2018年03月15日 08:52 弁護士ドットコム
東京・渋谷のハチ公前広場で、「フリーおっぱい」と書いたスケッチブックをかかげて、通行人に自分の胸を触らせたとして、千葉県の高校1年の女子生徒(16)らが3月中旬、東京都迷惑防止条例違反(卑わいな言動)で書類送検された。
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警視庁によると、この女子生徒は1月28日、神奈川県の男子生徒(18)とともに、ネット動画サイトに投稿する目的で、ハチ公前広場で「フリーおっぱい」と書いたスケッチブックをかかげて、不特定多数の通行人に対して「おっぱい触り放題」と呼びかけたという。
これに応じた通行人に対して、自分の胸を触らせたうえ、その様子を撮影するなどした疑いが持たれている。一緒にスマートフォンで撮影していた東京都三鷹市の男性会社員(23)も、ほう助の疑いで書類送検された。報道によると、女子生徒はバニーガール姿だったという。
検挙された3人は、YouTubeに動画を投稿するYouTuber仲間だったということだ。このときの様子を撮影した動画は投稿されていない。今回の容疑は、都迷惑防止条例違反ということだが、どういう行為が問題になったのか。
東京都迷惑防止条例では、「正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為であって、人に対し、公共の場所または公共の乗物において、卑わいな言動をすること」(卑わいな言動)が禁止されている。
わいせつ事件にくわしい奥村徹弁護士が解説する。
「この条例において、『羞恥させ』とは、性的な恥じらいを感じさせることです。また、『不安を覚えさせる』とは、卑わいな言動によって身体に対する危険を感じさせたり、心埋的圧迫を与えることをいいます。
この犯罪は、社会的法益に対する罪であることから、行為者の言動が、客観的に、他人を羞恥させたり、不安を覚えさせるようなものであれば足ります。現実に他人を羞恥させたり、不安を覚えさせることは必要でないと理解されています」
また、奥村弁護士によると、「卑わいな言動」とは、一般人の性的道義観念に反して、他人に性的羞恥心、嫌悪を覚えさせたり、不安を覚えさせるような、いやらしくみだらな言語・動作とされているという。バニーガールのように、肌の露出が多い服装の場合は、一般人を羞恥させる程度が強いと考えられる。
今回の最大の特徴といえる「おっぱい触りたい放題」についてはどうなのか。女子生徒は胸を触られることを承諾していたといえるが、それでもダメか。
「『人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような行為』といえるかについては、この罪が社会的法益に対する罪であることから、実際に卑わい行為の相手が、現実に羞恥を感じていなくても、条例違反の罪が成立すると解釈されています」(奥村弁護士)
この条例違反の罪は、「6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金」となっている。今回のように少年(20歳未満)だった場合は「保護処分を受けるものと思われる」(奥村弁護士)という。
奥村弁護士はさらに、服の上からでも、18歳未満の「乳首」を触る動画は、いわゆる児童ポルノ(他人が児童の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの)に該当するおそれがあると指摘する。
「児童ポルノに該当する場合、YouTubeで公開する目的で撮影すると、児童ポルノ禁止法違反(公然陳列目的製造罪・所持罪)として、処罰されるおそれもあります。法定刑は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または、その両方で、決して軽い罪ではありません」(奥村弁護士)
女子生徒は「再生回数を増やしたい」という動機だったそうだ。また、昨年11月にYouTubeに投稿されて話題になった、同じように胸を触らせる「フリーおっぱい」の動画に触発されたという。こちらの事件は検挙されたという報道はないが、軽はずみにマネをするべきことではない。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://www.okumura-tanaka-law.com/www/top.htm