F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。前年型のハイブリッドとなったルノーRS18をチェック。
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(1)性能向上はあくまで段階的に
今季のルノーF1の絶対方針、それは車体もパワーユニットもあくまで段階的に戦闘力を上げて行くということだ。車体に関してはコンセプトを確定させるのにぎりぎりまで時間を割き、そのためバルセロナテストに持ち込んだものは2017年型と18年型のハイブリッドといっていいものだった。
しかし昨年型RS17の予選での平均タイムは、最速メルセデスの1秒726落ちで、フォース・インディアやマクラーレン、ウイリアムズをしのいで、4番手に位置していた。RS18がその後継マシンであることに、ルノーは大きな自信を持っている。
現時点でのRS18の最大の変更点は、『突起ノーズ』を採用したことだ。さらにマクラーレンMCL32にヒントを得て、ノーズ支柱にスリットが入っている。
(2)スリム化も促進
サイドポッドの空気取り入れ口は、かなりのスリム化が施された。ただし去年のフェラーリが先鞭を付け、今季のレッドブル、ウイリアムズ、ハースが追随したサイドポッドの上端を高くする措置は見送っている。その代わりサイドポッドに直付けされているデフレクター(猫に似ていることから「エアロキャット」とエンストンでは呼んでいる)は、よりいっそう洗練された形状になった。
(3)フォース・インディア風バージボード
バージボードは特に上部の形状が複雑さを増し、フォース・インディアに非常によく似ている。
(4)カーボン製ギヤボックスケーシング
一方エンジンカウルの末端は、かなり広がっている。ラジエターの一部が、ここに配置されているからだろうか。シリル・アビテブールは、「外から見えない部分で、ものすごく改良をしている。エンジンや冷却システム、ギヤボックスなどをね」と、語っている。ちなみにギヤボックスのケーシングは、エンストン初となるカーボン製である。
(5)進化したスリット
RS18のフロア後部には、昨年はまったくなかった2本の縦長の切れ目が入っている。フェラーリのSF71Hと同じ位置である。この切れ目から高速で車体下部に空気を吸い込ませ、車体下部の空気がより効率的にディフューザーへと流れ込む工夫と思われる。昨年型のリヤタイヤ前部のフロアに入っていた小さな切れ込みの発展型であろう。
(6)ブローディフューザー、控えめに復活?
エキゾーストは5度以上の傾斜を付けてはならないと規定されている。ルノーはその許容範囲を、最大限利用したと思われる。そしてウェストゲートの2本の細いパイプも、エキゾーストの横ではなく下に位置している。
極力上に向いたエキゾーストから放出された高熱の排ガスは、リヤウィングに噴き付けられる。メインプレート下部に断熱材が張られているのは、そのためだ。これは言うまでもなく、今季禁止されたモンキープレートの代替案であろう。ただし面白いのは、去年のルノーはモンキープレートを付けていなかったことだ。
(7)段階的なパワーアップ
パワーユニットに関してルノーは、まずは信頼性重視の方針だ。そしてシーズン中に投入する2基目、3基目で、本格的にパフォーマンスを上げて行く計画を掲げている。昨年は度重なるトラブルに苦しんだだけに、開幕戦までにベンチで少なくとも7万km回すことを目標としている。
パワーユニットのコンセプトは、昨年大きく変えたものを踏襲している。変更点は大きく3つあった。まずERSシステムの搭載位置を全面的に見直し、重心低下と重量配分を向上させたことだ。そして二つ目はラジエターとインタークーラーのサイズを、小さくしたこと。この変更は、軽量化とドラッグ軽減に大きく寄与している。
そして3つ目が、熱エネルギーの温度を上げたことだ。2016年までのルノー製パワーユニットのERSは、内燃機関が排出するガスの温度をいったん下げて回生エネルギーとして利用していた。しかしより効率良くエネルギーを取り出すため、温度をほぼ平準化させた。
現状でのRS18は、車体面ではレッドブルやマクラーレンに、パワーユニットではメルセデスやフェラーリに劣っていることを、ルノーは自覚している。そこでまずは信頼性を確立し、一歩一歩着実に戦闘力を上げて行くことを決断したようだ。