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故・大杉漣氏最後の主演映画『教誨師』10月公開 佐向大監督「一瞬一瞬を精いっぱい全力でやられていた方」

2018年03月15日 00:02  リアルサウンド

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 故・大杉漣氏の初プロデュース作であり、最後の主演映画でもある『教誨師』が、10月6日より公開されることが決定した。


参考:“24時間俳優”大杉漣が遺したもの 映画評論家・荻野洋一がその功績を振り返る


 本作は、6人の死刑囚と対話するひとりの教誨(きょうかい)師の姿を描いた物語。教誨師とは、受刑者に対して道徳心の育成・心の救済につとめ、彼らが改心できるよう導く人。死刑囚専門の教誨師である佐伯は、死刑囚たちに寄り添いながらも、自分の言葉が本当に届いているのか、死刑囚たちを安らかな死へと導くことは正しいことなのかと苦悩する。そして、その葛藤を通して佐伯もまた、自身の忘れたい過去と対峙し、自らの人生と向き合うことになる。時にユーモアも交えた会話劇で、人間の本質、“死”の側からとらえた“生”を描き出す。


 主人公・佐伯を演じるのは、2月21日に急逝した大杉氏。本作は大杉氏にとって最後の主演作で、唯一のプロデュース作となった。死刑囚役には、光石研、烏丸せつこ、古舘寛治(舘は舎に官が正式表記)、玉置玲央らが名を連ね、『休暇』『アブラクサスの祭』の佐向大が監督・脚本を務めた。


【 佐向大監督 コメント】
いい加減で適当で、できるだけ責任から逃れたい。私はそんな人間です。おそらく死刑囚もそうだと思います。じゃあ何故私は彼らじゃないのか。罪を犯した者と犯さなかった者はどこが違うのか。なんで死ぬのは嫌なのか。何故行きたいのか。そもそも死者と生者の境界は何か。ひょっとしたら何も違いはないし、何の理由もないのかもしれません。だったら自分が日頃大切に思っていることや、しがみついているものは一体何なのだろう?
そんなことを私自身もこの作品を通して知りたいと思いました。
3年前、小さな喫茶店で、この企画を一番最初に話したのが大杉さんでした。
「いいね、やろうよ」その一言をきっかけにこの作品が生まれました。私にとって主演俳優以上の存在だった大杉さんの訃報を前に、全く心の整理がついていません。ただこれだけ言えるのは、人生は限りがある。だからこそ、かけがえのない時間を、かけがえのない仲間とともに、どんなお仕事でも遊びでも手を抜かず、一瞬一瞬を精いっぱい全力でやられていた方だったのではないか。あの優しさ、包容力、エネルギーはそんなところからきていたのではないか。今はそんな気がしています。この作品で大杉漣という役者の凄みを改めて目の当たりにしました。おそらく皆さんも同じ思いを抱くのではないかと思います。


(リアルサウンド編集部)