランプリの開催コースとなった。
コース全長は5.380kmで、1068mと長いメインストレートを持ち、左コーナー6、右コーナー10の中高速レイアウトで、マシンのハンドリングやタイヤの耐久性が重要になるコースレイアウトだ。また、周囲を砂漠に囲まれているため、風に飛ばされた砂がコース上に飛散することで、路面が滑りやすいことも多く、過去のレースでもグリップに悩まされることが多かった。
ロサイルは中東の砂漠地帯にあるため、本来、年間の降水量は少ない地域だが、2009年にはMotoGPクラスの決勝がスタート直前に振り出した雨のため、一日順延されたことがある。このときは、照明設備を使ってレースが実施されるナイトレースであり、雨が降った場合の視界の確保が難しく危険で、レインタイヤも準備されていなかったなための措置だった。また、昨年は、レースウイークの土曜日に雨が降り、MotoGPクラスのFP4、Q1、Q2、Moto2クラスとMoto3クラスの予選が中止となり、結果的に各クラス、3回のフリー走行の総合結果でグリッドを決めることになった。
そうした経緯もあり、今年は開幕直前のカタールオフィシャルテストで、ナイトセッションでのレインタイヤを履いたウエット路面でのテスト走行が行なわれ、ウエットレースを想定したシミュレーションが実施された。ウエットでレースを実施するかどうかは、開幕戦時のセーフティ委員会で最終協議されることになる。
昨年のMotoGPクラスではマーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)がポール・トゥ・ウインで優勝、2位にアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)、3位にバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)が入賞。マルク・マルケス(ホンダ)は4位だった。Moto2クラスでは、フランコ・モルビデリ(カレックス)がポール・トゥ・ウイン。2位にトーマス・ルティ(カレックス)、3位に中上貴晶(カレックス)が入賞。Moto3クラスではジョアン・ミル(ホンダ)が優勝、2位にジョン・マクフィー(ホンダ)、3位にホルヘ・マルティン(ホンダ)が入賞した。
MotoGPクラスは2017年シーズン終了直後のバレンシア、1月のセパン(マレーシア)、2月のブリーラム(タイ)、3月のロサイル(カタール)と開幕前までに4回のオフィシャルテストが行なわれてきた。バレンシアではマルク・マルケス(ホンダ)、セパンではホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)、ブリーラムではダニ・ペドロサ(ホンダ)、そして、開幕戦の舞台となるロサイルではヨハン・ザルコ(ヤマハ)が、それぞれ総合トップに立った。
各テスト共、上位のタイムは接近しており、総合結果のベストラップのトップから10番手までのタイム差で見てみると、バレンシアがコンマ817秒、セパンがコンマ681秒、ブリーラムがコンマ675秒、ロサイルがコンマ663秒差と、今シーズンも接戦が予想される展開となった。トップ5はさらに接戦となっている。
マシン面でも、マルケスの手で過去5年で4回タイトルを獲得しているホンダは、複数仕様のエンジン、エアロデバイス付きフェアリング、リヤカーボンスイングアームを始めとするシャシーなど、数多くのパーツをテストし、順調にテストメニューをこなしていた。昨年までの課題となっていたエンジンパフォーマンスの改善も進んでいるようだ。
ホンダを追うドゥカティも複数のシャシー、エアロフェアリングなどをテスト。エンジンパフォーマンスに関しては昨年同様に速さを見せており、テストを終えて、アンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)は今季に向けて自信をのぞかせていた。また、ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)はセパンでは総合トップタイムを記録したものの、続くブリーラムでは前年型マシンを引っ張り出すなど、まだまだ本来のパフォーマンスを引き出せてない様子。
昨年はシャシー面で苦戦を強いられたヤマハも巻き返しを図ってきた。シャシー、エンジン、電子制御、エアロフェアリングの改良に取り組み、ロサイルテストでは、サテライトのヨハン・ザルコ(ヤマハ)が総合トップでテストを終え、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)が総合2番手につけた。昨年のカタールGPのウイナー、マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)はテストを通じてなかなか100%の状態で走れていない様子。
昨年のシーズン中盤すぎまで苦戦したスズキは、終盤に巻き返しを図ると、オフのテストも順調にこなしてきた。2017年はエンジン仕様の変更が結果に結びつかなかったようだが、2018年はより手堅い改良を施し、共にスズキで2年目となるアンドレア・イアンノーネ(スズキ)、アレックス・リンス(スズキ)のマシンへの習熟が進んだこともあり、再びトップ争いに加わりそうだ。
アプリリアとKTMは着実にマシン開発を進めているが、まだまだトップとは差がある様子。コンセッションによりシーズン中のエンジン開発が可能なため、そこをどう生かしていくかがカギとなるだろう。
タイヤに関してはオフィシャルサプライヤーがミシュランとなって3シーズン目を迎え、安定してきた模様。テストでは新スペックのフロントタイヤも投入され、ライダーの評価もよかったようだ。
Moto2クラスからステップアップしたライダーは5名。中上貴晶(ホンダ)はセパン、ブリーラムでルーキートップに立ち、ブリーラムでは総合トップ10入りを果たした。昨年のMoto2チャンピオン、フランコ・モルビデリ(ホンダ)は最後のカタールテストでルーキートップに浮上。トーマス・ルティ(ホンダ)は昨年のマレーシアGPで負ったケガの影響で、MotoGP初ライドがセパンテストからとなったことからやや苦戦気味。年明けに病気による今シーズンの欠場を決めたジョナス・フォルガー(ヤマハ)の代役として、ブリーラムテストでMotoGP初ライド、その後、レギュラー参戦が決まったハフィス・シャーリン(ヤマハ)は、予想以上に素早くMotoGPマシンへの順応を見せた。
2013年から2017年までの過去5年間の開幕戦カタールGPの結果を見てみると、2013年と2016年にロレンソが、2015年にロッシ、2017年にビニャーレスと5年間で4回ヤマハ勢が優勝している。ヤマハ勢がホンダは2014年のマルケスの1勝のみ。ドゥカティは優勝はないものの、2015年から3年連続でドビジオーゾが2位に入賞している。
いずれにしても、今シーズンもMotoGPクラスは接戦の展開になることは間違いないだろう。開幕戦カタールは今シーズンを占う意味でも重要な一戦となる。