大学入試の小論文では、しばしばユニークな問題が出されることがある。今年3月には、ある受験生がツイッターに投稿した愛知医科大学の過去問が話題になった。
「あなたにはこれまで3年間真剣なお付き合いをしてきて、来年くらいに結婚の約束をしている彼ないし彼女がいるとします。ところが2か月前にふとしたことで知り合った別の人が好きになってしまい、今付き合っている人と別れる決心をしました。600字以内でお別れの手紙を書いてください」(2014年度、1月31日実施分)
ネットでは「受験生に何を求めているのだろうか」といった疑問の声が上がっているが、医学部専門予備校YMSで、面接・小論文を担当する講師は、「学生にコミュニケーション能力があるかどうか見極めようとしている」と指摘する。
「3年も付き合ううちに、欠点が目に付くようになった」と責任転嫁?
「医師になれば、難病に罹患していることや症状が重いことを患者に伝えなければならない場面が出てきます。そうした時に相手の気持ちを想像して、できるだけ傷つけないように伝えることができるかが問われていると思います」
患者に病状を告げるという場面が、婚約者に別れを伝えるというという場面に擬せられているということのようだ。こうした良くないことを伝える際には希望を持てるようにすることも大切だという。例えば、「君なら素敵な人がきっと見つかる」といった言葉を回答に織り込むと評価が上がる可能性が高い。
ただし、医師は患者が病気になったことに対して何の責任も負っていない。この設問では、自分が別の人を好きになったことが原因になっているため、医師に責任がある医療ミスも想定されている可能性がある。
「医療ミスを患者本人や家族に伝える時、もちろん素直に非を認めて謝るのが良いのですが、病院という組織で働いている以上、事を荒立てないということも必要になってきます。例えば、組織を守るために訴訟を避けるといったことです。もし大学側が組織人としての部分を見ているのだとすると、素直に非を認めて謝罪するのと自分の責任を軽くしようとするのとどちらの点数が高くなるのでしょうか。この問題は受験生も困ると思います」
もし自分の責任を軽くしようとするなら「3年も付き合ううちに、欠点が目に付くようになった」と相手に責任を転嫁したり、「亡くなった初恋の人に似ている」といった理由で"仕方がない"と主張したりすることもできるだろう。こうした姿勢がどう評価されるのかわからないという。
今年2月には、じゃんけんに「グー」「チョキ」「パー」以外の手を加えた新しいゲームを考えさせる早稲田大学・スポーツ科学部の小論文が話題になった。受験生には学力以外の様々な能力が求められているようだ。