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WTCR:ティアゴ・モンテイロ、クラッシュ後の初ドライブ。アルファロメオも参戦へ

2018年03月14日 18:02  AUTOSPORT web

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WTCCテストでのクラッシュ以降、初のサーキット・ドライブを果たしたティアゴ・モンテイロ
昨年、WTCC世界ツーリングカー選手権に向けたバルセロナ・テストでクラッシュを喫し、怪我の療養を続けていたティアゴ・モンテイロが、イタリア・モンツァで行われたプライベートセッションで久々のレーストラック復帰を果たすとともに、今季からWTCRワールド・ツーリングカー・カップでドライブするFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRのステアリングを握った。

 2017年シーズン中盤の9月に開催されたテストセッションで、ホンダ・シビックWTCCをドライブ中にクラッシュを喫し、大怪我を負ったポルトガル出身の41歳は、そこまでJASモータースポーツとともにタイトル争いを演じていたシーズンを諦め、終盤4戦を回復に専念するため欠場するとの決断を余儀なくされた。

 そんな無念のWTCC最終年を経て、今季はベルギーのブーツェン・ジニオン・レーシングに移籍。トム・コロネルとともに新生WTCRシリーズで戦うこととなる。

 今回、モンツァで開催されたテスト走行枠には数多くのWTCR参戦チームやプライベーターも参加するなか、モンテイロは事故後初となるツーリングカーのコクピットに収まると、今季の相棒であるFK8型ホンダ・シビック・タイプR TCRを初ドライブ。

 マシンの開発作業に準ずるメニューは後回しにし、まずはモンテイロ自身の回復状態とフィットネスレベルの確認に時間が割かれた。

 久しぶりのレーシングスピードを体験したモンテイロは、初走行直後に「本当にいい感じで、問題はなにも感じなかった」と、うれしそうに振り返った。

「肉体的にまったく問題はなさそうだ。まだ3周しただけだけど、痛めた首と肩がどんな状況かを知るために少しハードに縁石をカットしてみたりもした。でも何も痛みは感じなかった。ここまで熱心にリハビリとトレーニングを重ねてきたから、大丈夫そうで一安心だね」と、笑顔を見せたモンテイロ。

「それよりも、一番の関心事は僕の“目”の状態だ。まだアクションに対して充分な反射や動体視力が戻っているとは言えない。今後もさらにテストを重ねて視野の範囲と動きを改善し、さらに視覚機能を良い状態まで持っていけるよう、テストを重ねて見極める必要がある」

「まだマシンのデベロップメント・ワークにまでは到達できていないし、自分の目の状態を100%に高められるよう引き続き努力が必要だ。僕のゴールはマラケシュでレースをすることで、物事は先月に大きく進展したけど、回復の方はそれに追いついていないと言える。少なくとも開幕1週間前にはなんらかの決断を下すことになるだろう」

 このJASモータースポーツ・オペレーションの復帰後初走行で、最初の3ラップを含む合計10周を走破したモンテイロは、ステアリングをTCRドイツ2連覇中の王者ジョシュ・ファイルズに託し、引き続きマシンの開発作業が進められた。

 このほか、モンツァの高速トラックではヒュンダイ陣営としてWTCRに参戦するイバン・ミューラー・レーシングやBRCレーシングも走行を重ねていたものの、公式セッションではないことからホンダを含めたマシンにはトランスポンダが装着されておらず、ラップタイムは未計測のままとなり、その戦力差は明らかになっていない。ただし、現地パドックの声としてはガブリエル・タルキーニのドライブするヒュンダイi30 N TCRがコーナリング、ストレートスピードともに1歩秀でている、との評価が聞かれた。

 また、WTCRからの正式アナウンスはまだないものの、すでに今季のグリッドに並ぶことが噂されているロメオ・フェラーリ製のアルファロメオ・ジュリエッタTCRも2018年型モデルがテストを重ね、そのドライバーズシートには元WTCCドライバーで豊富なツーリングカータイトル獲得経験を持つファブリツィオ・ジョバナルディと、17年までTCRインターナショナル・シリーズにウエスト・コースト・レーシングのフォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCRでエントリーしていたジャンニ・モルビデリ、そしてWTCCにも参戦したアメリカ人ドライバーのケビン・グリーソンが、開発と評価テストを担当した。

 イタリアの著名なチューナーであるロメオ・フェラーリが開発を担当し、ミュルザンヌ・レーシングがチームとしてのオペレーションを担った2018年型ジュリエッタTCRのテストは、2日間のセッションで初日午前をモルビデリが、2日目の午前をグリーソンが、そして両日の午後をジョバナルディが担当する振り分けで行われた。

 まだ3名のドライバーともにWTCRへの参戦確約や契約の発表はないものの、ロメオ・フェラーリのオペレーション・マネージャーを務めるミケーラ・セルッティは「彼らのおかげで、2018年シーズンへの準備はほぼ完璧に整った」とテストを総括した。

「このモンツァのセッションは本当に有意義で、バルセロナの公式テストやマラケシュの開幕戦を前に、あらゆる領域でマシンに改善を施すことが可能になった。今回の結果を持ち帰ることで、そこへマシンを送る前にいくつかの詳細を検証することになるでしょう」とセルッティ。

「我々はWTCC、DTM、VASC、BTCCなど豊富な経験を持つファブリツィオに多くを頼ったわ。そしてジャンニとケビンからはマシンセットアップの面で数々の助言とフィードバックを得ることができた」

「スペインでも雪が降るこの冬の気候では、今後も満足なテストスケジュールを確保するのが難しいことが予想されるけど、今回のモンツァは、私たちがファクトリーで行ってきた開発作業に自信をもたらしてくれる結果になったと言えそうね」