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DANCE EARTH PARTYが語る、音楽の旅「全世界のビートや楽器やダンスを取り入れて届けたい」

2018年03月14日 10:41  リアルサウンド

リアルサウンド

 EXILE ÜSA、EXILE TETSUYA、Dream ShizukaによるDANCE EARTH PARTYは、LDHファミリーの中でも異色の存在だ。彼らの音楽の特徴は、ダンスミュージックに根ざしながらも、多彩なワールドミュージックの要素を取り入れている点にある。2017年にリリースされたアルバム『 I 』(ワン)には、ジャマイカのThe Skatalites、タブラ奏者のU-zhaan、和太鼓エンターテイメント集団のDRUM TAOも参加していて驚かされた。


参考:EXILEからGENERATIONSまで……EXILE TRIBE、現在の全体像を解説


 そのDANCE EARTH PARTYのニューシングル『Anuenue』は、ハワイのギター、ウクレレ奏者のEDEN KAIを迎えた楽曲。彼らがワールドミュージックの要素を取り入れるのはなぜだろう? そうした疑問とともに始まったインタビューでは「旅」というキーワードが浮上することになった。(宗像明将)


■TETSUYA「振り付けがまったくない状態からフラダンスを習った」


——「Anuenue」は、2017年の『DANCE EARTH FESTIVAL ’17』が雨の中での開催だったことから「虹」をテーマにして制作されたそうですが、ハワイとはどう接続したのでしょうか?


EXILE ÜSA(以下、ÜSA):お客さんが雨の中でも楽しんでくれた光景を見たときに、どんな時でも楽しむ心が大切なんだと気づき、すぐに「虹」というイメージが浮かんで、さらにハワイのことわざの「NO RAIN, NO RAINBOW」、つまり「雨が降らなければ虹は出ない」が浮かんだんです。そういうことが重なって、今回ハワイをテーマに曲を作ろうということになりました。


——「Anuenue」には、ハワイのギター、ウクレレ奏者のEDEN KAIさんが参加していますが、彼の透明感のあるウクレレを起用したダンスナンバーを作ろうとしたきっかけを教えてください。


ÜSA:ハワイをテーマにしたときに、ウクレレのサウンドが欲しいということで、周りのミュージシャンに「新しい才能に出会いたい」という電波を送って、たまたまたEDEN KAIさんの映像を見たんです。ウクレレとギターの演奏を見たんですけど、ギターをパーカッションのように叩きながら演奏しているのを見て踊りたくなったので、ダンスミュージックにも反応してくれるんじゃないかと思ったんです。ウクレレを弾いたときには、優しくもあり強くもあり、雨にも感じられるし光にも感じられるような暖かさがすごくいいなと思ってオファーさせていただきました。


——EDEN KAIさんはスラックキー・ギターも弾かれる方ですが、あえてウクレレにしたのはなぜでしょうか?


ÜSA:よりハワイ感を出したいからですね。


——作詞をÜSAさんと共作して、作曲をEDEN KAIさんと共作、さらに編曲もしているSUNNY BOYさんもハワイ出身の方ですね。彼の楽曲の魅力はどんなところでしょうか?


ÜSA:最初にデモを聴かせていただいたときに、SUNNY BOYさんがハワイで育った方だというプレゼンがあったので、そこでもう8割方心を持っていかれていたんです(笑)。サウンドを聴いたらイメージとぴったりでした。同時にダンスミュージックとしてトロピカルハウスが季節的にもハマるんじゃないかと考えました。


——MVもハワイで撮影していますね。EDEN KAIさんと一緒に撮影してみていかがでしたか?


EXILE TETSUYA(以下、TETSUYA):MVの中で、EDEN KAIくんと出会うシーンがあるんですけど、あれは本当に初めて会って挨拶するところをそのまま撮影しているんです。本当に腰が低くてナイスガイな19歳の人柄がそのまま出ています。そこからフラダンスの先生と踊ったり、そこにEDEN KAIくんがウクレレを即興で弾いてくれたんですけど、そのときにやっぱりナイスガイな音がしたというか、素敵な音を鳴らす人だなっていうのを感じました。そのEDEN KAIくんとMV撮影でコミュニケーションを直にとることができたので、日本に帰って来てからさらに音をプラスしてもらったりもしました。


——ウクレレの音に対する振り付けはハワイでしたわけですね。


TETSUYA:はい。僕らは日本で何も用意をせずに向こうに行って、振り付けがまったくない状態からフラダンスを習ったりとか、大自然を感じたりして、「こんな感じですかね」と話しながら旅の途中でちょっとずつ振りを作っていきました。


——フラダンスを改めて学ぶっていうのはすごいですよね、向上心が。


ÜSA:それも含めて「旅」というか。出会ったものを自分たちの体を通して伝えていくっていうことが、DANCE EARTH PARTYの信念でもあるのかなって。原点に帰って3人でできたことは大きかったですね。


——ShizukaさんはEDEN KAIさんと会ってハワイでMVを撮ってみていかがでした?


Dream Shizuka(以下、Shizuka):撮影ではEDEN KAIさんの生演奏に合わせて私も歌わせていただきながら撮影させていただきました。楽器って、同じ音を鳴らしてもその人の感情や人柄が如実に現れるなと感じていて、弾いてくださる音色を聴いただけで、本当に音楽が好きで向き合っている人なんだなと感じました。しかも、ハワイ島で撮影させていただけるなんてすごい贅沢なことをさせていただいているなと感じましたね。「Anuenue」と関係のない楽曲も弾いていただいて、そこでみんなでワイワイ踊ったり、楽しい時間を過ごさせていただいたので、すごく貴重でした。


——EDEN KAIさんが19歳の若者というところに魅力を感じた部分はありますか?


ÜSA:そうですね、本当にフレッシュな才能に出会って、なんか嬉しくなっちゃって、もっと多くの人にこの演奏を聴いてもらいたいなと素直に思いました。


■Shizuka「オリジナルの良さというものは絶対になくしたくない」


——今回のシングルですごいなと思ったのは、ハワイ出身の人の曲のためにハワイに行って、ハワイのミュージシャンとコラボしていることなんです。そこまでポンと旅に行けるのはなぜですか?


ÜSA:本当に奇跡的にこうなった感じなんです。みんなでハワイに行くスケジュールはないんじゃないかと思って、僕だけ行って、ふたりはどこか違う場所へ行くアイデアもあったんです。でも、行けることになってね。


TETSUYA:ちょっと諦めていて、「僕は東京で何を撮ろうかな」って自分でも考えていたぐらいだったんです。


ÜSA:3人で行けてすごく楽しかったですね。できることなら全楽曲いろんな国のテーマで作って、その国で撮りたいなって、無茶なことを思ったりしましたね。


——それはいいですね、今時そういうことをできるアーティストはなかなかいませんから。カップリングに米米CLUBの「浪漫飛行」を選曲したのはなぜでしょうか?


ÜSA:聴いた瞬間に心が旅したくなる雰囲気の曲だし、いつかこれをダンス・ヴァージョンにしてカバーしたいなと思っていたんです。3人でカラオケ行っては、この曲をポチッと押してTETSUYAがShizukaちゃんにスッとマイクを渡すというのを何回か重ねて、まずはどんな感じになるかなぁと……。


——その段階では、Shizukaさんはまだカバーの予定を知らされてない状態だったんですか?


Shizuka:いえ、3人の会話の中にちょこちょこ「浪漫飛行」というワードが出ていたので、すぐわかりましたね。お二人が歌ってくれるんだろうなと思っていたら、自分のところにマイクが回ってきたので、「これはきっとオーディションなんだ」と思いました。女性が歌うとどうなるのかもわからないですし、カバーさせていただくにあたってオリジナルの持つ魅力が失われてしまってはいけないので、そこも見るためにカラオケで歌ったのかなと思います。そこから約2年間鍛えられ、無事に合格したんだなって、収録された楽曲を聴いて改めて思いました。


——自分が歌うにあたって注意したところはあるでしょうか?


Shizuka:アレンジも含めて、オリジナルの良さというものは絶対になくしたくないと思っていました。ただ明るくて華やかだったらいいかというとそうではなくて、オリジナルの良さと自分たちの色をちゃんとお届けしたいなという想いがありました。カールスモーキー石井さんの歌のニュアンスや声の持つフックはすごく魅力的ですし、私がただ単純に歌うと「カラオケじゃん!」ってなるかなっていう心配もあったので、尊敬心と自分の色を少しミックスしました。耳に残るようにするために参考にさせていただいた部分もありつつ、ちゃんと自分自身の歌にして歌わさせていただくというのが気をつけたところですね。


——ÜSAさんはShizukaさんの歌を聴いていかがでしたか?


ÜSA:いや、もう最高でした。旅のプレイリストに追加しました。


Shizuka:ありがとうございます!


——ダンスバージョンにするにあたって、注意したところはありますか?


ÜSA:野外フェスで盛り上がることをイメージしながら、皆さんのテンションが上がりやすい、ノリやすいBPMや疾走感を意識して作りましたね。


■ÜSA「ダンスで世界をつなぎたい」


——そもそも、DANCE EARTH PARTYがワールドミュージック色の強い楽曲を作り始めたのはなぜでしょうか? やはりÜSAさんが世界の約20カ国を旅してきた経験が反映されているでしょうか?


ÜSA:そこはやっぱりきっかけとしてありますね。世界中のリズムを乗りこなして、ダンスで世界をつなぎたいという思いでずっと続けているんです。DANCE EARTH PARTYとしては、それを音楽の旅で届けていきたいという思いがあるので、願わくば全世界のビートや楽器やダンスを取り入れて届けたい。全世界と言ったら数え切れないくらい音楽があるんですけど、生きている間にどれだけ音楽の旅ができるかっていうロマンを抱いています。


——そういうロマンは皆さんで共有しているものですか?


ÜSA:そうですね。だけどいきなり「ガーナに行こうよ」とか言ってもShizukaちゃんはちょっとテンション上がってくれないんで、まずはハワイから。今回は大きな一歩でした、海外に一緒に行けたっていうのは。


——海外でレコーディングしたのは今回が初めてでしょうか?


TETSUYA:「DREAMERS’ PARADISE」っていう曲で1回行かせてもらって、そのときはDANCE EARTH PARTYが海外で作品を作る初めての出来事だったんです。そのときはさぐりさぐりなところもあったんですけど、今回はいろんなことを経て、初心に返って改めて「DANCE EARTH PARTYってこういうことだよね」っていうのを、楽曲やMV、フェスを見すえての音作り、振りの制作でできたので意味深い曲になりました。


——2017年の1stアルバム『 I 』(ワン)では、The Skatalites、U-zhaan、DRUM TAOといったワールドミュージック系のミュージシャンを多く迎えていましたが、どういう経緯での人選だったのでしょうか?


ÜSA:単純に好きな人、そして踊りたいサウンドなのでお願いしました。


——The Skatalitesは簡単に話が通ったんですか?


ÜSA:いや、これはなかなか難しかったです……。リーダーが高齢でレコーディングには来られなかったんです。だけど、世代をこえてスカを受け継いでいるすごいバンドじゃないですか。あの音で踊れてうれしいです。


——DRUM TAOはこの間見に行ったんです。「和太鼓を叩くEXILEみたいだな」と思ったんですが、よく考えたらDANCE EARTH PARTYに参加していて。共鳴するところがあるのでしょうか?


ÜSA:そうですね、演奏を見てかっこいいなと思って。楽曲を作らせていただきましたけれども、まだショーとして見せたことがないので、次の夢として「NEO ZIPANG~UTAGE~」をショーかお祭りで作り上げて、お見せしたいなって企んでいます。


——タブラでU-zhaanさんを招いたのは?


ÜSA:一回番組でコラボさせていただいて、U-zhaanさんの演奏に合わせて僕がソロで即興で踊ったんです。そのときのバリエーションがすごくて、ヒップホップから何からいろんなビートに合わせてやってくれて、本当に未知の世界を旅しているようで、自分の中からいろんな動きが出てきたりして、すごく楽しかったんです。


——自分たちに旅をさせてくれる人たちを基準に選んでいるところはありますか?


ÜSA:自然とあるかもしれないですね。新たな扉を開いてくれる人というか。


——新たな扉を開いていくというのは大変なことですよね。


ÜSA:恐いですよね。でも、同時にワクワク感もあって。


——それはメンバー3人で共通している感覚でしょうか?


ÜSA:そうですね、決めた瞬間から覚悟は決まっている。「これで歌うの?」ってShizukaちゃんも毎回大変だし、僕は踊りをどうしようかって(笑)。それぞれ大変な部分はあります。


——ワールドミュージック色のない、いわゆるJ-POP的なダンスナンバーとのバランスはどう考えていますか?


ÜSA:これは本当に難しいんですけど、伝統的な音と最新のダンスミュージックを合わせる、そして新しいものを作るというのを意識していて、そのバランスは毎回苦労しますね。


——欧米のダンスミュージックもチェックしていますよね。TETSUYAさんが在籍するEXILE THE SECONDの「YEAH!! YEAH!! YEAH!!」のカップリング「Going Crazy」がベースミュージックだったのは驚きました。LDH周辺のサウンドの変化の理由はどこにあるのでしょうか?


TETSUYA:今までの歴史の中でEXILEが好きなものを追求していって、「こういう音楽もやっていいんじゃないか」というタイミングがきたのかなと思います。「Going Crazy」をライブでやって、皆さんが喜んでいるのを見て。だんだん間口が広がっていけばいくほど、DANCE EARTH PARTYの色はもっと濃くなるでしょうし、EXILE THE SECONDはEXILE THE SECONDの色もある。でも、「やっぱり王道、メインストリームはEXILEだよね」とか、そういう役割がきっとできてくると思うし、そういうふうになってきてるなって感じます。


——「やれるようになった」というのは、逆に言うとやってみたかったことであるんですね。


TETSUYA:やってみたかったですね。皆さんに受け入れてもらえるっていうのは大きな一歩だと思うので、そういうところを常にDANCE EARTH PARTYでも追求していきたいです。


——DANCE EARTH PARTYがワールドミュージック的なところに踏み込むのは、ある意味でリスクを冒している部分もあると思うんです。ファンの人が受け入れてくれるかわからないこともやっていて。そういうことに挑戦する姿勢はどこから生まれてくるのでしょうか?


ÜSA:好奇心しかないんです。誰もやっていないことをやりたいというのもあります。あと、踊りがあるので「困ったらこうやって踊るんだよ」って僕らが見せられるんです。


——TETSUYAさん的に「これは踊るのに手強い」というものはあったでしょうか?


TETSUYA:とにかく早い音とか。自分たちが得意とするステップとかノリにまったくそぐわないくらい早い音もあるので、そういうときは悩みます。自分達の想いが詰まった振りを作って、それがお客さんの楽しむことにつながらなかったら意味がないんです。まずはお客さんが一緒に喜んでくれるステージングを優先して考えてますね。


——Shizukaさんは歌うのが大変なときはありますか?


Shizuka:ありますけど、自分が触れたことがないだけで、元になっているジャンルを聴いて研究すればいい話かなって思うんです。逆に、自分自身がやったことないリズムやジャンルの曲と出会うと、自分が成長できるきっかけになるので、それを楽しんでいるかもしれないですね。難しくて悩むことはあるんですけど、それができたときのうれしさとか楽しさはあるので。


——TETSUYAさんから見て、Shizukaさんは成長していますか?


TETSUYA:ボーカルの細かい部分にものすごく悩んで立ち向かっているから、だから「こういうふうに素敵に歌えるんだ」と感じるので、きっと僕らにはわからない葛藤があるんだと思います。「こうやって歌ったほうがいいんだよ」なんて助けてあげることができないので、できあがったものに素敵に彩りを加えて踊って、相乗効果を加えるのが僕らの仕事だと思っています。作品のイメージやテーマを提案することはできるのですが、それを声にしてくれるのは、ボーカルを信じてお任せして、たまにコーヒーの差し入れして……。


——今後はどういう方向に向かっていきたいでしょうか?


ÜSA:メキシコに行きたいですね。アルバムで「PREMIUM TEQUILA」という曲をカバーさせていただいたんですけど、メキシコにはまだ行っていないので、メキシコがテーマのカラフルな曲を作って、向こうでMVを撮りたいです。


——そう言われて、TETSUYAさんはいかがですか?


TETSUYA:私利私欲を利用していいのであれば、僕はコーヒーが大好きなのでエチオピアに行ってエチオピアの音楽や楽器で、コーヒーの曲を作ったりしたいですね。


——エチオピアのエチオ・ジャズとか最高ですもんね。


ÜSA:そういえば一昨日、YMOの細野晴臣さんが世界のいろんな曲を集めたCDをいただいたんですよ。すごいネタが詰まってるなと思って。研究します。


——Shizukaさんはどこに行きたいですか? 


Shizuka:ギリシャのサントリーニ島に行ってみたいですし、モロッコにも絶対に行きたいんですよ。


——ギリシャといったらレンベーティカがあって、モロッコだとジャジューカがあるので行きがいがあると思います。


Shizuka:そのふたつは絶対に行きたいと思っている場所なんです。


——お三方に聞いたら4カ国出てきましたね。今後も楽しみにしています!(取材・文=宗像明将)