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22/7のライブに感じた、“心地よい違和感・中毒性”の正体

2018年03月14日 10:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 22/7が2月27日、東京・ディファ有明でイベント『割り切れないライブ ~シャンプーの匂いがした~』を行った。


 同イベントは、4月11日にリリースする2ndシングル『シャンプーの匂いがした』の発売を記念したもの。本稿では、“デジタル声優アイドル”という肩書きを活かし、メンバーがモーションキャプチャを用いてキャラクターを演じるバーチャルライブと、生身のメンバーがステージで歌い踊るリアルライブ、「朗読女王決定戦」の3部で構成された一夜の様子を、22/7が持つ特性とともに振り返っていきたい。


(参考:吉本坂46、ラストアイドル、22/7……様々な要素を掛け合わせる秋元康のプロデュース術を読む


 この日はバーチャルライブからパフォーマンスがスタート。2017年9月にリリースしたデビュー作の表題曲「僕は存在していなかった」が、同年7月22日の公演とは違った、新たなアニメーションで披露。そして2曲目にバーチャルライブでは初披露となる「地下鉄抵抗主義」を、3曲目には新曲「シャンプーの匂いがした」をパフォーマンスした。


 楽曲については追って触れるとして、バーチャルライブで気になった点は「メンバーのMCパート」である。22/7のバーチャルライブは、モーションキャプチャを導入していることもあり、ただのアニメーションではなく、その動きには各メンバーの身体を伴う。だからこそ、アニメのような滑らかさとも、生身のパフォーマンスの躍動感とも違う、奇妙な中毒性がそこにはある。その動きへさらに意識を集中させるのが、細かい身振り手振りを使って表現するMCだ。


 1~2曲目間には、藤間桜(天城サリー)、戸田ジュン(海乃るり)、河野都(倉岡水巴)、丸山あかね(白沢かなえ)が、2~3曲目間には滝川みう(西條和)、斎藤ニコル(花川芽衣)、佐藤麗(帆風千春)、立川絢香(宮瀬玲奈)がそれぞれMCに挑戦。正直、最初は観客から、このMCに反応して良いものかどうか、事前に収録されたものなのか、という迷いが見て取れた。


 しかし、メンバーがその観客の戸惑いや反応に気づき、不自然にならないように客席からの声をリアルタイムで拾うことで上手く理解させるという機転を効かせたことで、会場は徐々に熱気を取り戻した。この辺りは今後も続けることで理解度は上がっていくと思うが、浸透するまでは直面し続ける壁にもなるはずだ。この日の経験を活かしたステージ運びのさらなる工夫に期待したい。


 イベント中盤では、SHOWROOM配信で予選を行った「朗読女王決定戦」の決勝戦を実施。予選を勝ち抜いた倉岡、西條、花川が順に宮沢賢治「銀河鉄道の夜」を朗読したあと、SHOWROOMでのリアルタイム投票により、花川の優勝が決定した。声優という側面もある以上、演技力もグループには欠かせないものだ。筆者は12月にもイベントで彼女たちの朗読を見ているが、デビュー時やこの時よりも、ますます演技に対する熱量や技術は上がって来ているように思えるし、演じる機会が増えればさらに伸びるだろうというメンバーも少なくない。固定されたキャラクターがいる以上、ほかのキャラは演じにくいかもしれないが、経験のためにも様々なアニメやゲームへ出演してほしいものだ。


 その後、ステージにはキャラクターを演じた8人に高辻麗、涼花萌、武田愛奈を加えた11人が集合。2ndシングルの収録曲である「やさしい記憶」「叫ぶしかない青春」を続けて初披露し、一人ひとりの自己紹介とコメントとともに「僕は存在していなかった」と「シャンプーの匂いがした」を歌い踊った。アンコールでは、「11人が集まった理由」を歌唱し、この日のイベントは終了した。


 最新作の収録曲はどれも魅力的だったが、一番面白かったのは表題曲である「シャンプーの匂いがした」。ストリングスの動きも、曲の構成・展開も、綺麗に流れるものというよりも、引っかかりのある仕掛けをいくつも作っているような楽曲で、先に挙げたバーチャルライブと同じ、“心地よい違和感・中毒性”を与えてくれるものだった。この“心地よい違和感”こそが、デジタル声優アイドルだからこそ出せる魅力の一つなのかもしれない。


 余談かもしれないが、22/7が登場した直後に“バーチャルYouTuber”が続々と出現したのは、ただの偶然には思えない。アニメーションがどこまでもリアルな動きを表現できるようになった現在、ある意味で人間味のある、違和感を持ったアニメーションやコンテンツが人の好奇心を刺激しているのだとすれば、22/7の存在は、これからまだまだ新たな表現として知られていくことになるだろう。(中村拓海)