FIAが主催する欧州選手権であるETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップに参戦するシュティフィ・ハルムが、長年在籍したチーム・ラインアートを離脱し、新たにドイツの古豪、チーム・シュワーベントラックに移籍。今季から最新のIVECO(イベコ)をドライブすることとなった。
2017年はドライバーズランキングで4位を記録し、新たにドイツ・ウルムに拠点を置くチームと2年契約を結んだ優勝経験者ハルムは、5月にイタリア・ミサノで開幕するETRCの2018年シーズン開幕戦から同チームのエースドライバーとしてシリーズに参戦する。
その開幕戦を前にチームは同じくイタリアのモストで事前テストを行う計画を明かし、それに先立ち先週にはハルムがチームの本拠地を訪れ、IVECOのシート合わせと機能解説のレクチャー・プログラムを受けた。
2017年はチーム・ラインアート・レーシングのMAN(マン)をドライブし、レッドブルリンク、スロバキアリンク、ル・マンでの計3勝をマークしたハルムは、長年シュワーベントラックのエースを務め、シリーズを代表するドライバーとして戦ってきたゲルト・コーバーの引退発表に伴って、新たなエース待遇としてこの古豪チームに迎えられる。
チーム・シュワーベントラックとしても、昨季のハルムのドライビングと活躍に感銘を受けたとコメントし、引退を決めたコーバー直々の進言もあり、2018年の年明けには新規2年契約に合意。この移籍を3月8日のインターナショナル・ウィメンズ・デイにあわせて発表した。
このFIA ETRCのシリーズを統括するヨーロピアン・トラック・レーシング・アソシエーション(ETRA)のゲオルグ・フックスは、ハルムとチーム・シュワーベントラックのコラボレーションを歓迎する意向を表明し、とくにハルムのドライバーとしての才能に敬意を表した。
「シュティフィは、FIA ETRCにおける本物のスタードライバーのひとりだ。その才能を持ってチーム・シュワーベントラックでシリーズを戦うことは、素晴らしい決断だと感じている」と、フックス。
「そのアナウンスを国際女性デーにあわせて発表できたことは、ETRCにとっても喜ばしいことで、彼女が現時点でモータースポーツ界を代表する女性トップドライバーのひとりであることを示すのに最適だった」
「彼女は真の意味で持てる才能と闘争本能だけで、国際的なレベルの選手権でトップドライバーとして戦えることを示してきた。シリーズに参戦する厳しくて公平な強豪ドライバーたちに対し、今季も素晴らしい戦いを披露してくれることだろう」
このチーム・シュワーベントラックへの移籍に際して、ハルム自身も「同じ目標を持つチームと、シリーズを戦うことができるのは光栄」だと、喜びを語った。
「私が2011年にETRCへフル参戦を開始して以来、チームの戦いぶりをすぐ側で見てきた。彼らはとてもフレンドリーであると同時にプロフェッショナルで、私自身もレースに対して同じマインドを共有しているので、一緒に大きな仕事が成し遂げられるのではないかと期待しているの」とハルム。
「実際には、昨シーズン終了後にすぐ交渉を始め、昨年末には契約合意に達していた。でも発表をどのタイミングで行うかをチームと協議していて、この完璧な日にアナウンスできて良かった」
「同じ時期に(昨年まで所属した)ラインアート・レーシング代表のレネ(・ラインアート)とも話をするなかで、2018年は2台体制を維持するか、1台に減らすかをまだ決められない状況だと言われた。それで私に他のチームとも交渉することを認めてくれたの。レネの柔軟な対応にはとても感謝しているわ」
発表に先立ち、ファクトリーで新型IVECOの機能解説を受けたハルムは、昨季までドライブしたMANとの違いを、次のように語っている。
「まだ実際にドライブするのは4月のモストでの3日間のテストまでお預けになるけれど、IVECOのマシンはとても興味深いものだったわ。いくつかの部分ではMANとの共通点もあったけど、それ以外の違いはすぐに見つけることができた。例えばエンジンの許容回転数は明らかに異なっていて、全体的に見てIVECOの方が少しだけ先進的だと言えそうね」
今後は、同じくIVECO陣営に所属する4度のETRC王者経験者、ヨッヘン・ハーンともマシン開発をともに進めていくことになるという。そのETRC2018年シーズンの開幕戦は5月26~27日にイタリア・ミサノで開催される。