F1バルセロナ合同テスト2回目が終了し、マシンの速さそして信頼性が見えてきた。今回は全チームの戦闘力を分析し10回にわたり連載していく。第5回目はテストではタイムシートの後方に沈んだフォース・インディアだ。
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●フォース・インディア(チーム戦力:80点)
フォース・インディアの評価があまり芳しくない。それもそのはず、8日間のベストタイムでエステバン・オコンが14位、セルジオ・ペレスに至っては19位だったからだ。
テストでのベストタイムは、路面コンディション、燃料搭載量、タイヤなど、さまざまな条件が異なるため、直接比較は難しい。現にタイトル争いの最有力候補であるメルセデスもベストタイムだけを見れば、ルイス・ハミルトンが8位、バルテリ・ボッタスも10位に終わっている。
ただし、メルセデスの2台がいずれも最も軟らかいハイパーソフトではなく、ウルトラソフトを履いていたのに対して、フォース・インディアの2台はほかの多くのドライバーたちと同様、ベストタイムはハイパーソフトで記録していたことを考えると、このタイムは謎である。
そして、これがテストを終えた段階でのフォース・インディアの評価を落とす一因となっている。
だが、3月7日にオコンが行ったロングランのペースを見ると、言われているほど悪いペースではなかった。この日、オコンはミディアムタイヤで20周連続の計測走行を行った。ラップタイムの内訳は、次の通りだ。
1分32秒台が1周(トラフィックだと思われる)
1分25秒台が1周
1分24秒台が4周
1分23秒台が14周
ほとんど1分23秒台で安定して走行していたことがわかる。
じつはこの日、ルノーのニコ・ヒュルケンベルグも同じミディアムタイヤを履いて64周のレースシミュレーションをスタートさせていた。そして、最初のスティントはオコンとほぼ同様、計測ラップ19周だった。その内訳は以下の通りだ。
1分25秒台が2周
1分24秒台が14周
1分23秒台が3周
オコンが1分23秒台をズラリと並べていたのに対して、ヒュルケンベルグは1分24秒台で走っていたわけである。つまり、フォース・インディアは依然として、第2集団の先頭を走る安定感がある。
では、なぜ彼らが一発のタイムを出しに行かなかったのか。
考えられることは、2つある。ひとつは新車VJM11が昨年のマシンの正常進化形であり、マシンが持っているポテンシャルはだいたいわかっている。そのため、一発のタイムを出しに行く必要がなかったからではないだろうか。
これはメルセデスについても同じことが言え、ホイールベースとレーキ角をほとんど変えていないので、テストではコンパウンドの軟らかさがすべて違うタイヤのロングランでのデータ取りを優先させたと考えられる。
なぜ、フォース・インディアの新車が昨年と変わっていないのか。それはメルセデスからパワーユニットだけでなく、ギヤボックスも供給されているからだ。
もうひとつの理由として考えられるのは、オコンもそしてペレスも「メルボルンに持ち込むアップグレードが助けになると確信している」と明言しているように、フォース・インディアは開幕戦でテストとは異なる仕様の空力パッケージになる。
つまり、テストでの空力パッケージに合わせたセッティングを行ってタイムを出すというメニューよりも、セッティングをさまざま変えたときにマシンがどのように変化するのかという基本的なデータ収集を行っていた可能性も考えられる。
したがって、フォース・インディアがテストで14位と19位に低迷したからといって、彼らの新車が『ハズした』と決めつけるのは、早計である。