映画『この道』が2018年秋以降に公開される。
日本の童謡の歴史上、重要な役割を果たした雑誌『赤い鳥』創刊100年を迎える今年に公開される同作。関東大震災で被災した子供たちを元気づけるために手を取り合って数々の童謡を発表し続ける北原白秋と山田耕作が、やがて子供たちを戦場に送り出す軍歌を作るよう命ぜられ、苦悩の淵に立たされるというあらすじだ。
北原白秋役を大森南朋、山田耕筰役をAKIRA(EXILE)、白秋の才能を眠らすまいと奔走する与謝野鉄幹・晶子夫妻役を松重豊と羽田美智子、2人に童謡創作の白羽の矢を立てた『赤い鳥』の創刊者・鈴木三重吉役を柳沢慎吾、白秋の最初の妻である松下俊子役を松本若菜、3番目の妻・菊子役を貫地谷しほりが演じる。監督は『陽はまた昇る』『半落ち』『八重子のハミング』などで知られる佐々部清、脚本は『かぐや姫の物語』『メアリと魔女の花』などで共同脚本を務めた坂口理子が担当した。
クランクアップの撮影場所は、1878年に創業した神奈川・箱根の富士屋ホテル。白秋と耕筰からも愛されたこのホテルは、『007シリーズ』をはじめとした多くの洋画に登場しているが、約140年の歴史の中で日本映画の撮影に使用されたのは今回が初めてとのこと。
大森南朋は映画について「脚本の中でどれだけ自由に北原白秋という人間に近づけるかを考えながら演じました。その中で少しずつ積み重なって北原白秋になっていると思いますので、映画の完成を楽しみしています」とコメント。またAKIRAは「山田耕筰という日本を代表する音楽家・作曲家に挑戦させていただいて、本当に恐縮することばかりでしたが、今回改めて日本の音楽の素晴らしさに触れることが出来ました」と述べている。
■大森南朋のコメント
北原白秋という人物について、イメージではすごく真面目で難しい人なのかなと思っていたのですが、こんなに波乱万丈の人生で人間味あふれた素敵な人物だったということを今回初めて知りました。実際にお会いしたことがないので、どんな人だったかは文献を読むなどするしかなかったのですが、脚本の中でどれだけ自由に北原白秋という人間に近づけるかを考えながら演じました。その中で少しずつ積み重なって北原白秋になっていると思いますので、映画の完成を楽しみしています。私は白秋の詩を全部読み切った訳ではないのですが、今回題材となっている「この道」の歌の世界に凄く引き込まれましたし、故郷を思う想いという情景を見たくてクランクインする前に白秋の生まれ故郷・柳川まで行かせて貰ったりもしたので、「この道」の世界が好きです。この富士屋ホテルでの撮影も邦画で初と聞いておりますので、非常に有り難い限りです。とにかく現場が楽しくて、素晴らしい作品になると思っております。是非楽しみにして下さい。
■AKIRAのコメント
山田耕筰という日本を代表する音楽家・作曲家に挑戦させていただいて、本当に恐縮することばかりでしたが、今回改めて日本の音楽の素晴らしさに触れることが出来ました。今回山田耕筰について色々と調べて、ものすごく波乱万丈な人生を送られていたというのは分かっていたのですが、それを超える北原白秋との熱くも可笑しい素敵な青春を過ごしてきたのが台本を読んで知ることが出来ました。本作で私は36歳、52歳、66歳の山田耕筰を演じさせてもらったのですが、時代が違う中で同じ役を演じるというのはとても大変でしたし、音楽家・作曲家ということで今回指揮・バイオリン・ピアノを習得して劇中で披露していますのでそういった意味でも、ものすごくやり甲斐のある作品でした。映画『この道』は偉人伝というよりも、日本の音楽を支えてきたたくさんの方々の青春映画だと思います。この映画を締めくくる最後の日がこの富士屋ホテルという事も何かご縁があると思いますし、これだけの大先輩方が集結して会見が出来るということはめったにないと思いますので、ある意味歴史的瞬間に立ち会えて光栄です。とても素敵な作品となると思うので、公開まで応援してください。
■松重豊のコメント
与謝野鉄幹と晶子は日本一有名な夫婦だと思います。晶子を演じた羽田さんとは夫婦漫才のような呼吸でやる事に命を懸けておりました。撮影は2月に京都でも行ったのですが、時代物をやるというのは腰が引けるんですよ。案の定、日本家屋での撮影で寒さとの戦いでした。あとは鈴木三重吉演じる柳沢慎吾さんの口撃をどう避けるか(笑)。今日の撮影シーンで、多少長い台詞があったんですけど、羽田さんに防波堤になって頂いて何とかその口撃を避けることができました(笑)。
■羽田美智子のコメント
与謝野晶子は「みだれ髪」を書いて一世を風靡した破天荒かつ前衛的な女性ですが、その女性が弟のように可愛がっていたのが北原白秋であって、こんなに無邪気で可愛い、放っておけない男性だったと初めて知りました。母校の校歌が北原白秋と山田耕筰の作詞作曲だという友達が何人かいるのですが、未だに校歌を覚えていて歌えるということはやっぱりこの2人が偉大な作曲家であり、作詞家だったんだと感じました。大森さんとは10年ぶりの共演です。松重さんとは20年ぶりというすごく長い時間を経てまたご一緒させていただき、自然に夫婦のような空気を作ることができました。この富士屋ホテルでの撮影は本作にとってはこの上ない舞台だったと思います。時代のにおいが染み付いた歴史って確実に映像に映ると思いますし、役者として本当に有り難いことで重みを感じさせていただきました。とてもいい映画になると期待をいっぱい持っています。
■貫地谷しほりのコメント
私の演じた菊子は白秋の三番目の妻で、その才能に惚れて白秋にはすごく自由に生きて欲しいと願う一方、白秋との子供のことが気がかりでたくましく生きた人だと思います。今まで大森さんとは何度か共演をさせていただいたのですが、ちゃんとお芝居をするのは今回が初めてで、大森さん演じる白秋がすごく可愛らしくて母性本能をくすぐられました。白秋に惚れた女達の気持ちがよくわかります。
■松本若菜のコメント
私が演じた松本俊子は、北原白秋の最初の妻です。与謝野晶子と同様、俊子も不倫で白秋と恋に落ちて結婚した色々な意味で強い女性です。今回は大森さんと2人のシーンが多かったのですが、大森さんが積極的に撮影前から話してくれましたので、スムーズに気持ちが入りました。佐々部監督が最初の衣装合わせの時に「白秋と俊子は先を生きて行って欲しい」ということを仰っていて、明治時代、大正時代を生きた白秋なので、先を生きるってどういう意味だろうと自分なりに考えまして、その時代感を出さないようにしようと思いながら演じました。その場に存在する女性のように演じました。
■柳沢慎吾のコメント
鈴木三重吉は、いち早く北原白秋と山田耕筰の才能に気づき、子供達のために「童謡」の作詞・作曲をしてくれないかと白羽の矢を立てる、いわばプロデューサー的な存在です。白秋と耕筰の2人を結びつけるという意味では重要な人物です。この撮影に入る前ですが監督と打ち合わせをした時に、「僕はカメラの横で〈よーい、スタート!〉と言って役者さんの芝居を見るんですよ。」と言ってくださって、カメラの横で芝居を見てくれる監督なんて今はもうほとんどいないと思うんです。だからこの言葉は本当に嬉しかったです。
■佐々部清のコメント
北原白秋と山田耕筰というある意味で日本の偉人伝なのですが、最初から偉人伝はやりたくないなと思っていました。尊敬するミロス・フォアマン監督のモーツァルトを描いた『アマデウス』という映画があって、人間臭くてちょっと滑稽で悲しくて可笑しい、そんな有名人の話しだったらやれそうな気がしまして、そんなことをやろうと最初に大森君とAKIRA君と本読みをしながら話しました。大森君には子供のような大人を演じて欲しいと思いまして、特に北原白秋という人物はきちんとしていなくてどこか色っぽい感じを出して欲しいとお願いをしました。AKIRA君は、バイオリンの習得、ピアノの習得など本当に初めてのことに真っ直ぐ向き合ってくれました。白秋の妻みたいな部分を真っ直ぐにAKIRA君が演じてくれて2人のコンビネーションがとても上手くいき、夫婦のようで奇妙な友情物語になっていると思います。今回、この歴史ある富士屋ホテルで撮影をすることができ本当に感謝しています。これだけのキャストが集まる大団円にふさわしい場所だと思います。