FIA会長のジャン・トッドは、フェラーリに対しF1のルール変更に関する拒否権を与え続けるべきではないと語った。フェラーリはたびたびF1撤退を示唆しているが、それが現実になる可能性はあるとトッドは考えている。
フェラーリは1950年の世界選手権初開幕時からF1に参加している唯一のチームという独特の立場にいることもあり、新レギュレーション導入に対して拒否権を行使することが認められている。
しかし、元フェラーリF1チーム代表であるトッドは、そうした拒否権は今日のF1の状況にはそぐわないと語った。
「時代は変わってきている」とトッドは今週ロンドンでメディアに対して語った。「個人的に、拒否権をもはや支持しようとは思わない」
「拒否権はエンツォ・フェラーリの時代のものだ」と彼は説明した。
「当時、フェラーリ以外の大多数のマシンがフォードエンジンを搭載しているような時代だった。そのために彼らは保護措置を必要としていた。それが拒否権の経緯だ」
F1の権利などに関するコンコルド協定の再交渉が前回行われた時、フェラーリが拒否権の保持を続けることに疑問を抱いていた唯一の人物は自分だったとトッドは語った。
2021年に導入する新規則に関し、今シーズン半ばまでには関係者の合意を得たいとトッドは語っている。しかしながらフェラーリが、新しい技術ルールをF1の新オーナーが導入するのを阻止するため、拒否権を行使する可能性が懸念されている。
「(新規則についての合意は)できるだけ早く達成すべきだと考えている。そうすれば誰にとっても公平になる」とトッドは述べた。
「競技の新ルールがどうなるのか、誰もが知るべきだ。準備ができ次第すぐに取りかかることになるだろう」
フェラーリ会長のセルジオ・マルキオンネは新規則の方向性がチームにとって受け入れられるものでなければ、F1から撤退すると発言しており、トッドはそれを軽く見てはいないという。
「彼らは撤退するかもしれない。決断を下すのは彼ら自身だ」とトッド。「彼らは自由だ」
「もちろん私は彼らが去ることを望んでいないが、そうしたことは常に起こり得ることだ」
「これまでも大規模チームが去り、また戻って来るのを目にしてきた。だが、繰り返すが、それは彼らの選択なのだ」
トッドはフェラーリの拒否権には反対の立場である一方、フェラーリが他のチームよりもF1の収益金を多く受け取ることに異論はないと語った。
「レオナルド・ディカプリオが、テレビドラマの俳優よりも多くの報酬を得るのは当然だろうか? 当然だろう」とトッド。
「優れている者が、より多くの報酬を得るべきだ」
「以前は、彼らは酷い結果を出している時でも、より多くの報酬を得ていたものだ」と彼は付け加えた。「今では、最高の結果を出してより多くの分配金を得ているから、道理にかなっている」
「フェラーリのような企業にとって、レースが消費であるべきではない。少なくとも収支は合わせるべきだ」とトッドは語った。「そうすればかつての状態よりも、より健全なあり方になるだろう」
「支出が多すぎる。そのせいでF1チームが困難な状況に陥ることが、とても頻繁に起きている。モータースポーツの最高峰において、60から70パーセントのチームが存続するのに苦しんでいるという状況は、受け入れがたいものだ」