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【F1新車分析】トロロッソ・ホンダSTR13:ハロにもひと工夫。手堅さと独創性をちりばめたマシン作り

2018年03月13日 12:02  AUTOSPORT web

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ハロの真下にはミニウイングを装着
F1iのテクニカルエキスパート、ニコラ・カルパンチエが各チームの2018年F1ニューマシンを分析。ホンダPUを搭載するトロロッソSTR13のポイントをチェック。
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(1)「柔軟性がわれわれの武器だ」

 トロロッソが搭載エンジン(パワーユニット)を変更するのは、この6年間に実に4回目となる。今年からはマクラーレンとのパートナーシップを解消したホンダから、チーム創設以来初となるワークス供給を受けることになった。しかし契約締結が遅れに遅れたため、すでにルノーV6を前提に開発を進めていた車体、特にトランスミッションやギヤボックス周りの設計に関しては大幅な変更を迫られることになった。

 だが、テクニカル・ディレクターのジェームズ・キーは、「この数年間に多くの経験を積んだことで、スタッフは柔軟性を武器に対応してきた。今回もホンダへの変換は、さほど大きな問題ではなかった」と、語っている。

「もちろん時間が十分にあれば、もっと他の選択肢も取れた。とはいえ現状でも、ホンダ製パワーユニットが車体デザインに大きな影響を与えたということない。もともと非常にコンパクトなパワーユニットだし、ホンダの装着で見直したリヤサスは、恩恵さえ受けているよ」

(2)ワークスチームのメリットと責任
「チーム創設以来初めての、ワークス待遇を受ける意味は大きい。単に無償でパワーユニットの供給を受けるという恩恵だけでなく、すべての開発過程を共有できる。そして彼らの持つ車体開発の膨大なノウハウもね。もちろんわれわれも、しっかり結果を出す責任がある。しかし今までのところ、両者の協力関係は非常にうまく行っているよ」

 控えめな態度の小規模チームでありながら、トロロッソは技術的には独創的なアイデアに溢れている。たとえば2016年に提案したリヤウイング翼端板の溝は、今やほぼ全チームが採用している。

 フロントサスペンションの湾曲したアームも、昨年のSTR12やメルセデスW08が先鞭を付け、今季のレッドブルやザウバーが模倣した。そして今季のトロロッソは、ハロの真下にミニウイングを装着している。


(3)大きく見直されたリヤサスペンション


 コンパクトなホンダ製パワーユニットによって、車体リヤ部分には大きな空間が確保された。そのおかげで、昨年苦しんだ不安定な挙動の大きな原因の一つだったリヤサスペンションも見直されている。

 リヤサスのアッパーアームが昨年に比べ、STR13でははるかに後方に取り付けられていることが、比較写真からおわかりだろう。

(4)マクラーレンの影響濃厚なフロントウイング


 車体前部にもさまざまな変更点が見られるが、中でもフロントウイングは大きく変わっている。ウイング外側のアーチは枚数が増え、湾曲も大きくなった(赤矢印参照)。エンドプレートの幅は広がり(黄色矢印)、羽根の形状はいっそう複雑になった(オレンジ矢印)。全体的には昨年型マクラーレンのフロントウイングの影響を、色濃く感じさせる。

(5)フロアに切られた溝


 フロアの両脇に切られた溝は、ルノーやフェラーリよりさらに長い。マクラーレンMCL33のように二枚溝ではないが、溝の幅は非常に広い。

(6)フェラーリのバージボード


 バージボード下部の形状は、昨年のフェラーリが採用し今季のSF71Hにも継続されたものと同コンセプトである。トロロッソに限らず、メルセデスW09など今や大部分のマシンに見られる空力パーツである。

 トロロッソのバージボード自体の形状はさほど複雑なものではないが、レッドブルのような水平ミニウイングは今季になって初めて登場した。

「空力パーツは今後どんどん、アップデートされていく。シーズン中盤には、まったく違う外観になってるはずだ」とジェームズ・キーは言及している。

(7)キーのマシン作りに期待



 昨年、メルセデスとともに細身のノーズの孤塁を守っていたトロロッソだが、今季は多くのチームの採用する『突起ノーズ』となった。一方サイドポッドは、他のマシンほどのスリム化はされていない。

 冬のテストでのトロロッソはホンダが抜群の信頼性を発揮したこともあって、トップチームと伍する周回数を走破した。STR13の空力開発が、かつてレッドブルが使用していた風洞を使ってイギリスで行われているのは周知の事実。ジェームズ・キーの手堅い中にも独創性をちりばめたマシン作りは、はたしてトロロッソ・ホンダを大きく飛躍させられるだろうか。