トップへ

三代目JSB山下健二郎、飛躍の理由は“迫真の演技パフォーマンス”にあり

2018年03月14日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

写真

 ドラマ、映画、バラエティ、そしてライブのステージ、どこでも変わらず、真っ直ぐで、元気いっぱいな笑顔の山下健二郎。4月からは情報エンターテインメント番組『ZIP!』(日本テレビ)に火曜日メインパーソナリティとして出演することも決まった山下だが、もちろん笑顔の裏には努力の軌跡がある。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでのダンサー経験に始まり、オーディション通過後、2010年に劇団EXILE風組のメンバーとなったかと思うと、すぐに三代目 J Soul Brothersへの加入が決まり、現在までダンス・パフォーマーとしてめざましい活躍を続けている。印象的なハニカミもひとしおである。


参考:深川麻衣×今泉力哉監督『パンとバスと2度目のハツコイ』対談 深川「シンプルだからこそ難しい」


 そんな山下の持ち味は、関西人らしいノリのよさだろう。誰からも愛される軽快なキャラクターは、バラエティだけでなく、自身がパーソナリティを務めるラジオ放送『三代目 J Soul Brothers 山下健二郎のオールナイトニッポン』でも活かされている。また最近では配信ドラマへの出演が続き、『Love or Not』(dTV・FOD)では家事はできるが仕事はできないダメ会社員、『漫画みたいにいかない。』(Hulu)では売れない漫画家の間抜けなアシスタントを演じた。いずれの役も“バカ”がつくくらい正直な性格で、山下本人も語るように、自分と似た部分を感じながら演じられたキャラクターは滑稽ながらも愛らしい好演となった。“バカ”を演じさせたら山下の右に出る者はいないというくらいコメディでも才能を発揮している。


 しかし山下健二郎の才能はもちろん三代目のパフォーマーとしての表現にこそある。ステージ上でキレキレのダンスを披露する山下は、圧倒的な身体能力と抜群のリズム感の持ち主である。それが映画の演技に思わぬ効果的な活かされ方をする。『パンとバスと2度目のハツコイ』ではそんな山下の圧倒的な“演技パフォーマンス”をみることができる。実際、今泉力哉監督は、音楽的な瞬発力があるからこそ「芝居や脚本への理解が早い」(『パンとバスと2度目のハツコイ』劇場パンフレットより以下引用)と指摘しているが、演技経験の少なさを逆にバネとして芝居にリズミカルな柔軟性を生んでいる山下は、この作品で演技に“開眼”したと言える。


 「綺麗でありたい、かっこよくありたいという意識がない。それって実は一番の役者ってことなんじゃないかと思います」というお墨付きを監督からもらった山下の演技は、撮影現場で監督の演出を身体で感じ取りながら芝居をつくっていく“本能的”なものであったはずだ。映画を観ていてとにかく驚かされるのが、どのアングルからみても表情が素晴らしく、見事な存在感で画面の中に収まっているということだ。それは画面映りがいいということではなく、カメラを向けられた山下が、今自分を切り取ろうとするフレームサイズを瞬時に把握していて、「ここしかない!」というところに位置を占めているということである。当たり前のことと思われるかもしれないが、これは映画俳優の演技にとっては一番大切なことなのだ。“余計な”演技をせずに、監督のフレーミングに合わせて呼吸し、イン・アウトを繰り返すこと。まるでビートを刻むように演技のリズムを一定にする山下の芝居には、まさに三代目のパフォーマーとしての華麗さがある。


 そうした山下の演技の真骨頂は、映画館のスクリーン上でもライブのステージと同じように観客席へ直接語りかける迫真性だろう。ライブ会場では、パフォーマーの熱気をオーディエンスが直に感じ、共有することができるが、映画にはスクリーンの枠がある以上、それは難しい。だが、ライブ・パフォーマンス同様に熱を帯びていく山下の好演(熱演)は、スクリーンには到底収まり切らずに、その枠内から勢い飛び越えていこうとする。そうなるともうライブのオーディエンスと何も変わらない。映画館の観客もまた山下が目の前で展開する“演技パフォーマンス”を素肌で感じられるようになるのだ。


 本能的なフレーム感覚で画面の中にピタリと収まりながらも、そこからダイナミックにスクリーンの先を臨む山下健二郎の演技は、確かに「一番の役者」のものだろう。しかし実際の山下の感覚からすると、演技とパフォーマンスとの間にはあまり違いはないはずだ。映画館もステージも同じ檜舞台。そこに観客=オーディエンスがいる限り、彼は持ち前の笑顔をふりまき続けるに違いない。(加賀谷健)